アームチェア〝ワイン〟トラベラー Vol.4

大竹しのぶと、大声で歌い合いながら飲みたい

421-1

ぐびり。甘い

うーむ。このページの選者もさるもの。よくよく練っている。

また変わった風体なワインが送られてきた。茶色の瓶に透けて見えるのは、明らかに白ワインである。しかし瓶の首が他とは違う。

普通のボトルは、首がまっすぐだが、この瓶は、モルトウイスキーのボトルのように首がくびれ、首元がふっくらと膨らんでいる。

モルト瓶のデザインは、ポットスティルの形を真似たとか、重厚感を出すために、あのデザインになったという話を聞いたことがあるが、このワインも産地か樽が関係するのだろうか。あるいはポートワインの瓶にも似ているので、そちらか。

ともかく注いでみよう。おおっ。白は白だが、流れ出した液体は茶色である。色の淡いウイスキーといった色合いで、注いだだけでシェリーのような香りが漂っている。

いや鼻を近づければ、ウイスキーのような香りもする。ポートのような香りもする。

いかにも選者が、「どうこれわかる? 今までとは違うよ」と、得意げな笑いを浮かべていそうなワインである。

ぐびり。甘い。太い酸味に支えられた甘いが、舌にとろりと包み込む。

香ばしく、甘みの切れはいい。しかし思ったのは、これ1本一人で飲めるのかしらという不安である。甘味に品はあるものの、これが続くと飽きるのではないか。最後に辟易して、もう原稿なんてどうでもいいと、自暴自棄になってしまいはしないか、という不安である。

用意したつまみは、パルミジャーノ・レッジャーノ、ゴルゴンゾーラ・ピカンテ、焼いたカチョカバロ、白カビサラミ、蒸した鶏胸肉である。

甘いワインにこれらがどう応えるのか。不安だけど、楽しいぞ。まずはパルミジャーノ。塩気が甘みに溶け込んで、こいつはいい。

恐らく、コンテ・エキストラや、ヴァシュラン・モンドール辺りでも合うのではないだろうか。塩分が甘味と出合って、滑らかに消えていく。ゆったりとした時間感覚がいい。

ならゴルゴンゾーラも合うハズと試してみたが、チーズの質にもよるかもしれないが、ピカンテのぴりっとした刺激が際立ちすぎてしまう。

ふと思い立ち、台所にあった天山干しブドウをチーズと合わせてみた。こいつはいい。ブドウの甘酸味が、良き仲介者となってワインと引き合わせてくる。

もっとも、干しブドウとこのワインだけをやると、止まらなくなるけどね。

鶏胸肉はワインが勝ってしまう。ワインを少し口に含み、それから鶏肉を噛むようにすると、淡い肉の味に色気がでる。これは口に入れるワインの量を、極少量にすることが要である。

この記事を書いた人

マッキー牧元
マッキー牧元
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、日々飲み食べ歩く。まさに、「食べるグルメマップ」。多くのアーティストの宣伝・制作の仕事のかたわら、1994年には、昭文社刊「山本益博の東京食べる地図」取材執筆、1995年には「味の手帖」に連載を開始するなど、食に関する様々な執筆活動を行う。現在も、「味の手帖」、「食楽」、「銀座百店」、「東京カレンダー」など、多数の雑誌やWebに連載中。日本テレビ「メレンゲの気持ち」、「ぐるぐるナインティナイン」などに出演。

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