ルーシヨン・ワインの基礎

南北の二つの地区別に見るルーシヨン・ワインの魅力再発見

まとめ

いずれのワインにも、それぞれの地方性はあるにせよ、異なったサブリージョンの違いは存在する。北と南の差は、その成熟度からも明らかであった。

南のアルジェレス・シュール・メール(Argelès-sur-mer)の葡萄が結合終了し、ぐんぐんと枝を延ばしていたのに対し、北のトータヴェルの葡萄は開花が始まったばかりで、枝もまだ低い。ルーシヨン南部の葡萄はフランスで最も早熟であり、ミュスカ・ド・リヴザルト(Muscat de Rivesaltes)用品種のミュスカ・プティ・グラン(Muscat Petit Grains)の収穫が8月初旬から中旬に始まる。フランスで毎年恒例の収穫開始のアナウンスはこのルーシヨンからもたらされる。大規模な協同組合があるかと思うと、若い小さな生産者が沢山いたこともこの地方のコントラストを物語っている。

AOP(AOC) 成立40年記念祭典に参加した。記念祭典は、ペルピニャンの郊外のレストラン、ル・クロ・デ・リス(Le Clos des Lys) で行われた。ここは移民の街だが、この祭典に参加していた約200人もの関係者にほぼフランス人しかいなかったのは、何か皮肉な感じがした。

気持ちよく晴れた天気で、よく冷えたロゼワインが身体に沁みる。北部と南部のヴィニョロンたちと共にAOCの成立40周年を祝う。40年前の1977年といえば、アップル社のApple IIの発売、エルヴィス・プレスリーの死、ポンピドゥー・センターの成立などがあった年。そういえば、今年の大統領エマニュエル・マクロンが生まれたのもこの年である。

1977年にアペラシオンが成立したことは、ルーシヨン地方内部における、ヒエラルキーが模索される機会であった。そうして、そこから品質向上への関心が高まった。そこから若い生産者が出て来て、地区ごとのワイン造りが検討され、世界的マーケットが拡大した。

葡萄栽培面積は減少の傾向にあるものの、品質的な向上が見られるようになった。CIVR( Roussillon)の長、ファブリス・リュウ(Fabrice Rieu)はこう締めくくった。「ルーシヨンのワインの輸出は概ね順調である。低価格帯のワインとして、スペインが重要な影響を持ち始めているものの、ルーシヨンのワインはもともと、収量が非常に低い。そういった品質の問題では、他のマーケットと競合することはない、と考えている」。

ルーシヨン大騎士団新メンバー叙任式

同時にルーシヨン大騎士団(La Commande Majeure du Roussillon)の新メンバーの叙任式も行われた。コート・ド・ルーシヨン・ヴィラージュ会長・ジャン-フィリップ・マリ( Jean-Philippe Mari) 、元二ツ星シェフ・ミッシェル・ポルトス ( Michel Portos) 、ワインバーのオーナー・トマ・カブロル( Thomas Cabrol)、スペインの政治家、メリッチェル・セレ・アリュー(Meritxell Serret Aleu)の四人が、ルーシヨン大騎士団に叙任された。いずれもルーシヨン・ワインの世間への認知を深めたメンバーである。騎士団就任の証として、小さなデキャンタに入れたワインを振る舞われると、それを一気に飲み干した。

この記事を書いた人

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染谷 文平
こんにちは、フランスに滞在中のソムリエです。現在、パリの一つ星レストラン、Neige d’été(ネージュ・デテ)にてシェフ・ソムリエの職についております。レストラン業を続ける傍ら、ワイン造りをより深く知るために、Bourgogneと Alsaceにてワイナリー勤務も経験しました。ワインが生まれる風土、環境、歴史に強く関心があり、ブログ(http://fwrw.blog137.fc2.com
も綴っております。Wine Whatでは、生産者の生の声や、ホットな情報をいろいろと書いて行きたいと思います。

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