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「マネーの虎」と呼ばれた男 南原竜樹のしくじり話 第2話

東北の被災地でも大活躍した電動スクーターは故障しまくりだったの巻

なんと日本製の半額以下!

いまも大きな傷跡を残す2011年の3.11東北大震災。その直後に発売したのが、「AT-ES1」と名付けた中国製の電動スクーターだった。これはけっこうな台数が売れた。

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中国では自転車に代わって2000万台が走っている、といわれていた。

「AT-ES1」の新車価格は、なんと9万8000円。日本製電動バイクの半額以下! 安さの決め手は、中国製であることももちろんだけど、バッテリーにリチウムイオンではなくて、自動車用の鉛バッテリーを使っていたことにあった。リチウムイオン電池に比べると重くて効率が悪いのは確かだ。でも一回の充電で45km走れたから日常使うには十分。電気代は充電1回分で15〜20円。電気代1円あたりで3km走ることができた。燃料代はゼロ円みたいなものだ。

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「革靴」のような高級品ではない、というメッセージを「下駄」という言葉に込めた。

ナンバラさんはさらにこの商品を魅力的にすべく、モーターに2年、コントローラー、充電器に1年、バッテリーその他に6カ月、という保証をつけた。「AT-ES1」は静かで乗り心地もよくて、おまけに排ガスをまったく出さず、価格はガソリンのスクーター並みで、保証もちゃんとしている。これは買いたくなる!

2011年の7月、縁あって被災地の東北に10台無償で送った。気仙沼の大島では、本当に喜ばれた。なにしろガソリンがなかったし、瓦礫で塞がれていて自動車では通れない道路でもバイクなら行けた。被災した方たちに物資を運ぶボランディアの足として、普通免許で乗れる電動スクーターはすごく役に立った。好評に気をよくして、そのあとまた10台あげたんじゃないかな。

「AT-ES1」の原価は5万円ぐらいだったから、10台でも50万。50万円であげたわりには貢献度が大きい。それはつまりコスパがいいということ。あのとき、被災地に1000万円のベンツをあげても貢献できなかったと思う。タダであげたAT-ES1は、とても好評で、ひょっとしていまでも乗っている人がいるかもしれない。

でも、お金を出して買った人には不評で、モーターが壊れたり、バッテリーの寿命がきたりすると、とてもガッカリされた。日本製のバイクの半値で買えるから、寿命も半分でもいいでしょう、というのが僕の考えだったけれど、買う人はそうじゃなかった。お客さまの要求とのミスマッチがあった。

安かろう、悪かろうとは思っていたけれど、これほど故障が多いとは想定外だった。おかげで、儲けより保証で修理するメインテナンス費用のほうが高くついた。だけど、本当のしくじりは、中国製の電動スクーターが壊れまくったせい、つまり外的要因ではなくて、中国製電動スクーターの故障の率を見誤った僕にある。さらに、お客さまの要求レベルの高さを見誤る、というしくじりがあった。

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こんな宣材をつくった。基本的に広告は出さなかった。コスト低減のためだ。

加えて、もうひとつ大きなしくじりがあった。それは、バイク屋さんを販売拠点にできなかったことだ。バイク屋さんで売っていれば、修理で苦労して撤退するなんてことにはならなかったはずだ。しようがなくて電気屋さんで売っていたけど、電気屋さんにバイクの修理はできなかった。

ただ、ごぞんじのかたも多いと思うけど、自動車の修理屋さんでも、オルタネーターとかエアコンとか、電装品の故障は電装品専門の業者に回している。機械モノの修理を得意とするベテランのメカニックでも、電気関係の修理はできないし、やろうともしない。なぜかというと、内燃機関のエンジンや機械をイジって直すことに快感を得ているのだ。バイク屋さんも同じ人種で、電気は苦手。だから電動スクーターを扱ってくれなかったのだ。

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リチウムイオン電池を積む高級版も発売予定だった。

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電動アシスト付きの自転車も準備していた。いま発売したら成功するかも(笑)。

【しくじり南原社長の金言】
バイク屋さんは電気が嫌いです。


この記事を書いた人

南原竜樹
南原竜樹
名古屋〜東京〜沖縄をめまぐるしく移動しながら、いくつものプロジェクトを同時進行させる超人ビジネスマン。「冷徹の虎」の異名をもつ。最終目標は世界制覇だ! 

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