日本酒の古酒

魅惑の世界

ワインであればヴィンテージは馴染み深いもの。むしろ、ノンヴィンテージのほうが珍しいかもしれません。一方、日本酒はというと、ヴィンテージという話をほとんど聞きません。ところが、古酒がメジャーでなくなったのは、そう昔の話ではないのだそうですーー

日本酒の古酒を、ご存じですか

ワインやウィスキー、ブランデーなどでは、熟成の文化がしっかりと根付いており、ものによっては相当な価格がつくものもありますね。

日本酒では、様々な理由からこれまで、あまり熟成酒が注目されておりませんでしたが、嗜好が多様化した近年では、熟成酒ファンも増えてきています。

もともと古酒は、貴重な酒として鎌倉時代から江戸時代まで珍重され、神仏にも捧げられた神聖な酒でした。しかし、明治から昭和の戦中にかけて、重い酒税のため古酒を造る蔵は次第に消えました。戦後、酒税制度改正とともに、少しずつ復活しました。

今回ご縁があり、2018年1月20日に、「達磨正宗」の社長を招いての古酒ディナーの会を開催しました。当日の様子をご覧頂きながら、日本酒の古酒について、少しでも興味を持って頂けたらと思います。

古酒のパイオニア「達磨正宗」

天保6年(1835年)創業、岐阜県の酒蔵「達磨正宗」を醸す、合資会社 白木恒助商店(しらきつねすけしょうてん)は、日本を代表する日本酒・古酒の蔵元です。

https://www.daruma-masamune.co.jp/

古酒造りをスタートさせたのは、昭和40年代、6代目白木善次氏。蔵に眠っていた酒を開封し飲んでみたところ、その味ののり具合に驚いたことがきっかけだそうです。

熟成した後、5年後、10年後、どんな味わいと香りになるのかは、時がたってみないと分からない。毎年試行錯誤の繰り返しで、周りからは「酒を売らずに貯めている、変わった蔵」という扱いを受けながらも、信じた道をまっすぐ突き進んだそうです。

その結果、次第に認めてくれる人が増え、古酒は世界への扉を開きます。2008年、世界最大規模・最高権威に評価されるワイン・コンペティションIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ) の日本酒「古酒の部門」にて、達磨正宗1979年(昭和54年)醸造酒がゴールドメダルを、翌2009年には、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ) の日本酒「古酒の部門」にて、達磨正宗1993年(平成5年)醸造酒が銀賞を受賞しています。

人も、酒も、良い時を過ごすと深みがでます

さて、ここからは、イベント当日使ったお酒を、ご紹介して参りましょう。一般販売されていない、とっておきの秘蔵酒も、白木社長がご持参くださいました。

熟成三年&十年古酒

熟成三年&十年古酒

搾りたては、うっすらとした黄緑色の日本酒ですが(※活性炭濾過をかけると透明になります)、熟成三年(左)は、ハチミツ色。

十年古酒(右)は、紹興酒のような色です。こちらはJAL国際線のファーストクラスに3年間搭載されました。もちろん、熟成させてもアルコール度数は変わりません。また、何も加えてはいませんが、経年変化により、ナッツや枯れ草、また、丁子などのスパイシーな香りや味わいが、加わり複雑さが増していきます。

海中熟成酒 2016

海中熟成酒 2016 手にしているのが白木滋里社長

こちらは、白木社長イチオシのお酒で、参加者の皆さんにも一番人気でした。2016年醸造酒を、伊豆の海中に沈めて熟成させ、2017年6月に引き上げたとのこと。

飲んでみるととてもまろやかな味わいでびっくり。

「なぜ、海の中に沈めるとまろやかになるの?」と素朴な疑問がわきましたが、おそらく、海中の微振動が理由だというお話でした。深海だと振動がありませんが、そこまで深くないところに沈めていたので、適度な振動が功を奏したそうです。なるほど!

マイルドな黒酢を使った水餃子との相性がよかったです。

長期熟成古酒 戌年限定ブレンド

長期熟成古酒 戌年限定ブレンド 手にしているのはライターの磯野カオリ

戌年の昭和57年(1982年)、平成6年(1994年)、平成18年(2006年)の3つの戌年製造の熟成酒をブレンドした、戌年3世代ブレンド熟成日本酒。

発想が斬新で、かつ、古酒を造り続けている蔵だからこそ造れるお酒ですよね。

ラベルは、社長のデザインだそうで、とっても可愛い。
*蔵元では既に完売

新酒と、古酒と、大古酒と。
親子3代で団欒をしているような、仲良しで味わい深い、絶妙なバランス。ブレンダーの能力も素晴らしいと、ここで改めて実感しました。

こちらは、ビターなショコラと合いました!

1977年物の熟成酒

蔵の秘蔵酒を、特別にもってきて頂きました。

1977年醸造ですから、御年40歳! ここまでくると、お客様には「黒酢?」とか、「醤油?」とか言われました。
色・香り・味わいだけでなく、テクスチャも、とろーーり。


とろっとろの角煮と合わせたらバッチリでしたよ。

アイスクリームにかけるお酒

アルコールとアイスクリーム、合いますよね。ラムレーズンアイスなんて、その代表選手です。

蔵では、普段からアイスやプリンに、古酒をかけて食べていたそうなのですが、それを商品化するとなると話は別。蔵にある113種類の古酒の中からアイスクリームに合うものを選び出すという、気が遠くなる作業を経られたのだそうです。

*ライトタイプ・ヘビータイプ2種あり

王道のバニラアイスにかけ、さらにオレンジピールのショコラをトッピング。オトナの、贅沢なデザートタイムとなりました。

ワイン好きな方にも、ぜひ、門をたたいてもらいたい、熟成日本酒の世界。
少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

この記事を書いた人

磯野 カオリ
磯野 カオリ
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)認定 酒匠 / 焼酎唎酒師 / 日本酒学講師
SSIインターナショナル認定 国際唎酒師
2019年には日本ソムリエ協会(JSA)認定 SAKE DIPLOMA 取得
ANSA認定 Sommelier
横浜 桜酒亭(おさけてい)代表。
ワイン好きな方に、すこしでも、日本酒の魅力を知ってもらいたい。そして、わたしも、ワインの魅力を知りたい。
日本酒ファンとワインファンの架け橋となるのが、わたしのミッションだと思っています。そのための佳き出逢いを、皆さまに、ご提案いたします。
http://osaketei15.com/

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