「架空の異国感がある餃子を妄想で作ってほしい!」。世界37カ国を渡り歩いた元「旅するシェフ」石川進之介が、食とワインのエディター&ライター、木村千夏からの無茶ぶりリクエストに応えた妄想餃子4種類。その妄想餃子と、木村千夏が選んだワインを実食しながらペアリング結果を検討します。題して「妄想餃子ワイン食堂」ただいま開店準備中。さあ、架空の餃子世界旅行に出かけましょう。

妄想エスニック餃子レシピ原案:石川進之介

フライパンと包丁に調味料を携え、出張料理人として日本全国・世界37カ国で一期一会の料理を供した経験を持つ。現在はASEAN諸国に通い、外国人ワーカーの環境整備や彼らと日本を結ぶ活動に尽力する。

企画&ワイン・ナビゲーター:木村千夏

主にフードとワインの分野で取材・執筆を行う、エディター&ライター。本企画では、企画立案に加え、ワインのセレクトと調理補助などを担当。マリアージュ検証の企画を好む、食い意地系。

妄想だから現実的!

木村 架空の異国感がある餃子を妄想で作ってほしいという、なかなかの無茶振り企画。さて、では早速、感想を教えてください。

石川 固定観念が打ち砕かれるディスカバリーの連続だったってことでしょうか。シェフとして世界37カ国を巡って気づいたのは、料理ってボーダーレスだってこと。個別に存在するのではなく、文化として混ざり合うんですよね。餃子は小麦粉の皮で餡を包むことから、僕の得意とするパスタと共通点があるうえに自由度が高く、思いっきり具材で遊べる。ワインと合わせてみて、盲点を突かれた小気味よい驚きと感動があったのがうれしい誤算でした。

木村 妄想の先に、まさかの感動があったという?

石川 そう。僕にはソムリエ視点のコメントはできませんが、それぞれの餃子にワインを提案してもらって試したら、互いが風味を補ったり、相乗して広げたりという“win-win”な関係性が成立していました。この即興感は、旅の醍醐味とも通じる。それに、スパイスとハーブの効力って改めて凄いんだなと! 木村さんがもともとのレシピに追加でゴリ押ししてきたものが多かったよね?

木村 料理が得意ではない者の代表として、テクニックいらずで風味に変化をつけたり、ワインとの相性をアップするために、とても力強いアイテムだと思っています。何かしら料理側にひっかかる特徴がないと、ワインと合わせてもその先に面白い展開がないような気がして。

石川 せっかく提案したレシピなのに、次々とワイン視点からのツッコミが入る……結果的には面白かったから別にいいんだけど(笑)。料理もワインも、実は最強のコミュニケーションツール。旅先で作る場合、固定のレシピが通用しないことが多くて、その場のアレンジで対応するしかない。まぁ、レシピは一つの指針ではあっても、忠実に守らなくったっていいんです。どう崩すかっていうことも含めて楽しめば。ツアーで行く旅行もいいけど、自分でカスタマイズすれば別の味わい深さがあるようにね。

木村 そもそも餃子って家庭料理。さらに、今回提案したのは異国風を妄想する内容だから、“ガチ本場風”ではないし、料理単体でパーフェクトに達することを狙っていない。そうすると、カジュアルに試すことができるテーブルワインと合わせるのが現実的。お互いが補い合ってトータルで満足できたら成功です。不思議とワインがあれば、何とかなっちゃうっていう(笑)。傑出したワインの価値もわかるけど、テーブルワインにはまた別にちゃんとした役割があるんだと主張したい!

石川 すっごいアバウトな意見(笑)。あと、手軽さかな! 「地中海に捧げる餃子」の三角形とか、木村さんは簡単な包み方を中心に採用していましたよね?

木村 「メルセデス」包みですか。

石川 メルセデスって、車の話?

木村 真上から見ると、形状があのエンブレムみたいだからそう呼んでいます。包む力を軽減するため、なるべく技術不要な方がいいと考えました。ラクした分、ゆっくり飲みましょう。

石川 料理が自由であるのと同じように、ワインを合わせることって教科書的な法則論でなく、感覚でよいんだなぁって思いました。

木村 ワインの知識を磨くことだけではなくて、妄想力を鍛えるという手だって有効。

石川 美味しいの先にある、「楽しい」に到達できた手ごたえ十分。ぜひ、食いしん坊&ワイン好きの方に体験していただきたい!





