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鮎と谷中生姜のオイルベースのスパゲッティに合うワインとは?

料理から探るマリアージュ・メソッド vol.6 銀座【ソットラルコ】

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今回は銀座にあるイタリアン・レストラン「ソットラルコ」の伊藤弘通シェフに、この季節らしい鮎と谷中生姜のオイルベースのスパゲッティをつくっていただきました。

味わいのポイントは、1)オイルベースであること、2)鮎が軽く燻製されていること、3)谷中生姜や添えられている八味唐辛子による適度な辛さにあります。

まずは、「オイルベースならではの重さ」に注目し、ワインにはほどよい厚みや甘み、うま味等が必要です。あとは鮎の風味や辛さとの付き合い方をどうするかが、マリアージュのポイントとなります。

1本目は北イタリア・フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州から、「ヴィエ・ディ・ロマンス デッシミス・ピノ・グリージョ2013」。柑橘類の皮やフローラルなアロマに、厚みとミネラルのニュアンスがある塩味が明確にあり、酸味はやや控えめ。引き締まったバランスで、後半にはほどよい苦味をもちます。

この場合、塩味同士の味わいがよく同調します。そして、料理の他の風味や味わいをそのまま尊重させます。イタリア料理とのマリアージュではよく使うスタイルです。

2本目は滋賀県冨田酒造より、「七本鑓 渡船純米酒」。日本酒は酵母や発酵方法、精米歩合、酒米の種類等でさまざまな味わいをもちます。さらに飲む温度の幅の広さがマリアージュの概念をさらに広げてくれる点はワインにない魅力。この酒は77%の低精白で仕上げ、ナッツのような風味とストラクチャーのある味わいが特徴です。滋賀県産の渡船という酒米は、豊かさや厚みも与えることができるので、料理の油分に対応できる厚み、鮎の食感にも負けないストラクチャー、その双方とバランスします。

また、ぬる燗だと、アロマはより強くなり、鮎の燻製の風味とナッツのニュアンスがより同調し、温度帯も含め味わい全体の一貫性が生まれます。これは今回のペアリングを考えるにあたり、すぐイメージした日本酒ならではのマリアージュ。辛味に対しても和らげることができるので、料理の風味をより感じることができます。

最後は、アルザスからナチュラル・ワインの「ローラン・バーンワルト シルヴァネートル 2013」。シルヴァーナーから造られた白ワインです。自然派ならではのうま味あふれる味わいが、丸みと厚みを与えており、油分のある味わいにも充分に対応します。

また、自然派の個性の中にある参加的な風味は、明確に焼いた感じやナッツのニュアンス、スパイスの風味などがあると相性が特にマッチ。今回もその特徴がマリアージュに生かされ、鮎の燻製や焼いたニュアンスとこのワインの酸化的な風味との相性が絶妙です。

今回は、典型的なもの、日本酒、自然派、という3つの視点からのマリアージュを提案したわけですが、日本酒や焼酎、自然派などはそれぞれの味わいの世界観が典型的なワインのそれとは違います。違うからこそ、特に料理のジャンルにとらわれることなく、さまざまなマリアージュが可能なのです。

今回の3銘柄

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  • ヴィエ・ディ・ロマンス デッシミス・ピノ・グリージョ 2013

    生産国: イタリア
    地域 : フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア

    この地を代表する有名生産者。白桃のような優しさと柑橘類の清涼感、口当たりと品種とテロワールの双方由来による苦味が余韻に心地よく残る清涼感のある辛口。

    マリアージュ結果
  • 冨田酒造 七本鑓 渡船 純米酒

    生産国 : 日本
    地域 : 滋賀

    77%の低精白でつくられている酒。地元産の酒米にこだわり、本当の意味で食事に合う酒造りがなされている。ナッツのような風味と、味わいにある骨格は、さまざまな料理との相性の可能性をもっている。

    マリアージュ結果
  • ローラン・バーンワルト シルヴァネートル 2013

    生産国 : フランス
    /地域 : アルザス

    ローラン・バーンワルトは、80年代からビオディナミに取り組む、フランス・アルザスの注目生産者。自然派ならではのうま味の広がりと、複雑性を与える酸化のニュアンスとのバランスが素晴らしい。

    マリアージュ結果

大越メソッド 基本アプローチ5カ条

① 五味を合わせる
五味とは、酸味、甘味、塩味、苦味、うま味のこと。料理とワインの2つの要素の中でバランスよく五味が整う時に、双方の風味が味わい深く感じられる。
② 味わいの同調
ワインと料理の五味の中でも特に酸味、甘味、うま味を同調させる。互いのボリューム感や強さに合わせて同じ風味同士を同調させ、一体感を出して味を引き立てる。
③ 味わいの中和
五味や刺激(渋味、辛味)の中でやや強い個性に対し、対の関係にある味わいを合わせて個性を緩和させ、中和することで、風味を心地よく残す。
④ フレーバーを合わせる
とても重要で、頻繁に使用される考え方。ワインと料理の双方が持つフレーバーや香りを合わせて一体感を生み出すことで、いずれも長い余韻、風味を楽しめる。
⑤ テクスチャーを合わせる
やわらかいワインにやわらかい料理、暖かい料理に冷やしすぎていないワインなど、温度や食感などでテクスチャーを整えると、マリアージュ効果がさらに上がる。

この記事を書いた人

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大越 基裕
1976年4月24日 北海道札幌市生まれ
バーテンダーからサービス業界に入る。ワインに魅せられて渡仏を決意、帰国後2000年にソムリエになる。ワインバーで勤めた後2001年に銀座レカンにソムリエとして入社。様々なコンクールや実践で経験を積んだのち、更にワインの奥深さを知るために、再び2006年より2年半渡仏。帰国後2009年より銀座レカンシェフ・ソムリエとなる。

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