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リシャール・ジョフロワが 日本酒にアッサンブラージュをもたらす

シャンパーニュの名人による日本酒のアウフヘーベン

ながらく、ドン ペリニヨンの最高醸造責任者であったリシャール・ジョフロワ氏が、富山で日本酒を造り始めた、というニュースは、ワイン業界ではよく知られるところ。そこにはどんな物語があったのか? WINE WHATは、リシャール・ジョフロワ氏にインタビューする機会を得た。

アッサンブラージュ中のリシャール・ジョフロワ氏

バランスには重力がない

ドン ペリニヨンのリシャール・ジョフロワであって、リシャール・ジョフロワのドン ペリニヨンでもあった。1990 年に最高醸造責任者となってから長きに渡り、価値を創造し守り続けてきた彼が、2018年、その任から離れるという一報に業界はざわめいた。今、なぜ辞すのか? と同時に、その先どうするのか? 

その先がまさか、日本での日本酒造りだったとは。

「リタイアして、ゴルフをしながら過ごすというのもありえました(笑)。でも私は意欲的に活動を続けている。旅を続け、冒険をしています。多くの人を巻き込んで」

きっかけを聞けば、もともと在任中から酒造りに興味があったこと、今回の酒造りの舞台となった富山と富山の人との縁がつながっていたことなど、背景にはいろいろあったようだ。そして、聞けば聞くほど、日本への、また日本酒への長年抱いていた尊敬や思いがあふれ出す。

「私の人生において、若い頃から追い続けているのは、バランス、完璧さ、一貫性。つまり調和、ハーモニーです。それが仕事の原動力であり人生の目標です。私は、今も引き続き同じ命題を探求しています。そして、磁石のように私は日本に引き寄せられ、今までとまったく違う文化、文脈、制限のなかに身を置いた……そう、制約、これが緊張感をもたらし、もっと高みへと導こうとする。まさに日本、酒が、私を新たな探求の旅へと導いたのです」

「人生の新しい章がはじまった」と彼は言う。日本酒という新しい領域、そこで生まれた「IWA 5」という作品。それは変わらぬ情熱を形にしたもの。実はシャンパーニュにおいても日本酒造りにおいても彼が表現し続けているものは変わらない。アッサンブラージュだ。

醸造の技法を駆使し、異なる産地で栽培された山田錦、雄町、五百万石の酒米、5種類の酵母が旋律を奏でる。完成されたレシピを持たず、少しずつ、絶妙に進化し、1年、そしてまた
1年と新しい異なった特徴が生み出される。販売は公式WEBサイトにて、1本箱13,000円から。
https://iwa-sake.jp/

「バランスは魔法のようなもの。完璧にバランスがとれているものは、飲みものでも、食でも、芸術でも、重力がないのです。天秤を思い描いてください。ほんの数グラムでも、どこかの重量が増減した途端、天秤は崩れます。重力が戻ってくる。私が思うには、これが酒の真髄。素晴らしい酒は、重力がない。飲んで軽快で、宙に浮くように、体に入っていく。それはバランスから生まれ、バランスは、アッサンブラージュからしか生まれない。それが私の目指すものです。」

今回リリースされた「IWA 5」にはさまざな原酒がアッサンブラージュされている。異なる産地で栽培された山田錦、雄町、五百万石の酒米と複数の酵母が奏でるハーモニー。これこそが「リシャール・ジョフロワ作」という真髄の部分なのだろう。

「ひとつの性格しかもたない酒ではバランスを生まない。異なる要素の間に働く緊張がもたらす相互作用によって調和をつくりだすには、複数の日本酒をアッサンブラージュする必要がある」

IWA 5は間違いなく日本酒である。そしてそれは、世界に開かれている。IWA 5との出会いが日本酒への入口となり、ここから世界が、伝統的な日本の酒、土地土地の地酒に出会うきっかけにもなるだろう。リシャ―ルという価値が生み出す新しい日本酒が世界へ日本酒という存在を広げてくれるのではないかという期待。

リシャール・ジョフロワの第二の人生は日本。我らとともに。

リシャール・ジョフロワ氏。立山町白岩にて
写真 Nao Tsuda

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