人とご縁とワインと

ワイン徒然草 その5

私は常々「ワインとは人と人とのご縁を紡ぐ飲み物である」と思っている。老若男女、どのような職業や立場の人間でも「ワインが好きだ~!」という共通の理由があれば、ワインを通じて“あっという間に”仲良くなれるのだ。
ワインの歴史は約8,000年前のジョージアまで遡ることができるが、その気の遠くなるような長い歴史に比べたら、人生なんてほんの一瞬に過ぎない。
しかし、そうした一瞬の、短い時間の中でさえ出会える人たちがいる。これを「ご縁」と呼ぶ。そのご縁を紡ぎだすもの、それが「ワイン」だ。ワインには「美味しいね!」の一言では語りつくせない、何か不思議な魔力があると思うのだ。
読者テイスター同窓会 

祝! 第1回「読者テイスター同窓会」?

便宜上、勝手にタイトルをつけてしまったが・・・(笑)
昨年、とあるセミナーで知り合った、WINE-WHAT!?の読者テイスター、中野智広さんからお声がけいただいて、先日、“WINE-WHAT!?史上初?”の読者テイスターによるワイン会に参加してきた。

今回、中野さんから出されたお題は「夏に飲みたい至極の1本」である。これは簡単なようでいて、実に悩ましいテーマだ。さすがベテラン読者テイスターである。折しも、今年は記録破りの暑さが続いており、もはや頭の中はキンキンに冷やしたシャンパーニュ、スパークリングなのだが・・・。いやいや待てよ。中野さん以外はどんな人が参加するのかわからないが、おそらく強者揃いのワイン会だ。みんなとんでもなくすごい人たちかも知れない。そんなところへ、“普通な”ワインを持って行くのはまずい。なめられてしまう(笑) あとは白か、う~ん、それともロゼか?

散々悩んだ挙句、前から一度飲んでみたいと思っていたサルデーニャの「ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ2006」に落ち着いた。果たして、みんなは何を持ってくるのか・・・。

ワイン会は楽し!

会場は、東京メトロ赤坂見附駅からほど近い「ワイン居酒屋 赤坂あじる亭」だ。

今回は、私を含めて男性3人、女性3人の計6人だった。各自腕に、もとい「鼻と舌」に覚えのある強者ばかりだ(私以外・・・)。そして私の予想どおり!皆さん、それぞれ個性的なワインをお持ちになったのである。う~ん、あらためて自分の危機管理能力の高さにうっとりする(笑)

ワインはトータル7本。サービスされた順にご紹介する。


 

シャンパーニュ フランソワーズ・べデル ラム・ド・ラ・テール 2004

 

①シャンパーニュ フランソワーズ・べデル ラム・ド・ラ・テール 2004
口いっぱいにリンゴが香る。酸味は思ったほど高くない。ふくよかなボディ、キメの細かい泡が印象的。ムニエ100%のミレジメは初めて。

 


 

②シェーファー・フローリッヒ グラウブルグンダー トロッケン 2012
ドイツはナーエ地方のピノ・グリ(グラウブルグンダー)。トロッケン(辛口)だが、ほんのり甘みを感じるくらいのアルコールの強さがある。ヴィオニエのようなオイリーさも。

 

シェーファー・フローリッヒ グラウブルグンダー トロッケン 2012

 


 

サン・クゼール 長野 龍眼 2017

 

③サン・クゼール 長野 龍眼 2017
最近注目されているブドウ品種、龍眼(りゅうがん)。一度飲んでみたかった。色は透明に近い。日本酒を思わせる吟醸香、ライチの香り。ほんのり甘口。口当たりがよくて、スルスルいける。

 


 

④コンティニ ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ 2006
自分で持ってきたくせに、飲むのは初めて(笑)色は琥珀色に近い、濃い黄金色。シェリーと同様にフロール(産膜酵母)を使って熟成されているため、パンのような酵母の香りや、ナッツ、ハチミツのような酸化熟成香が特徴。アルコールはかなり強く、15.5%。

