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柔らかな笑顔

圧倒的な美しさは、ときに場に緊張感をもたらす。まして、〝レジェンド〟とまで称された元宝塚歌劇団男役トップスターなら−−−−。

そんな予想に反し、カメラの前に立った女優、柚希礼音さんはごく自然に、ふわりと柔らかな笑顔を浮かべる。

入団から11年の早さで2009年星組男役のトップスターに就任。以来、近年では長期の約6年を務め上げ、昨年5月に退団。その間に宝塚歌劇創立100周年を盛り上げる中心的役割を果たし、タカラジェンヌ史上2人目となる「日本武道館リサイタル」を成功させた。

ラストステージの東京宝塚劇場には過去最高の1万2000人のファンが詰めかけ、さいたまスーパーアリーナや全国東宝系映画館45館、台湾でも中継されるというレジェンドを残しての卒業だった。
「やっと自分を認められるようになったのは、トップになったころですね。それまでは誰かをお手本にしようとしたり、カッコよくありたいと無理に標準語で大人っぽいことを言おうとしたりして、かえって何を話してよいのやら言葉に詰まったり……(笑)。でも、トークだって、ダンスや歌、芝居と同じように表現の手段。頭のよさそうなコメントでなくても、ポソリポソリでも自分が本当に思っていることをお客さまに伝えたいと考えが変わったんです」。

大阪出身の柚希さんには、地で話したら舞台上の麗しい男役のイメージを壊し、ファンをがっかりさせてしまうのでは……という不安もあった。

「結果的にファンの方との距離が縮まり、より受け入れてもらえるようになったと感じました。世界が広がったし、自分がラクになったと思います。造り上げた舞台を一方通行で見ていただくのではなく、お客さまと〝共有する〟という感覚が芽生えたことも大きかったですね」。

幼い頃からの宝塚ファンというわけではなかった。だからこそ、トップスターとして多忙を極めるスケジュールの中でテレビにも出演し、一般の人たちにも関心を持ってもらえるように宝塚の魅力を伝えることに努めた。
「昔は宝塚って、毎日『ベルサイユのばら』みたいなことをしているのかと思っていました(笑)。舞台なら見るけど、ちょっと宝塚は独特って感じる人の気持ちもわかるから、もし私を見て、一回ぐらい行ってみようかなっていう人がいらっしゃったらうれしいな、と思って。テレビ出演のときは見ている方が引かないよう、メイクも舞台用じゃなく、少しナチュラルにと気を使ってみたりして(笑)」。