クリマ(Climats)とワイン

ワイン徒然草 その3

セミナー入り口

 

私のような駆け出しの「なんちゃって」ワインエキスパートにとって、セミナーは自己研鑽には打ってつけの場だ。

このたび、フランスのブルゴーニュ委員会が主催するセミナー「Chablis in TOKYO」に参加した。

テーマは「シャブリ・プルミエ・クリュ/Chablis Premier Cru、クリマ/Climatsとその多彩な魅力」、講師は高名な大越基裕氏だ(一度お目にかかりたかった。ラッキー!)。

シャブリとの出会い

私が、シャブリという言葉を初めて耳にしたのは、今を遡ることはるか昔、かつての人気漫画「美味しんぼ」を読んだときのこと。当時はワインについてはサッパリで「シャブリ」も「ヴォーデジール」も何のことやら。その後、ワインに興味を持つようになった数年前、丸の内にある「コットンクラブ」で初めてシャブリを口にすることとなる。

アメリカのジャズヴォーカリスト「ヘイリー・ロレン」の瑞々しくもスモーキーな歌声(ちょっとワインみたいな表現!)を聴きに行ったのだが、その薄暗い店内でソムリエさんがそっと近づいてきて「旦那、今夜はシャブリのいいのが入ってますぜ」と私の耳元で囁くので、「あぁ、シャブリね。ではもらいましょうか」と知ったかぶりして、ドキドキしながら飲んだものだった。

ワインエキスパートの知られざる使命とは!?

それから時は流れて・・・。今は自分がワインエキスパートを名乗って、こうしてシャブリのセミナーに関するレポートを書いているのだから、人生はわからない。

ご縁があってワインの世界に飛び込んではみたものの、専門的に勉強していくと困ったことが起こる。これは試験勉強をしていて痛感したのだが、誤解を恐れずにあえて言おう! 『ワインエキスパートとは、自分が飲んだことのないたくさんのワインについて、また行ったことのないたくさんの国や生産地について、さも飲んだことがあるかのように、まるで行ったことがあるかのように「大いなる知ったかぶり」をしなければならないのだと!』

わ~、ソムリエ協会に怒られそう! 私はシャブリどころかフランス、いやいやヨーロッパにすら一度も行ったことがない(汗)。試験対策のため、田崎真也先生のサロンで何回かテイスティングをした程度で、実際にシャブリを口にする機会はほとんどないまま、ここまで来てしまった。また、筆記試験に向けてシャブリも勉強したが、他にも覚えなければならない膨大な情報量(教本は電話帳くらいの分厚さ!)を考慮すると、7つのグラン・クリュの名称、地図上でのその位置、一番広い面積のクリュはどこかなど、ポイントを絞らざるを得なかった。

かつてのシトー会修道院が所有していた歴史的な畑である「ムートンヌ」が、現在はドメーヌ・ロン・デパキの持ち物であるというところまで覚えるので精一杯。だから、40あるプルミエ・クリュまでは正直手が回らなかった。

でも・・・。そんな私がワインを語ってもいいのである(笑)。たとえ海外で勉強した経験がなくても、やる気さえあればワインエキスパートになれるのだから、その点では「ワインの世界は誰にでも平等に門戸が開かれている」と言っていい。

とは言え、いつまでも「知らないということ」を自慢している訳にもいかない。したがって、今回のセミナーは、その「知ったかぶり」に磨きをかける絶好のチャンスだ! 感謝なのである。

この記事を書いた人

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石戸 智
ワインの魅力に憑りつかれて、人生を大きく方向転換。25年間務めた仕事を退職し、一人でも多くの人にワインの素晴らしさを伝えるため日夜活動している「さすらいのワインエキスパート」。
 ○J.S.A.ワインエキスパート(2016年取得)
 ○WSET Level3 Award in Wine(2018年取得)

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