ルーシヨン・ワインの基礎

南北の二つの地区別に見るルーシヨン・ワインの魅力再発見

テート河北部

テート河の北は、古くより険しい山中に葡萄畑が点在していた。原生岩の土壌が多く、ペルピニャンより西部に向かうとすぐに、シストと花崗岩からできた急峻な山地が広がる。ここは、かつてオキシタンがひっそりと隠れ住んでいた、「フランス側」の地である。

特にアグリー河に沿って続く山岳地帯はフヌイヤードと呼ばれ、それはそのままラングドックのコルビエール山脈と繋がっている。この位置関係は民族的にも同じであり、この場所はオキシタニアの地、すなわちオック語を解する人々の地であり、エスタジェル(Estagel)の村を境に、カタルーニャ人と異なった民族が住んでいた。

ルーシヨンの赤ワインの上位アペラシオンである、コート・ド・ルーシヨン・ヴィラージュ(Côtes de Roussillon villages)は、ほとんどこの北部に位置している。すなわち、カラマニー(Caramany)、レスケルド(Lesquerde)、ラトゥール・ド・フランス(Latour de France)、トータヴェル(Tautavel)と東部の村々のワインがそれで、さらに同格のワインとしてモリー・セック(Maury Sec)がある。

アグリー河上流にして標高250mの山岳地帯の中にあるカラマニーの土壌は片麻岩と花崗岩土壌で、シラーが比較的よく育つ。「シラーは致死性が高く育てるのが難しい」ために、避けられる傾向にあるようだが、これほど標高の高い原生岩土壌のもとであれば最も素晴らしい品種となりうることはローヌでもラングドックでも証明済みである。

レスケルドの土壌はシストと花崗岩主体で、シャプティエ(Chapoutier)社の所有しているシラー100%のワインは、最上のコート・ロティを思わせるタイトでリッチなスケール感のあるワインである。モリーは、甘口ワインで名高いが、2001年より辛口のモリー・セックもAOC入りした。グルナッシュ60%以上80%以内のブレンド比率という、不思議な制限はあるが、チェリー香の香り立つ素晴らしい赤ワインになる。

ここは標高150-250mで、黒シストと呼ばれる泥灰岩シスト(Marno-Schiste)、石灰岩シスト(Carco-Schiste)という土壌。特に第四紀以降の石灰を内在したシスト土壌は、かなり特殊である。ラトゥール・ド・フランスは、片麻岩、シストと粘土質石灰岩の入り交じったテロワールで、スパイシー。

標高が下がると、グルナッシュ率がぐっとあがり、少し重心が下がり、どっしりとした味に近づく。トータヴェルはシストと粘土質石灰土壌が入り交じったテロワールで、このゾーンはカタルーニャのエリアである。ここまでくると、葡萄品種はグルナッシュが多くなり、味わいは牧歌的で素朴なスタイルになる。

東部はRivesaltesから海まで比較的平地が広がり、土壌は赤粘土に、石ころ混じりの土壌となっている。ここは、ミュスカ品種の宝庫であり、ラングドックの甘口ミュスカと少し似たスタイルの、ミュスカ・ド・リヴザルト( Muscat de Rivesaltes)の一大生産地である。ルーシヨン地方の甘口ワインの 6割を生産する。ルーシヨンのワインで一番有名なのは間違いなくこのミュスカ・ド・リヴザルトで、フランス中のどこのスーパーにも行っても見かける。

コルビエール山脈

オード(Aude)県のAOCコルビエールとの境界となる、コルビエール山脈の山頂は最大 1231m。728mの頂きにそびえるケリビュス城( Château de Quéribus)が写真の奥に見える。

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染谷 文平
こんにちは、フランスに滞在中のソムリエです。現在、パリの一つ星レストラン、Neige d’été(ネージュ・デテ)にてシェフ・ソムリエの職についております。レストラン業を続ける傍ら、ワイン造りをより深く知るために、Bourgogneと Alsaceにてワイナリー勤務も経験しました。ワインが生まれる風土、環境、歴史に強く関心があり、ブログ(http://fwrw.blog137.fc2.com
も綴っております。Wine Whatでは、生産者の生の声や、ホットな情報をいろいろと書いて行きたいと思います。

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