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    レッドブロッチ・ウィルスを調査せよ

ミッション:
レッドブロッチ・ウィルスを調査せよ

知識も経験もゼロのウイルス調査員誕生

前回ご紹介したナパのぶどうの木を脅かしている『レッドブロッチ』というウイルス。その調査員として雇われたわたし。知識ゼロの私がなぜ任命されたのか、今回はそのオドロキのいきさつをお話しします。
働いているワイナリーの畑からの眺め

働いているワイナリーの畑からの眺め

「えっホントにいいの!?」 面接なしでサプライズ採用!

わたしがワイナリーでレッドブロッチの調査を始めたのは2016年。ぶどう栽培について大まかなことは学校で習いましたが、ウイルスや病気についての知識はほぼゼロという状態でした。それどころか、実は、興味もゼロでした…(苦笑)。

そんなわたしを雇ったワイナリーのオーナーのJohnは、フランスからぶどうの苗木を密輸したという過去と、強烈なキャラクターを持つ、ナパのちょっとした有名人。ナパに来たばかりの頃にテイスティングで訪れたのですが、ワインがおいしかったのはもちろん、Johnのトークがとても楽しく、「いつかここで働けたらいいなぁ」、なんてぼんやり思っていた、わたしにとってはちょっと特別なワイナリーです。

知人にたまたまワイナリーに訪問をしたことがあると話をしたところ、オーナーと関わりがあることが判明し、「働きたいと思っているなら紹介してあげるよ」とわたしの履歴書を送ってくれたのです。

すると、数時間のうちに、「She is hired!(彼女採用ね!) 」とJohnからのメール。わたしは何が起こったのかわからず、フリーズ状態。会ったこともない外国人、しかもワイン業界での就労経験も無い人を突然採用しちゃうなんて…すぐには信じられないですよね。(後から理由を聞いたら、日本からわざわざやってきてるというところがおもしろそうと思ったらしいです)

まさか憧れのワイナリーで働けるなんて! と喜んだのもつかの間、さっそくJohnから指令が。

「会いに来る前に調査プランを練って持ってくること。何を求めてるかは君を紹介してくれたAlanが知っているから聞いておいて」

この時、まだ自分の仕事内容について全く知らされていなかったので、
「プランって???」
と再度、完全フリーズ。

虫を調査中のわたし

虫を調査中のわたし。真剣です

 

Alanに連絡して「わたしの仕事って何なの?」と聞いてやっと初めて、前回の記事でご紹介した、『レッドブロッチ』というウイルスの調査だということが判明したのです。

理系科目が大の苦手だったわたしは、ウイルスの調査と聞いただけで頭がクラクラ。何度、辞退しようと思ったことか…。

 
変色しているぶどうの葉はすかさずチェック

変色しているぶどうの葉はすかさずチェック

 

一体どこから手をつけたらいいのか…

まずはインターネットで報告事例を検索。調べた結果、「レッドブロッチのウイルスに罹ると、健康な木ほどぶどうの糖度が上がらない」ということと、「夏頃から葉に赤い斑点が目立つようになる」ということぐらいしか分かっていない、という悲しい現実だけが分かりました…。

これで一体わたしに何ができるというのでしょう…。

結局、大した計画もたてられていないまま、ジョンに会う日がやってきました。お上品ではない言葉を使うことで知られているジョン。きちんとしたプランができていないことで怒られるだろうか…と、ドキドキしながら会いに向かったことを覚えています。

最初の一言は、「これは君のプロジェクトだから、好きなようにやってくれ」

え…? もうわけがわかりません。
もしかすると、わたしの情報が間違って伝わっていて、ウイルス調査や研究について知識や経験があると思われているのかもしれないと不安になり、
「あの…ウイルスのことはもちろん、ぶどう栽培についても基本を学校で習っただけなのですが、本当にわたしがこの仕事をしてもいいのでしょうか?」
と聞いてみました、すると、

ワイナリーのはじまりの木

これが密輸された、ワイナリーのはじまりの木です

 

わたしが任されているブロック9

わたしが任されているブロック9。ここからの景色は大のお気に入り

 

 

「素人だからいいんだ! 学者の言うことは気にしなくていい。自分の勘を信じて、このレッドブロッチという憎きウイルスの正体をつきとめるんだ!」

と笑顔になるJohn。その笑顔に断るタイミングを完全に失ってしまったわたしは、もう半ばやけくそで調査員の仕事を拝命。担当がわたしひとりきりだと言うことも、このときにわかりました。こうしてわたしとレッドブロッチとの戦いの幕が上がったのです。

わたしが任されたのは、Johnがフランスから密輸して来た苗が植わっているブロック9というエリアでした。

ワイナリーが持つ123エーカーの敷地うち、わずか1エーカーほどの小さなブロックですが、Johnにとっては子どものように思い入れのある大切なぶどうたちなのだそう。だからこそ、ウイルスに罹っているからといって簡単にはあきらめがつかないのです。

ということで、丸投げというかぶん投げで仕事をすべて任されたわたしは、道具や方法から考えて調査を進めることに。

次回はこの2年間で、わたしがどんな調査をしてきたのかをご紹介します!

調査中のわたし

調査中のわたし、その2。笑ってるけど真剣です!

この記事を書いた人

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Saori
2014年よりアメリカはカリフォルニア州ナパにある、『Napa Valley Collage』に留学。ワイン醸造とブドウ栽培を勉強。ワイナリーのテイスティングルームで働くかたわら、ぶどうの樹の病気調査、畑作業なども経験。2018年10月に帰国。現在、WSET LEVEL4の勉強中です。

ナパやソノマでおすすめのワイナリーや、観光情報をこれからも発信していきます。

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