「手づくり」や「手作業」という言葉は響きが良く、無意識的に「機械生産よりも品質が良いのでは?」と思い込んでしまいます。ワイン用のぶどうも、低品質のワインは機械で収穫、ハイクオリティで高級なワインは手作業で収穫されているという印象を抱きがち。しかし、ナパでは機械での収穫が多くのワイナリーの注目を集めているのです。
熱い視線を浴びるマシーンハーベスター
ワインビジネスはイメージがとても大切。なので、みんな声を大にしては言いませんが、有名なワイナリーでも機械での収穫を導入しているところ、実はあるんです。機械の性能が上がったこともあり、収穫したくないぶどうをあらかじめ取り除いておくなどして畑の状態を整えておけば、状態が良い収穫が可能になるそうです。機械の収穫では、除梗まで行えるので効率もいいのです。ナパでは賃金の上昇などの影響で、ハーベスト時期の労働力確保が年々難しくなっています。
実際に、人員が確保できなかったために、収穫時期が大幅に遅れたところや、結局収穫できずにムダになってしまったぶどうがあったそうです。そんな状況なので、収穫マシーンはナパではとてもホットなトピック。
これが収穫用の機械、マシーンハーベスター。巨大です
機械の中。ぶどうの木を挟み込んで収穫していきます。最近の機械は葉っぱや枝などのMOG(material other than grapes)を取り除く性能が上がっているとのこと
機械で収穫されたぶどうたち。あるワインメーカーは「機械収穫ではなく、フィールドディステム(畑での除梗)と呼んでほしいね」なんて言っていました
もちろん、どの畑にも機械が使えるわけではありません。畑の傾斜やぶどうの木の仕立て方法(枝がキレイに横に伸びていないと機械では収穫できません)、植樹の間隔などの条件が合わない場合は導入できませんし、十分な広さがない畑だと、導入のメリットがないことも考えられます。
手作業だとぶどうは房ごと収穫され、その後、ソーティング(ぶどうの選り分け作業)が行われます
手作業での収穫の様子
とはいえ、人件費のコスト削減と時間短縮、不確定な労働力に頼らなくてすむ安定性、そして近年の機械性能向上による収穫の高効率化に後押しされ、特に資金力のある大きな企業では、今後さらに積極的にマシーンハーベスターが導入されていくだろうと予測されています。
ナパのハーベストの風景が、これから大きく変わっていくかもしれませんね。
機械で収穫されたぶどうたち。葉っぱの混入もそれほどなく、粒もあまり潰れていません
機械で刈り取られたあと
この記事を書いた人
- Saori
- 2014年よりアメリカはカリフォルニア州ナパにある、『Napa Valley Collage』に留学。ワイン醸造とブドウ栽培を勉強。ワイナリーのテイスティングルームで働くかたわら、ぶどうの樹の病気調査、畑作業なども経験。2018年10月に帰国。現在、WSET LEVEL4の勉強中です。
ナパやソノマでおすすめのワイナリーや、観光情報をこれからも発信していきます。