先日、馴染みの立ち飲み屋に行った時のこと。「この本、面白いよね」と紹介された。ワイン雑誌の編集者たるもの、当然読んでるでしょ、のスタンスで私に共感を求めてくる。しかもその語り口にこもる熱は尋常ではない。「そうだね」と話を合わせつつ聞いた本の内容は、確かに面白そう。これはすぐに読まなきゃと、その足で本屋に向かった。

ブルゴーニュワインの進化の現場に立ち会った日本人

その本のタイトルは「ブルゴーニュと日本をつないだサムライ」。ワインジャーナリスト、山本昭彦氏の渾身のルポルタージュだ。

ブルゴーニュと日本をつないだサムライ
 

1970年代の第一次ワインブーム以後、何度かのワインブームを経て、日本のワイン市場は大きく成長した。特にブルゴーニュワインは日本人の嗜好にあったのか、よく飲まれているように思う。実際、ブルゴーニュワインの輸出先国として、日本は世界第3位なのだそうだ。

実は以前から、内心思っていたことがある。日本にあるブルゴーニュワインは美味しい。いいワインが日本に来ているのではないか、と。

他地域と比べても、早い時期からハイクォリティなワインを日本で飲むことができていた。

 

美味しいブルゴーニュワインに当たる確率が高ければ、日本でブルゴーニュ神話が出来上がるのも自然なことだ。その理由が、この本を読んでわかった。というより、やはりいいワインが日本に来ていたんだと確信した。

このルポの主人公は、坂口功一という人物。大手商社のパリ駐在員時代に、フランスで独立し、ワイン貿易会社を立ち上げる。1985年のことだ。ブルゴーニュで自家元詰が本格化し、ビオディナミが広がり、ワインが高品質に進化した、その時代を坂口氏は名門ドメーヌとともに歩いたのだ。

そして、醸造家たちの信頼を勝ち取った。日本に高品質のブルゴーニュワインをたくさん輸入し、広めた。現在も、日本に入る高級ブルゴーニュの10本に1本は、坂口氏が扱っているのだという。

坂口氏の力は、確実に日本のワイン文化を押し上げた原動力の一つになったと思う。彼がいなければ、日本人は今ほどのブルゴーニュ好きにはなっていなかったかもしれない。彼がいたからこそ、日本人は、本物のブルゴーニュを知り、体験することができたのだと思うから。

ルポは、そんな坂口氏が歩んだ人生を、緻密な現地取材から浮き彫りにする。ブルゴーニュの醸造家たちのこだわりや情熱に真摯に向き合う坂口氏。ワインビジネスで一発当ててやろうという野心もあったのかもしれないが、それ以上にブルゴーニュを愛し、ワインを愛し、地道にひたむきに現地の人々と交流を重ねる坂口氏の姿に感動する。

そんな彼の活動を通し、ブルゴーニュワインの劇的な進化の裏側も垣間見せてくれる。実に読み応えのある内容だ。ブルゴーニュの美味しさの秘密もわかるし、知らなかったブルゴーニュを知ることもできる。最後にブルゴーニュワインを理解するための資料集もついており、ある意味、入門書にもなっている。

読み終えて、立ち飲み屋の彼が、私に熱く語ろうとした理由がよくわかった。発見と感動にあふれているのだ。ワイン好きなら、ブルゴーニュ好きなら、この本はぜひとも読むべきだ。今宵は、あの立ち飲み屋に行って、湧き上がってきたこの熱い思いを語ろうかと思う。

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WINE-WHAT!? 編集部
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つゆ来りなば 夏遠からじ


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お酒はハタチを過ぎてから