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「朝鮮酒器展」への誘い

陶磁器に興味がない人でも1度くらいは耳にしたことがある磁器、有田焼。

その歴史は遡ること戦国時代終盤に近い豊臣秀吉の天下の頃、その美しさに魅了され、どうにか日本でも生産することができないかと、多くの陶工が朝鮮半島から連れてこられたことから始まった。

そうした陶工のひとり、有田焼の祖とされる李参平が、日本初の磁器の焼成したのが1616年。今年、2016年は有田焼創業400年という記念すべき年とされます。

その記念すべき年に、陶祖、李参平のふるさと、現在でいう韓国の、ソウルから約100kmほど南の龍鶏山だったという縁から、14〜19世紀に龍鶏山で造られた古い陶磁器の展示会が、東京のワインショップ、ウィルトスワイン神宮前のギャラリーで開かれています。「古美術 朝鮮酒器展」(4月20日〜6月30日)がそれです。

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手に吸いつくような滑らかさ。真っ白というよりは青みがかった風合いで、電気のない時代には月明りに照らして眺め愛でられていた。

焼き物に必要な条件は「土」「火」「水」「傾斜(窯設置のため)」と言われ、ワインにも共通するところがあります。「火」はワインでは「日」、有田焼は磁器なので正確には「土」ではなく「石」ですが、「火(日)」と「水」、全部合わせてテロワールと考えれば、同じ大地からの恵みと考えることもできます。

400年前に、「陶祖」李参平が佐賀県有田町で磁石(じせき=磁器用の石)を発見、白磁を焼き、それが有田焼に発展していきました。

白磁はその美しさから挑戦では王朝のみで使用が許されたそうです。その高貴さは権力者たちを魅了し、ヨーロッパに伝わると、とりわけ東欧で独自の発展を遂げることになります。

日本では、千利休を中心とする茶道の世界で珍重され、やがて日本の美意識「詫び寂び」が見出されます。

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自然をモチーフとした図柄は、酒器一部に描かれ、見る角度からひとつの作品の表情を変える。

原料となる土と釉薬、そして窯の火の温度から起こる化学反応、さまざまな条件を経て誕生する作品は権力者の欲望、権力の誇示にも使われ、芸術のみならず倫理や哲学へと発展していきました。

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14世紀。龍鶏山刷毛目杯(けりょんさんはけめさかずき)。ハケを使用し迷いなく模様が生み出されている。

こんな、興味の種を発芽させてくれるようなお話の数々を、この「古美術 朝鮮酒器展」では聞くことができます。日本から一番近い外国である韓国との「日韓国交正常化50周年記念発行!!」として、2015年に上梓された『韓国陶磁器探訪』(新見工房)の著者、新見寿美江さんが会場にいらっしゃるからです。

陶磁器のみならず、多岐にわたる彼女のお話を聞いていると、時間が過ぎるのは文字通り「あっ」と言う間。

旅の本なども手掛けるエディターとしての顔ももつ新見さん。雑誌のページをめくるかのように軽やかに、世界中の国のエピソードを披露してくれるのです(会えるかどうか、事前にお尋ねしてくださいね)。

会場となるウィルトスワイン神宮前のギャラリーは、昭和の下町感が遺る町に、スパイスのように流行を感じさせる店が雑ざる神宮前2丁目にあります。

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小さな間口を抜けて入ると、店内を飾る花々に迎えられる。 お店の大半を占めるガラス張りのセラーの中でワインたちが休んでいる。

フランス産のワインを自社輸入・販売するウィルトスは、自社ショップにて販売するほか、レストランへの卸を行っている。代表取締役の中尾さんは、都内有名ワインショップ勤務経験を活かし、日本で入手困難なワインも扱う、頼もしいワインショップだ。

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自社輸入のフランス・アルザスワイン。ル・ドメーヌ・エティエンヌ・シモーニス。伝統を守るのみならず、消費者の気持ちになって、新たなアルザスワインのスタイルを目指しているドメーヌ。

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ずらっと並べられたワインは、独自のルートで入手するヴィンテージワイン。

ワインを選ぶ審美眼は先の古美術展とまったく無関係ではない。味わい、風合い、個性の好みはあれど、生産地、生産者の背景を知るほどに感動する。磁器もワインも出会えたことに縁を感じ、まるで恋に落ちたように思える。

ここワインショップ・ウィルトスでは、知的好奇心をくすぐり、出会いを積極的にオーガナイズしてくれるワークショップを随時開催している。もちろん試飲会も。

2020年東京オリンピック前後の変わりゆく街並みを、訪れるたびに得る体験とともに記憶に留めることも楽しめるかも。

この記事を書いた人

ウスイ 潤
ウスイ 潤
「百聞は一見に如かず」
好奇心を原動力に美・知・英を求めるブログ、
好きなもの、写真に撮って、アーカイブ。

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