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白ワインの名産地 フラスカーティのワイナリーを訪ねて

魅惑のDOCGフラスカーティ・スペリオーレ その名はABELOS

これまで5回に渡りMARCOCARPINETIに関する記事をお届けしましたが、これまで出会った他の素晴らしいワインの造り手についても紹介したいと思います。

法王の別荘地フラスカーティで200年の歴史を誇るワイナリー

DE SANCTIS ワイナリー

DE SANCTIS ワイナリー

 

ラツィオ州ローマから約15Km南のフラスカーティにあり、1816年にまでその歴史を遡る老舗ワイナリーDE SANCTIS(http://frascati-wine.com/)

ブドウ畑を護る父Luigiと醸造責任者である息子Francescoが二人三脚で営み、母と兄弟が展示会やPRをサポートする家族経営のこのワイナリーは、国内外でも高い評価を得ています。

以前紹介したスローフード協会発行のワインガイド「SLOWWINE」では、自然環境に配慮している優れたビオロジコのワイナリーとして「CHIOCCIOLA賞」を受賞しています。

(「SLOWWINE」の記事を読む)

知り合いのローマのエノテカ店主も「人気があって入ってきてもすぐ売れちゃうんだよ」と太鼓判を押すほど玄人筋にも受けがいいのです。現在ドイツ、ベルギーなどには輸出されていますが、まだ日本に輸出されていないのが不思議なほどです。

日本未発売ワインをいよいよ試飲

6月のある晴れた昼下がりにワイナリーを訪問しました。この地を代表する白ワイン品種MALVASIA、TREBBIANO等が小さな実をつけ始めている頃でした。畑には緑色のフラスコ型のガラスのボトルが点在していて初夏の太陽を反射していました。

このボトルはFrancescoの祖父の時代には実際に量り売りワインの容器として使用されていたそう。決して饒舌ではないけど、ひとつひとつの器具を丁寧に説明してくれるFrancesco。こじんまりとした醸造所と夏でも涼しいという貯蔵庫の奥には戦時下の防空壕もあり、その歴史を物語っています。

ブドウ畑を一望できるモダンなテイスティングルームでABELOS(FRASCATI DOCG SUPERIORE BIO、Malvasia Puntinata 80% – Bombino 20%)を試飲しました。柑橘系の香りに続いてかつて火山の噴火口だったこの土地を思わせるミネラル、そして白い花の芳しさ、最後に舌の奥で感じるかすかなアーモンドのような苦味。

一見相いれないような要素が絶妙な調和を保ち、「飲み易いキリっとした白」という一般的なフラスカーティのワインのイメージを小気味よく裏切ってくれます。

 

麦わら色の輝き ABELOS

麦わら色の輝き ABELOS

ABELOSの他に遅摘みブドウで造る甘口ワインDICIASETTE UNDICI(DOCG CANNELLINO)やCABERNET FRANCの赤ワインLUNO含め全5種類のそのどれもが個性的な輝きを放っています。

フラスカーティの次世代を担う若き造り手Francesco

普段は冗談ばかりのFrancesco

普段は冗談ばかりのFrancesco

 

私が感銘を受けて、いろんな言葉でワインを称えようとするも、Francescoはワインとあまり関係ない話ばかりしてきます。

Francesco「自分は海辺ではいつも裸で日光浴するんだ」
「そんなこと日本でしたら警察に捕まるわよ」
Francesco「イタリアだってそうさ、でもワインも人間も自然が一番さ! 自分は家でも裸なんだ」
「、、、」

通常、ワインの造り手は、己のワイン造りへの情熱、苦労、工夫を滔々と語るものなのですが、彼は終始こんな感じで冗談ばかり。そして席を外すとしばらくしてワインのつまみとして、庭から摘んできた山盛りの杏のかごを手に小走りに戻ってきました。

心の中で「ワインのつまみに杏って、、しかもこんなに山盛りだし」と思わず吹き出しそうになったその時に、彼のポロシャツから汗と土の匂いがして私はハッとしました。この日私が訪れたのは午後でしたから、きっとFrancescoは午前中ずっと畑やCANTINAで作業をしていて、ひとしきり汗をかいた後だったのでしょう。

レストランでサーブされて完成型としてのワインを飲むときに私達は忘れがちだけど、ワインは紛れもなく尊い労働の汗と努力の結晶なのだと私は気づきました。

あとがきにかえて

イタリア滞在の間に多くの造り手と出会い、既に10か所以上のワイナリーを訪問しました。日本にまだその名を知られていなくとも、ブドウのありのままの姿をワインに昇華させることのできる素晴らしいワインの造り手たちと出会いました。書くのが追いつかないほどの出会いに恵まれていますが、追って彼らの魅力を伝えていきたいと思います。

彼らの多くは小規模ゆえマーケティング活動などを十分に行う余裕がなく、日本というマーケットには強い意欲はあるものの、なすすべを知りません。このサイトがきっかけで彼らのワインがいつか日本で飲まれる日がくれば、こんなに嬉しいことはありません。

この記事を書いた人

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MINA
外資系金融に長年勤務するも、イタリアワインが好き過ぎて2017年よりイタリアに渡航し、ローマ近郊のワイナリーMARCOCARPINETI にてブランドアンバサダーとしてPRや翻訳を担当しワインの研鑽を積む。滞在中にイタリア中を旅して出会ったイタリアのワイン、人、文化の魅力を伝えます。

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