 

コンティニ ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ 2006

 


 

岩の原ワイン 深雪華(みゆきばな) ロゼ

 

⑤岩の原ワイン 深雪華(みゆきばな) ロゼ
日本ワインの魁、岩の原ワインのマスカット・べーリーAを使ったロゼ。イチゴや綿菓子のような甘~い、芳しい香り。先日のソムリエ協会の例会セミナー以降、岩の原のマスカット・べーリーAはすっかり私のお気に入りだ。

 


 

⑥ルー・デュモン レア・セレクション ブルゴーニュ・ルージュ 1997
言わずと知れた「ルー・デュモン」のレア・セレクション。これも一度飲んでみたかった。これは造り手の仲田氏がボトルで買い付けをして、販売しているワイン。淡いガーネット色。酸味は高い。97年のヴィンテージだが、実に若々しいラズベリーの香り。

 

ルー・デュモン レア・セレクション ブルゴーニュ・ルージュ 1997

 

コス・デストゥルネル 1994

 

⑦コス・デストゥルネル 1994
ボルドー左岸、メドック地区の格付け2級シャトー。黒スグリ、スギの香り。酸味は高く、タンニンは非常に豊か。24年前に収穫したブドウを使って造られたワインにも関わらず、若さに溢れ、実にパワフル。男性的なイメージ。「枯れてない」ワイン。あと10年は熟成できるのではないかと思ってしまった。あ、あくまで個人の感想です(笑)

 

広がるご縁、つながるご縁

以上、事前に打ち合わせした訳でもないのに、このラインナップ!

泡1、白3、ロゼ1、赤2だなんて、バランスも絶妙だ。しかも、誰一人重複していないのも面白い。各自豊富な知識と研ぎ澄まされた感覚をフル稼働させて、ワインを選んできたのであろうことが窺えた。

 

ワインのラインナップ

みんなほぼ初対面だったにも関わらず、侃侃諤諤、ワインと料理のペアリングから始まって趣味のヨーロッパ絵画の話まで、話題の尽きない楽しいワイン会だった。ワインは知識がない状態で飲んでももちろん美味しいが、知識があった上で飲む方が数倍、いや数百倍! 美味しくなるのだ。そしてワインが好きになると、なぜかますますワインのことが知りたくなって、勉強したくなるのが不思議だ(笑) 今回の参加者の中には、ドイツワイン協会が主催するブラインドテイスティング大会の決勝戦を控えている人やWSET(約50年前にイギリスのワイン商組合が設立した教育機関)のDiploma資格へ挑戦している人もいて、その志の高さに敬服する。

中野さんは常に「このワインにはどんな食べ物が合うか、逆にこの食べ物にはどんなワインを合わせるといいか」を考えているのだそうだ。普段からそうする癖をつけることで、いつでもスムーズにテイスティングコメントを言えるように練習しているというのだから、たいしたものだ。若いのに非常に意識が高い。おじさんは勉強になるのである。ワイン会は、人と人との交流の場であるとともに、大切な学びの場でもある。私ももっと早くワインに出会っていたら、もう少し人生が変わっていたかもしれないな・・・(笑)

さて、早くも次回は12月1日に決まった。ぜひ、多くの読者テイスターに参加していただけたら嬉しい限りだ。あ、そうそう! 次回はぜひ編集長もお願いします!

 

(※画像は著者の撮影及び参加者から提供されたもの)

 

 

この記事を書いた人

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石戸 智
ワインの魅力に憑りつかれて、人生を大きく方向転換。25年間務めた仕事を退職し、一人でも多くの人にワインの素晴らしさを伝えるため日夜活動している「さすらいのワインエキスパート」。
 ○J.S.A.ワインエキスパート(2016年取得)
 ○WSET Level3 Award in Wine(2018年取得)

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