#1 地中海に捧げる焼き餃子×南仏ロゼ

木村千夏が選んだワイン 
エシュ・エ・バニエ
コトー・デクサン・プロヴァンス・ロゼ 2017
生産国/地域:フランス/プロヴァンス
品種:グルナッシュ、サンソー
希望小売価格:2,500 円
問い合わせ先:ジェロボーム

材料【20~25個分】
餃子の皮(市販品)20~25枚
種抜きブラックオリーブ(粗みじんにする)大さじ3
酢漬けのケイパー(粗みじんにする)大さじ1
A オリーブオイル漬けドライトマト(みじん切りにする)40g
粉チーズ、オリーブオイル 適量
フレッシュタイム、ピンクペッパー 各適量

作り方
1.基本の餡(後述)にブラックオリーブとケイパーを入れて混ぜ、皮で包む。
2.フライパンで焼き上げる(後述)。
3.器に盛り、タイムとピンクペッパーを飾り、Aを混ぜたタレを添える。

開放的な抜け感で日本の夏を爽快に!

石川 たれにドライトマトと粉チーズを使ったことから、僕の案では「イタリア風餃子」と名づけたかったのですが、木村さんから秒速却下されました(笑)。

木村 地中海系のロゼワインに合わせたいという意図があったからです。

石川 「ロゼはお花見の季節!」みたいな紹介の仕方をよく見かけますね。

木村 ロゼは一年中美味しいですよ。コクがあるタイプなら秋~冬の食材に合う。ここでのカギは、海っぽいテイストのロゼだっていうこと。まぁ、飲んでみてください。

石川 果実のボリュームはあるけれど、キレが良くてドライ。冷やして飲んだら絶対気持ちいい。で、海っぽいというのは?

木村 そりゃ、南仏プロヴァンスのワインですから。ほのかにハーブや潮風っぽいニュアンスがありませんか? それが高温多湿な日本の盛夏に心地よいのではと考えました。

石川 ジメジメ系じゃなくてカラリとさわやかな太陽と風の香り。それで木村さんはタイムとピンクペッパーを足したわけだ。

木村 吸い込まれそうに青い海と空の高さをイメージして、ハーブの清涼感ですがすがしく抜ける風味をプラスしました。すっきり揮発するようなワインのアルコールとタイムが合わさると、ドライな空気に瞬間移動できる気がしませんか?

石川 うん、ピンクペッパーの軽やかなスパイシーさもしっかり作用している。

木村 そう、辛味主体ではなく、果実感があるようなスパイス香。ロゼってファンシーな扱いをされがち。でも、甘くて乙女なタイプの方が少ないです。プロヴァンスのものならアルコールの主張もあるので、必ずしも女性的ではなく、ちょっとアニキな雰囲気も。

石川 ロゼの魅力に気づいた。主に魚料理に使うという思い込みがあったので、タイムにドライ感を求めるという視点も新鮮。餃子とワインでバカンス気分が味わえるとはね!

餃子の基本の餡の作り方
材料【20~25個分】
豚ひき肉 200g
天然塩 小さじ1/2
黒こしょう 適量
作り方
1)ボウルに豚ひき肉を入れ、天然塩と黒こしょうを加え、手で滑らかになるまでしっかりと練る。
2)以降の各レシピの具材を加えて混ぜ、皮で包む。

餃子の焼き方
1)フライパンに米油(サラダ油でも可)を熱して餃子を並べる。いったん強火にし、餃子の下1/3ひたるくらいに熱湯を注いで蓋をし、中火で3分ほど蒸し焼きにする。
2)蓋を外し、水分がなくなるまで中〜弱火で加熱して焼き目をつける。





#2 サンジェルマンの焼き餃子×やっぱりクレマン

木村千夏が選んだワイン 
エシュ・エ・バニエ
クレマン・ド・リムー・ブラン・ブリュット・レゼルヴ
生産国/地域:フランス/ラングドック・ルーション
品種:シャルドネ、シュナン、モーザック
希望小売価格:3,000円
問い合わせ先:ジェロボーム

材料【20~25個分】
基本の餡 200g
餃子の皮(市販品) 20~25枚
ドライイチジク(粗みじんにする) 4個分
ゴーダチーズ(5㎜角の角切りにする) 50g
A はちみつ 適量
黒こしょう 適量
シブレット(あさつき、芽ネギでも可) 適量

作り方
1)基本の餡にドライイチジクを加え、皮でゴーダチーズとともに好みの形に包む。
2)フライパンで焼き上げ、シブレットとともに器に盛り、黒こしょうを振る。
3)好みでAを混ぜたタレをつけていただく。

キレではなく、コクで受け止める泡

石川 なぜにコレがサンジェルマン?

