• TOP
  • WEB WRITERS
  • アルザスは白アスパラガスとミュスカの季節

アルザスは白アスパラガスとミュスカの季節

アルザスワイナリー巡り 再始動編

アルザス在住ということもあり、アルザスでワイナリー巡りをしているのだが、2カ月間の外出禁止令もあり、ワイナリー巡りもできずにいた。そんな時期にワイナリー巡り記事も書ける状況ではなかったので、静かに家に籠っていたのだが、やっと外出禁止令も解け、100キロ以内の移動が可能になった。ということでまた少しずつ皆さんにアルザスワイナリー、アルザスワイン街道についてお送りしていきたいと思う。

フランス、外出禁止令とワイナリー状況

フランスは外出禁止となってから、国境もほぼ閉鎖状態(アルザスはドイツの国境があり、仕事などでの移動は許可証などを持参していれば可能だった)で隣国からの観光客もいなくなり、ワイン展示会なども中止、そして飲食店が閉店している中、ワイナリーの3月の販売は8割も減少したとニュースでも伝えられていた。

しかしながら、仕事、日常生活という点では、
「畑があるから外出できるし、太陽の光も浴びられる。そういう意味ではあまり生活が変わらなかった」と羨ましい限りのことを言っているワイナリーの方もいたのだが、販売面で言えば多くのワイナリーにとって深刻な状況になっていると思う。

特にアルザスはドイツから来る昔ながらの顧客がいるワイナリーも多く、カーヴでの販売のみで、海外や諸外国への輸出など一切ないワイナリーも少なくない。販売が8割減というのはかなりダメージを受けたワイナリーも多いだろう。

そんな中、外出禁止中はストラスブールや自身の近辺の村などにワインのデリバリーを始めるワイナリーさん、そして、ワインのプロモーションの一環か、インスタライブを配信するアルザスワイナリーさんも増えてきた。外出禁止でワイナリーに行けない中でのワイナリーさんのインスタライブは遠くに居ながらでもワインのことが分かる良い機会でもある。

アルザスワイン、インスタライブやデリバリー

ということで、私も少しでも地元に貢献できるよう、外出禁止令の中、買い物もままならず、ワイナリーにも行けず、という状況で
「自然派ワイン最低6本の注文とお友達の農家のオーガニック白アスパラガスを一緒に毎週土曜日にストラスブールまでデリバリー」
と言うアルザス自然派ワイン生産者、LISSNERさんの告知をFACEBOOKで発見した。

4月ごろからアルザスは白アスパラガスの季節となり、白アスパラガスと言えばMUSCAT、MUSCATと言えば白アスパラガスと言うほど、私にとってMUSCATは春のワインというイメージだ。今年はこんな状況だったので、外出禁止令中、実はマルシェも閉まっていたので、アルザスの白アスパラガスもなかなか買えない状況だった。

本来はワイナリーに行ってワインを買っているのだが、白アスパラガスと一緒にワインを持ってきてくれる、いや、ワインと一緒に白アスパラガスを持って来てくれる、なんていう告知を見てしまったので、早速ワイン6本と白アスパラガス2キロ(も)頼んでみた。

もちろん、LISSNERさんの自然派ワインは今私が最も注目している、まだ日本に入っていないワインでもある。だから、美味しいアルザスワインと、白アスパラガスのセットはこの時期なんとも魅力的だったのだ。

白アスパラガスとミュスカ 

ということで、こちらが届いた時の様子。

お互い接触できないので、配送をドアのところに置いてもらった。デリバーリーも、ちゃんとマスクと手袋をしたワイナリーの方が持って来てくれた。

こうして見ると、ワインではなく、白アスパラガスがメインに見えてしまうが、ワイン6本と白アスパラガス2キロ。

AUXERROIS 

写真のワインはAUXERROIS(オクセロワ)なのだが、実はこのAUXERROISは以前アルザスワイン試飲会を東京で開催した時に一番人気だったワインで、参加者の方々に
「今回一番美味しかったのはAUXERROISでした。」
と言って頂いた。

しかし実はこれはAUXERROISという品種が美味しかったのか、それともLISSNERが美味しかったのか…。私はこれは後者だと思っている。また、2018年はアルザス当たり年なのでそれも嬉しいワインだ。

