シチリア島とアフリカ大陸の間にあるパンテレリア島は、イタリア最西端にある火山島。この島の自然派ワイナリーで出会った、宝物のようなワインについてレポートします。

ユネスコ無形文化遺産のAlberello手法とは

「思えば遠くに来たもんだ、、、」

シチリアのパレルモから小型プロペラ機に乗ること45分、海の向こうはアフリカという最果ての島パンテレリアの小さな空港に降りったった時の感想です。

もっと未開の離島を想像していましたが、かのアルマーニ氏の別荘もあるというリゾート地で、人口も約7500人という規模。島内にはいくつかのワイナリーが点在しています。

Abazzia San Giorgio(https://www.abbaziasangiorgio.net/)というまだ日本ではおそらく知られていない小さな自然派のワイナリーを訪問しました。

恰幅のいいオーナーBattistaの運転でワイナリーに向かう道中、むき出しの黒い岩肌やサボテン等を目にしました。植生がシチリア本島とも全く異なる野性的な景観に探検気分を覚えました。

ブドウと花とが共存

ブドウと花とが共存

 

たどりついたワイナリーには一面春の野草が咲き乱れていて、お花畑かと思ったら土着品種ジビッボ(Zibibbo)のブドウ畑でした。

Alberello(株仕立て)と呼ばれる整枝法はブドウが地表から数センチという低い位置にあるので、花に埋もれていてブドウの存在に気づきませんでした。

このワイナリーは畑で農薬、除草剤、化学肥料等が不使用なのでブドウと花とが共存しているのです。ちなみにこのパンテレリア島のAlberello手法はユネスコ無形文化遺産に登録されています。

素朴過ぎる醸造所にドッキリ

醸造所は、ダムーゾと呼ばれるこの島独自のドーム型の屋根の石造りの建物でした。年間一定の温度を保つことが可能なので、空調設備などはもちろんありません。

メカニカルな設備は何も無く、木樽と発酵用桶があるのみです。この半年で多くのワイナリーを訪問してきましたがここまでシンプルな醸造所は初めてでしたので正直面喰らいました。

 
野草に覆われたCantina

野草に覆われたCantina

なぜなら前回の記事「イタリア自然派ワインイベントの熱気にノックアウト」でも触れていますが、自然派ワインというのは、畑での栽培過程だけではなく醸造過程においても化学的な物質不使用、酸化防止剤となる亜硫酸塩の不使用あるいは少量使用という手法なので、ブドウそのままの、生のままの魅力をワインとして体現できる反面、劣化の可能性も高く、独特の臭気や雑味があったり、瓶ごとの個体差も大きく、抜栓してみないことにはわからないという難点があります。

一抹の不安が胸をよぎりましたが、それはまったくの杞憂でした。

オレンジ色した白ワイン

まず最初に土着品種Zibibbo100%の白ワインORANGE(Vino Bianco Zibibbo IGP)で乾杯。

昨年収穫されてから6か月の発酵醸造期間を終えた、まだ未発売のできたてワインは、果皮とともに15日以上マセラシオン(かもし)されているので、白ワインなのに琥珀色に近いオレンジ色。

 
オレンジ

だからその名もORANGEと名付けられています。

想像とは裏腹に雑味は全くなく、この地に吹く風、シロッコのような野性を感じさせる乾いた香りがまず鼻腔をくすぐり、次に皮由来の渋みが心地よく舌に残る。最後に海からのミネラルがそこはかとなく感じられとても洗練された印象。

Zibibboの畑とBattista

Zibibboの畑とBattista

 

人にたとえるなら無骨だけど、優しくて繊細といったところでしょうか。まるでBattistaの人柄そのもののようでした。(失礼?!)

「名は体を表す」という言葉があるけれど、「ワインは人を表す」のでしょうね。

そしていよいよ真打Passitoの登場。

Zibbkibo100%のMAGICO(Passito di Pantelleria DOP)は一口飲むごとにためいきが出てしまうほど圧倒的な存在感がありました。イタリア語でMAGICOとは「魔法なような、魅力的な」という意味がありますが、まさにその名の通りです。

Passitoは収穫したブドウを天日で10日程度乾燥させ、糖度を高めてから造るワインです。海の向こうはアフリカという灼熱のこの地で、一番暑い時期の8月か9月に収穫を行うのですから、その手間と労力には頭が下がる思いがあり、ごくごく一気に飲んではいけない気がして、ゆっくりと一口ずつ味わいました。

イタリア人家族と食卓を囲んで

その日はBattistaの家でご家族と一緒に夕食をご馳走になりました。奥様Pinaと、物静かな中学生の兄Giuseppe、まだまだ甘えん坊の8歳の妹Giuliaとの4人家族と囲む食卓は、それはそれは賑やかでした。

もう三月なのに肌寒い日だったので、Pinaが熱々のポレンタ(イタリア北部の料理)とグーラッシュを用意してくれました。「シチリア料理じゃなくて申し訳ないけど、、」とPinaは謙遜しながら言っていたけれど、身体がじんわりと温まりほっこりする味でした。

Nerello Mascalese100%のロゼワインCLOE(Vino Rosato IGT)や、試作中のNero d’Avolaの赤ワインとともに美味しく頂きました。

そして食後はGiuliaがお菓子屋で選んでくれた、シチリアのドルチェをパッシートワインMAGICOと共に頂きました。

MAGICOは、香りはアプリコットや干しイチジクの華やかさや豊潤さがあるのですが、適度な酸味もあり、後を引かないので実はドルチェとの相性も良いのです。

あくる日の昼食、夕食も厚かましくもBattista家でご馳走になってしまいました。

ワインって「何を飲むか」ももちろん大事だと思いますが、「誰とどんな風に飲むか」そしてその時の分かち合った記憶がもっと大切なのではないかと気づきました。

きっと何年たってもこの小さな島での幸せな食卓と、飲み交わしたワインのことを私は忘れないと思います。

この記事を書いた人

MINA
MINA
外資系金融に長年勤務するも、イタリアワインが好き過ぎて2017年9月よりローマ近郊のビオロジコ、ビオディナミコのワイナリーMARCOCARPINETI にてブランドアンバサダーとして研修生活を送ることに。
ワインもイタリア語も勉強中ですが、持ち前の行動力と好奇心を活かして、イタリアのワイン、人、文化の魅力をリポートします。
MARCOCARPINETI(http://www.marcocarpineti.com/)