木村 正確には、パリのサンジェルマン・デ・プレ。そのやや南、カルチエ・ラタンより少し西のオデオンから、サン・シュルピスといわれる界隈のイメージです。

石川 もう、わかんないって!(笑)。

木村 ざっくり言うと、知的な雰囲気がありつつ庶民的なエリア。美味しいお料理を出すけれど、ほどよく店がボロくて、器も相当使い込まれているビストロにありそうな……。

石川 これはサンジェルマンじゃなくて、ヨーロッパ諸国でよく見かける、フルーツと肉の組み合わせ。餡をパテやリエットに見立てたシャルキュトリー風です。刻んだドライイチジクとチーズを入れて、旨みを相乗させる。泡モノなら何でも合いそうだな!

木村 いえいえ、違うんです。「クレマン・ド・リムー」であることが重要。

石川 ?

木村 これはシャルドネのほかシュナンやモーザックを使用し、澱とともに熟成させているから、コクと厚みがあり、餃子とワインの旨みのボリュームが一致する。発泡の刺激で事が済むなら、ビールでもハイボールでもいい。それぞれが美味しいのではなく、お互い混ざり合って風味を醸してくれないと!

石川 確かに、味わいがふくよかで、キレの良さや爽やかさ頼りではない泡モノの側面に気づかされる。そういえば、さっき急にシブレットを買いに行ってたよね?

木村 豚肉にチーズ、ドライフルーツって、旨味が渋滞気味。それだと印象が薄れるので、コントラストとなる、すっきりした風味を足せば、よりリッチさが際立つ。

石川 シブレットが、ジューシーな肉の油分や甘味、旨みを締めている。黒こしょうを振ったはちみつをつけても美味しい。

木村 シュワシュワならいいということではない。たっぷりした旨みを持つ泡で包んで広げることがここでの成功のポイントです。





#3 東南アジア風水餃子×カジュアルなボルドー

バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド/ムートン・カデ・ルージュ

木村千夏が選んだワイン 
バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド
ムートン・カデ・ルージュ
生産国/地域:フランス/ボルドー
品種:メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン
価格:1,650円
問い合わせ先:エノテカ

材料【20~25個分】
基本の餡 200g 
餃子の皮 100g
パクチー(1㎝長さに切る) 2株
無塩ピーナッツ(粗く砕く) 大さじ1
クミンパウダー 適量
コリアンダーパウダー 適量
A ナンプラー、鷹の爪、砂糖、米酢 各適量ライム、飾り用パクチー(1㎝長さに切る) 各適量

作り方
1)基本の餡にパクチーとピーナッツ、クミンパウダー、コリアンダーパウダー入れて混ぜる。
2)皮で包んで茹で(後述)、飾り用のパクチーを散らせる。
3)Aを混ぜたタレをつけ、好みでライムを絞る。



スパイス感で互いに高め合う

石川 思い入れがあるASEAN風餃子です。これは外せない。正直、白ワインを選んでほしかったんだけど、なぜ赤? しかもボルドーだっていう根拠を教えて。

木村 ボルドーの赤って、奥底にオリエンタルスパイスみたいな香りを持っているものがあるじゃないですか。まぁ、けっこう良いワインの範疇かもしれないですが。そこにカジュアルなアイテムで近づくために、餃子側にスパイスを足してみたら、双方の味わいの格上げが図れるのではという試みなのです。

石川 だから、餡にクミンとコリアンダーを入れてくれっていうリクエストだったのか。

木村 どちらも官能的で華やか。クミンはどっしりと低めの位置から、いっぽうでコリアンダーは細く高めの位置から香ると感じたので、混ぜてみました。

石川 香りってダイレクトに記憶を呼び起こす。ASEAN諸国の市場のむせかえるようなスパイスや湿度、人の体温が混然となったような……。(ひと口ワインを飲んで)最初は「ホントかな」と思ったけど、実践してめちゃくちゃ腑に落ちた。で、このワインはインパクトがあるけど、しなやかで飲み心地がいいな。

木村 だから水餃子にしました。樽香の強いタイプなら薄い皮で焼き餃子にして、香ばしさを前面に出すのもありです。

石川 ナッツのオイリーなニュアンスもしっかりワインが受け止めているし、パクチーのひとクセあるグリーン系の香りとも、まったく違和感がない。

木村 そこはカベルネ・ソーヴィニヨンやフランが持つほのかな青みに委ねました。

石川 タレに使った酢がワインとぶつかるかと思いきや、スパイスが加わることで口内でのトータルフレーバーがマッチする。東南アジア×ボルドー赤の可能性は考えていなかった!

