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蓼科で日本のジビエを!

日本ジビエ振興協会代表理事・藤木徳彦さん(オーベルジュ・エスポワール)に訊く

ジビエの季節まっだなか! ジビエといえばワインである。だから、WINE-WHAT!?は、ジビエの楽しみを提案したい。まずは、日本のジビエの現在を聞いてみよう。行き先は長野県蓼科だ。

オーベルジュ・エスポワール 
長野県茅野市北山5513-142
tel.0266-67-4250 www.auberge-espoir.com
定休日 木曜日(8月は無休。1月中旬〜3月中旬予約営業) 
12:00〜13:30(L.O.) 
17:45〜19:00(L.O.)

なぜ日本ではジビエが利用されない?

別荘地日本一の軽井沢にいまや迫る勢いで注目を集める蓼科。その勢いとは裏腹に、軽井沢が動なら蓼科は静。今後の経済や気候次第では、巨大な経済圏かつ、文化の発信地となる可能性をのぞかせながら、あくまでもこの地は、森林の静謐に包まれている。

そしてここに、「美味しいジビエを日本の食文化として普及させ、地域に貢献する」という理念を掲げる「日本ジビエ振興協会」の本拠地と、その理念のショーケースたる「オーベルジュ・エスポワール」がある。

鳥獣被害の対策として、シカやイノシシの駆除が進むいっぽうで、その肉は、まだほんのわずかしか食用になっていない。日本の山林に豊かに存在する滋味深い食材、ジビエが、なぜ、利用されないのか。

それは、狩猟者、処理業者や販売業者、そして飲食店や調理者という、三者の連携の難しさに理由がある。

シカやイノシシであれば、狩猟者はこれをなるべくきれいに仕留め、すみやかに血を抜き、処理業者へと託す。処理業者は処理後、ロースやモモなど、部位ごとに肉を分け、ストックし販売。飲食店や消費者はよいジビエを見分け、美味しい料理にする。

畜産に比して、多数の小規模な狩猟者と処理・販売業者が全国に点在し、まだまだ品質にもばらつきがあり、流通も未成熟。調理法にしても普及していない。課題は多いのだ。

飲食店が大量の鹿肉を欲したとしても、安定した品質の肉を必要なだけ、望まれたタイミングで供給する、などというのは難しいこともある──。

オーベルジュ・エスポワールのオーナーシェフであり、日本ジビエ振興協会の代表理事でもある藤木徳彦氏(右)と野村秀也ソムリエ。

ジビエにはヴィンテージワイン

その一方で、「この猟師さんの仕留めたカモが食べたい。というお客様もいらっしゃるんです」というのはオーベルジュ・エスポワールの藤木徳彦シェフ。前述の協会の代表理事を兼任する藤木氏は、ゆかりある蓼科の地で、塩尻出身の野村秀也ソムリエとともに、日本のジビエ料理を追求する。また、食材の入手から調理まで、ノウハウを伝え、後進の指導にも励む、ジビエの伝道師でもある。

40席の客席と3部屋の寝室をもつオーベルジュ・エスポワールはレストランとしても宿泊施設としても利用できるけれど、いずれの場合でも高級だ。人里はなれた山の中で、この高級店が20年も営業を続けているという事実に驚愕を禁じ得ない。

全国から食通が通う。それだけの価値がここにあることの証左だ。

メインダイニングだけでも40席。さらに、テラス、冬場はジビエの熟成につかわれる個室などもある。窓の向こうには鹿が顔をのぞかせることも。

クルマでないとアクセスできない場所でもあり、宿泊できるのは嬉しい。都会ではありえないゆったりとした時が流れる。

四季折々の蓼科の山林の幸、日本で望むべく最良のジビエの数々。自慢の生ハムやベーコンも、ハーブティーも、きのこ料理も、土地に根ざした、ここでしか食べられないもの。そこに、野村ソムリエが2500本超を抱く地下のセラーからワインを選ぶ。希少な日本ワイン、ヴィンテージワインが多く、ワイン好きなら胸が踊る。

地元の猟師から届けられる鳥。上段は左からスズメ、ヤマシギ、コガモ、ムクドリ。下段は左からヤマバト、キジ、マガモ、コジュケイ、ヒヨドリ。

四足のジビエは専門の加工業者が処理し、パックされている。栄養価が高く、脂肪は少なく、アスリート向けのヘルシーフードでもある。

それらは、高級であろうとして高級なのではなく、必然的な帰結として高級だ。

客の要望にあわせて、ときに使用する銃まで指定して手に入れる食材、藤木シェフはビスポークの職人のように、それを美味しい料理へと仕立て上げる。時間も労力も要る。

「現代の料理はその場でできる、手間をかけないものになってきているようにおもいます。それは世界的な食の傾向でもあって、いまのワインも、そういう料理に合うように造られているのではないでしょうか。

でも、私の地元はジビエがうまい。そしてジビエ料理は手間がかかる。そしてクセはあります。ムートンの61年の空ボトルがそこにあります。熟成した素晴らしいワインでした。

でも荒々しさも感じました。ワインはその時代の食に合わせて造られているのではないでしょうか? 

おそらく当時はワインも食事も、いまほどきれいに完璧に仕上がってはいなかったとおもうんです。わざわざこの山奥まで料理を食べに来てくださるお客様が、ヴィンテージワインを望まれるのも、それがここの料理には合うからだとおもっています」

そうして飲まれる歳月を重ねたワインの、なんと果報なことよ。

「エスポワールの料理は地のものです。だから信州で、ジビエに合うワインができてくれれば最高ですね!」

実は温暖化の影響もあって、蓼科のあたりでもブドウが育つ可能性があるとか。信州の今後に、大いに期待しようではないか!

オーベルジュ地下のワインセラーには年代、産地にわかれた希少なワインが眠る。またエスポワールにはシガールームがあり食後酒も自慢。詳細はHPにて。

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