もちろんアスパラガスに合わせる用にグランクリュ のミュスカもしっかり注文済み。(が、これはちょっと開けてびっくり、の後日談が…)

アルザスのMUSCAT

アルザスのMUSCAT(ミュスカ)は他の地域のMUSCATと異なり、正にぶどうそのものを食べているかのごとく、甘いフルーティな香りがする。けれど口に入れるとすっきり辛口という、なんともすばらしいハーモニーを醸し出す。私は辛口が好きか甘口が好きか分からない方へのお土産として持っていくアルザスワインはこのミュスカを持っていくことが多い。

他地方のMUSUCATが甘口なため、MUSCATのイメージが甘口なので、実はアルザスワインの中で「売りにくい」ワイン品種らしい。試飲してからでないと味が分からない、そんなワインなのだ。そんなアルザスの辛口MUSCATを春にはぜひ試して頂ければと思う。

さて、フランスなら白アスパラガスは茹でてて、オランデーズソースやバターにつけて、そしてハムと一緒に…なんて言うのだが、いやいや、日本人ならやっぱりここはさっと焼いてバター醤油と和風にもして食べてみた(なにせ2キロもあったので…)

LISSNERさんのワインはなぜか「コク=うま味」を感じる、ちょっと磯の香りがしそうな、そんなワインなのだ。さらに自然派ワインは栓を開けてから空気に触れて味も変化していくのだが、ここのワインはこの変化が劣化ではなく進化に近い。日を追うごとに違う味が楽しめる、そんなワインでもある。かなりお勧めのアルザス自然派ワインだ。

なので、せっかくなら、その「コク」を生かして、白アスパラガスも和風に調理して一緒にワインを飲みたいと思ったのだ。醤油バター焼きアスパラガスはちょっと【和】を感じてほっこりした。

白アスパラガスとアルザスのミュスカ

 

LISNNERのMUSCATグランクリュ

 

白アスパラガスに合わせるのはもちろんLISNNERさんのMUSCATグランクリュ (Grand cru) Altenberg de Wolxheim 2017年。香りがよく、味もミュスカの味を感じるものの、アルザスのミュスカらしく、かなりスッキリ辛口で食事に合わせやすい。

2キロの白アスパラガスとワインの後は・・・

実はワインをそんなに毎日多く飲まないため、ワインの消費は少なかったのだが、1週間で白アスパラガスのほうは残りわずかになってしまった。

その後の週もLISSNERさんが「最低注文6本ワインと白アスパラガスデリバリーします」とFACEBOOKで告知していたのだが、ワインはそこまで飲めておらず、でも白アスパラガスは欲しいなあと思っていたのでLISSNERさんに
「まだ前のワインが終わっていなくて…」とつぶやくと
「近所まで行くから【特別】アスパラガスだけでも持っていくよ」
との返事が。

外出禁止のこんなご時世、こう言う優しさにほっこりできるのがアルザスの良さだ。本当、どこに行っても、いつでもアルザスのワイナリーさん達には良くして頂いており、感謝の気持ちでいっぱいだ。

結局、本来配達はワインを最低6本〜の注文なのだが、せっかくウチまで来てくれるならと、ワインも数本注文する事にした。実はここのワイナリーにはMUSCATは2種あって前回1本ずつ頼んでいたのだが、なぜか同じのが2本だったので、入っていなかった方のMUSCAT一本と、もう一本気になっていたワインを注文。

生活にもいろいろと制限があったこの時期のアルザスのワインとアスパラガスのデリバリーは最強だった。本当に外出禁止令中の大変なさなかの癒しだった。

せっかくなので、他のアルザスミュスカも紹介

この機会に他のお勧めMUSCATもご紹介したい。大半は日本に入っていないアルザスワイナリーなので、日本では飲むことができないが、日本では知られていない美味しいワイナリーを知ってもらえたらと思う。

まずはDomaine Fischbach。こちらは今年から日本に入ったばかりの自然派ワイン生産のワイナリー。1584年から続く歴史あるワイナリーだが、実は今の代のジャンさんから、自然派ワイン生産にした新しい自然派ワイン生産者。自然派ワインだと、品種の味が感じにくい時もあるが、ここのMUSCATはぶどうの香りが強く、とてもフルーテイで、口あたりも良いオススメ自然派ミュスカだ。