基本の水餃子皮の作り方
材料【20~25個分】
強力粉 100g
温水(45℃)50~60cc
薄力粉(打ち粉用、片栗粉でも可)適量
作り方
1)ボウルに強力粉を入れ、箸で混ぜながら温水を3回ほどにわけて注ぎ入れる。 
2)全体がまとまったら、粉っぽさがなくなるまで手でよくこね、固く絞った濡れ布巾かけて30分ほど休ませる。
3)2に打ち粉をまぶし、滑らかになるまでこねて棒状に成形し、包丁で20~25等分に切り分ける。
4)3を麺棒で丸く伸ばし、餡を包む。

水餃子の茹で方
1)鍋に1.5リッターの湯を沸かし、天然塩10gと米油(サラダ油でも可)大さじ1を加える。
2)餃子を入れて3〜4分ほどで茹で、皮がふっくらして浮き上がってきたらすくいあげる。





#4 NIPPONの“Umami”水餃子×和の旨味ワイン

木村千夏が選んだワイン 
フジッコワイナリー
フジクレール 甲州シュール・リー 2017
生産国/地域:日本/山梨県
品種:甲州
希望小売価格:1,700円
問い合わせ先:フジッコワイナリー

材料【20~25個分】
基本の餡 200g
基本の皮 100g
しいたけ(粗みじんにする) 2枚
しょうが(みじん切りにする) 1片 
三つ葉(粗みじんにする) 1/2株
かつお節 10g
かつお出汁 500cc
薄口しょうゆ 大さじ3
酒 大さじ3
塩 適量
三つ葉(飾り用、2㎝長さに切る)、山わさび(すりおろす)、ポン酢 各適量

作り方
1)基本の餡にしいたけとしょうが、三つ葉、かつお節を加えて混ぜる。
2)1を皮で包んで茹で、器に盛り、薄口しょうゆと酒、塩を加えて温めたかつお出汁を注ぎ、三つ葉を飾って山わさびやポン酢をつけていただく。



出汁感の調和で、ほっとする風味に

石川 不動のNIPPON国民食ながら、和なアレンジを見かけない。そこで、かつお節やしいたけ、しょうがを入れました。水餃子にするのは木村さん案でしたね。

木村 日本料理店のお椀ものや明石焼き、あるいはお雑煮などからの発想です。

石川 海外から戻ってきたとき、出汁の風味ってやっぱり落ち着くんだよねぇ。でも、甲州ワインってどちらかというと昆布出汁っぽいという認識でした。

木村 イノシン酸かグルタミン酸かの話ですか? これは、ややふっくらした果実味があるので、かつお出汁の側に寄せられる。昆布出汁だったらシュッとした甲州にするという選び分けもできます。山わさびも良いアクセント。これ、チューブのホースラディッシュでもいいですか?

石川 もちろん。ところで、ワインと辛さってNGという意見もありますよね?

木村 たっぷりの唐辛子など、HOTな情熱系は難しいけど、わさびって、クール系。薬味のように働くので、量次第です。酢醤油や柚子胡椒、山椒などもいいと思います。

石川 餃子の包み方がひな人形みたい!

木村 綿棒で丸くのばした皮の中央に餡を置いて二つ折り。で、腕を組むみたいに両脇をくっつけるだけという簡単さです。

石川 “包む”って日本的な気がする。三つ葉を添えたことも粋。和のハーブみたいな香りとほのかな苦みが甲州と合っていて、お椀とワインが一体化して完成されるような感覚があった。実は今まであまり甲州ワインを選ぶ機会がなくて……。かつおの風味にワインが相まって、合わせ出汁みたい。海外の友達が遊びに来た時に振る舞いたいな。

木村 出汁感にはやっぱり日本ワイン。シャルドネでもいいけれど、薬味など“苦み”の心地よさを生かすなら、甲州です!

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
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