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石田博流 ワイン ペアリングのすすめ 第二回

毛蟹とガスパチョ × パリサーエステート ソーヴィニヨンブラン

ソムリエ、石田博氏にペアリングの極意を伝授していただくコーナー。料理との相性を楽しむペアリングこそがワインの醍醐味。家庭でもその日の献立に合わせてペアリングを楽しみたいと考えるワイン好きは多いと思う。でも、そんな時に、どう選べばいいのか悩んでしまうと言う人も多いのではないだろうか。石田氏の目の付け所や発想法をオンライン体験していただき、参考にしていただければと思う。言ってみれば初心者のための、ペアリング事始めシリーズ、第二回目のはじまり。
(石田博流 ワイン ペアリングのすすめ 第一回はこちら)
毛蟹とガスパチョ × パリサーエステートソーヴィニヨンブラン

トマトと蟹に合わせるワイン

なるほど、旨味が濃い。その旨味をほどよい酸味がさらに引き立てる。噂には聞いていたが、木熟トマトにはトマト特有のあの青臭さはほとんど感じない。みずみずしさも通常のトマトとは比べ物にならない。木熟トマトとは、つまり木になったまま熟したトマト。通常のトマトは、熟す前に収穫し、流通の過程でだんだん赤くなっていく。レストランローブは、鎌倉の農家から直説野菜を仕入れているので、みずみずしい木熟トマトが食べられる。

毛蟹とガスパチョ

トマトの中に毛蟹がたっぷり。見た目も美しい。

 

今回ペアリングする料理は、その木熟トマトをくり抜いて、中にほぐした毛蟹をたっぷり詰めた「毛蟹とガスパチョ」。ガスパチョはいわばソース。ジュレ状にして下に敷いている。カリカリに焼いたビーツが食感のアクセント。パプリカと唐辛子をアイス状にしたものを上からかけて完成。美しい仕上がりはさすがだ。

 

この料理に石田氏は、一体何を合わせてくるのだろう。毛蟹は優しい甘みと繊細な香りが持ち味だ。同じ甲殻類の海老の濃厚さとは対照的なところがある。

「海老は身質もしっかりしていますし、風味の強いソースが添えられることが多いですから、ワインも厚みのあるリッチなものが選ばれます。一方蟹は、その繊細さを引き立てる、きめ細やかな酸味とピュアな透明感のあるフレーバーを持った白ワインが合います。蟹酢やポン酢を添えた和食には、ドイツやニュージーランド、南アフリカのエルギン・ヴァレーあたりのリースリングが良いですね。蟹の繊細さを見事にサポートします。ソアヴェや北海道のケルナーもいいです。熟した果実香、濃厚さ、厚みのある味わいにならないものを選ぶことがポイントです」と石田氏。
今回の料理も、北海道の毛蟹を使うとシェフから聞いたときにはリースリングを考えていたという。しかしトマトと合わせるということで、ソーヴィニヨン・ブランに方向転換したのだそうだ。

あえて、マーティンボローのソーヴィニヨン・ブラン

「ソーヴィニヨン・ブランというと、ハーブなどのグリーンノートが特徴ですが、フレッシュトマトのような香りを見つけることもできます。成熟度が高めのものによく感じられます。ソーヴィニヨン・ブランというと、チリのレイダヴァレー、ニュージーランドのマールボロ、フランスのロワールなどが有名ですが、ほどよく熟度が高く、ガスパチョに含まれるキュウリやセロリの風味を生かすワインと考えて、ニュージーランドがいいと思いました」

石田氏が今回選んだワインは、マーティンボローのソーヴィニヨン・ブラン。マーティンボローは、ニュージーランド屈指のワイン産地。シャルドネやピノ・ノワールの方が有名なのだが、それをあえてマーティンボローのソーヴィニヨン・ブランにするあたりが石田氏らしい。今回は、輸入元のヴィレッジ・セラーズのご協力もあり、パリサーエステートのソーヴィニヨン・ブランを用意した。芳醇な口当たりと快活な酸味がバランスよく調和するリッチなソーヴィニヨン・ブランだ。

「マールボロのソーヴィニヨン・ブランより、熟した印象があり、トマトとちょうどよい力関係になるのでは、と思ったのです」

 

パリサーエステート ソーヴィニヨンブラン

さすがだ。ソーヴィニヨン・ブランのクリスピーな酸味は、まず蟹にアプローチして、その甘みを引き立てる。そしてトマトだ。ジューシーかつほどよい厚みのある味わいと、トマトリーフの香りが、木熟トマトの旨味と気持ち良く調和する。さらには、ジュレ状になったガスパチョの中から、隠れていたさまざまな香味野菜の風味をも引っ張り出してくる。ワインが料理の美味しさを引き出す、まさにペアリングの妙だ。

ワインを飲み込んで、少しすると蟹の味わいとトマトの旨味が、爽やかさを含んで口に改めて戻ってくる。最高の相性であることの証拠だ。

この料理、蟹とトマトの相性の良さもよく分かる。お互いがお互いの旨味を引き出している。そしてそこにソーヴィニヨン・ブランが加わることで、その相乗効果はさらに強くなる。石田流ペアリングマジックは今回も健在だ。夏らしい爽やかなペアリングは、口の中に涼風を吹かせてくれた。


石田博氏

 

石田博プロフィール

合同会社Soupless代表、レストランローブ ソムリエ、社団法人日本ソムリエ協会 副会長。
1969年生まれ。数々の国内ソムリエコンクールを優勝。2000年には、第10回世界最優秀ソムリエコンクール第3位。2011年 厚生労働省 現代の名工、2014年11月 内閣府 黄綬褒章受章。同年 第7回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝。2015年アジア・オセアニア 最優秀ソムリエコンクール優勝。2016年第15回世界最優秀ソムリエコンクール セミファイナリスト。


RESTAURANT L’aube
レストラン ローブ

東京都港区東麻布1-17-9 アネックス東麻布2F
TEL 03-6441-2862
contact@laube.tokyo
http://www.restaurant-laube.com/

今橋英明シェフ

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