Domaine Fischbach

 

Domaine Fischbach

 

こちらは、結構典型的なMUSCATの味のアルザスワインなので、白アスパラガスもフランス風に、茹でてマヨネーズと一緒に食べ、煮汁でアスパラガスリゾットを作って食べた(出来上がりはお粥に近かったのだが)。
本当は白アスパラガスとハムと合わせて食べるのだが、思うように買い物に行けなかったので、付け合わせのハムはなかったのだが、白アスパラガスだけ美味しく頂いた。

自然派ミュスカと白アスパラガス 

そしてこちら、日本には入っていないが、ビオワイン生産者のDomaine Lauren Vogt さん。ラベルが女性的で可愛い。

マーケテイング系は3人のお子さんのいるお母さんが頑張っており、それがこの女性的なラベルになっているんだと思う。結構最近ラベルを変更して、各品種パステルカラーで女性に人気の出そうなラベルだ。

ここのMUSCATも、お味も香りもとってもフルーテイで辛口、けれど、他のワイナリーより多少甘口仕上げかもしれない。

私の中ではお値段とお味がちょうど良いアルザスワイナリーで、アルザスワインの一つの基準としているワイナリーだ。毎年1回6月にフランス全土で個人ワイナリーのピクニックイベントというのがあり、その時に行くのだが、今年は残念なことに延期となり、こちらのワイナリーさんでは予定が合わずなのかピクニック中止となってしまった。

Domaine Lauren Vogt

 

Domaine Lauren Vogt

 

こちらは、日本には入っていないビオワイン生産者Domaine Boehler さんのMUSCAT。

ここのMUSCATはかなりフルーテイーな香りが強く、口当たりもほんのりフルーティだ。味はすっきり辛口ではあるが、口の中にもほんのり甘味を感じられて、個人的にはこういう方が好みだ。

というのはやはり香りが甘口フルーテイなのに、かなり辛口だと、どうも脳がそのアンバランスに付いていけない時もある。それがMUSCATの特徴で、美味しいところでもあるのだが、舌の上でもほんのりフルーテイさが感じられる方がちょっと安心する。

Domaine Boehler 

そして、こちらは同じワイナリーさんのMUSUCATベースのアッサンブラージュ。ここのワイナリーはMUSCATがかなりお勧めで、美味しいワイナリーだと思っている。

MUSUCATベースのアッサンブラージュ 

最後に珍しい、自然派ワインで、MUSCATのスパークリング。MUSCATのスパークリングはこのワイナリーを含めてアルザスではまだ2軒のワイナリーでしか見たことがなく、それも自然派となると、かなり珍しいアルザスワインだ。

MUSCATのスパークリング

 

MUSCATのスパークリング

 

こちらも、醤油バターで焼いた白アスパラガスと合わせて…。アルザスの泡はクレマンダルザスが有名だが、こちらはまたそれとは違って、香りがフルーテイなMUSCATの特徴を残しつつ、辛口仕上げで、泡好きにはたまらない一本だ。

白アスパラガスとMUSCATスパークリング 

外出禁止令中の唯一の楽しみでもあった、アルザスワイン。日本でもオンライン飲み会などが流行っているみたいだが、フランスでもオンライン飲み会をやっている方がいるとニュースで言っていた。外出禁止令が終了したとは言え、まだ飲食店はテイクアウトのみ。今後もなんだかんだ言って、制限された生活は続くかと思う。

日本ではアルザスワインと言うと、やはり人気なのはRIESLING,そして、Gewurztraminerなどかもしれないが、白アスパラガスの時期、もし機会があればぜひアルザスMUSCATもお試し頂ければと思う。

この記事を書いた人

アバター画像
Coquelicot
元フランスのワイン展示会運営会社勤務。フランス、アルザス地方在住10年以上、アルザスワインを極めるべく、アルザスで訪れたアルザスワイナリー100軒以上、テイスティングは200軒以上。
インスタグラム coquelicots00

Related Posts

PAGE TOP