WINE-WHAT!?5月号の巻頭ページでは偶然にも、赤ワインで煮込む鶏肉料理(コック・オ・ヴァン)のお話が書かれていますが、日本酒の鍋は、ご存知ですか? 今回は、本誌でもお馴染みの、賀茂鶴酒造(広島県東広島市)に酒造り体験に伺った際、蔵の方々と共に頂いた美酒鍋(びしょなべ)のストーリーとヒミツに迫りたいと思います。
美酒鍋

美酒鍋のルーツ

美酒鍋は、広島県の銘醸地・西条の郷土料理です。

酒都という名にふさわしく、西条駅付近には8つもの蔵元が集まっており、10月に開催される西条酒まつりには、県内外から驚くほどの多くの客が訪れ、町は日本酒の香りにつつまれます。

そんな西条で生まれた、美酒鍋ものがたり。

最近では「びしゅなべ」と読むことも多くなったようですが、本来の読み方は「びしょなべ」です。 酒蔵で下働きをする蔵人さん達は、洗米の他、道具や布を洗ったりと、水を使う仕事が多いため常に前掛けがびしょびしょだったから、というのが、その名の由来のようです。

終戦直後の食材が乏しい時代、「若い蔵人たちに栄養たっぷりで温かい料理を、おなかいっぱい食べさせたい」という想いから、当時賀茂鶴酒造の専務であった石川和知氏が、安価な鶏の内臓などを使った賄い料理を考案したのがはじまりです。

今では、蔵で作ることはほとんど無いようですが、「昔は何度かお祝いの席などで作りましたよ」とは、賀茂鶴酒造二号蔵の椋田杜氏の言葉。

味付けは、酒と塩胡椒のみ。これにも理由があり、蔵人は酒のチェックをする作業もあるため、忙しい仕込みの最中、砂糖やしょうゆを使った料理を食べた直後だと、きき酒に支障が出る可能性があるためシンプルな味付けなのだそう。なるほど!と、納得です。

佛蘭西屋(ふらんすや)

佛蘭西屋(ふらんすや)入り口

レトロで瀟洒な、佛蘭西屋にて本家本元を

賀茂鶴酒造の目の前にある、蔵元併設レストラン「佛蘭西屋(ふらんすや)」へ。1Fはフランス料理、2Fでは和食を提供しています。
http://www.france-ya.jp/index.html
外観からして雰囲気のある建物ですが、中に入るとさらにモダンで素敵な空間が待ち構えていました。

壁面にずらりと並んだおちょこから、好きなものをチョイスできるのも嬉しい計らいです。

佛蘭西屋(ふらんすや)のおちょこ

美酒鍋初体験!

鶏肉、肝ずり、豚肉、そして、地元産の野菜やきのこ類をたっぷり使い、酒を少しづつ足しながら炒りつけていきます。もちろん、賀茂鶴のお酒を使用。

ああ、もったいな……という言葉を飲み込み、美味しいお鍋が出来上がるのをしばし待ちます。

お味はいたってシンプルながら、日本酒の効果で野菜と肉の甘みうまみが最大限に引き出されおり、舌も胃も喜んでいるのを体感しました。



日本酒の健康・美肌効果

日本酒は太る、とか、酔いやすい、などと誤解されている方も多いようですが、アルコールだけでなく料理も含めた“カロリー総摂取量”が問題となります。 ビールよりも日本酒の方がアルコール度数が高い分、同じ量で比べるとカロリーは高いですが、ビール中ジョッキと日本酒一合(180ml)を比較するとほぼ同じ。 よって、ビールを選んでも、揚げ物などと共に何杯も飲めば、カロリー総摂取量は高まります。何を飲むにしても、飲み過ぎと食べ過ぎに注意し、上手に付き合うことが肝要なのです。

逆に日本酒には、アミノ酸がたっぷり含まれているため、整腸作用や免疫力のアップなど、体に嬉しい効果が期待できます。 また、麹のチカラにより、美白・美肌にも効果的と言われているため、ヘルシーな具材の美酒鍋と、美味しいお酒の組み合わせは、美人への近道!と言えるかもしれません。

美酒雑炊

「美酒雑炊」を作ってみました

横浜に帰ってきてから、広島旅行をご一緒した仲間と一緒に、飲食店にて美酒鍋パーティを開きました。 今度は、さらに贅沢に、“オール広島”にこだわって造られた、賀茂鶴酒造の「広島錦 純米酒」を使用。 美酒鍋と、常温~ぬる燗の広島錦は、当然ながら最高のペアリングでした! 広島錦も美酒鍋も、初めて、という参加者がほとんどでしたが、皆さんその味わい深さに感動されていました。

もちろん、〆の雑炊にも他の調味料は足しません。 大満足で、おなかもいっぱいになりましたが、翌朝もたれるようなこともなく、胃腸も肝臓も快調でした。

身近な素材で簡単にできる美酒鍋。春夏であれば、アウトドアで披露すると喜ばれるかもしれませんね。 ワイン煮も、美酒鍋も、共にぜひ!試してみてださい。

この記事を書いた人

磯野 カオリ
磯野 カオリ
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)認定 唎酒師 / 焼酎唎酒師 / 日本酒学講師
SSIインターナショナル認定 国際唎酒師
横浜 桜酒亭(おさけてい)代表。
ワイン好きな方に、すこしでも、日本酒の魅力を知ってもらいたい。そして、わたしも、ワインの魅力を知りたい。
日本酒ファンとワインファンの架け橋となるのが、わたしのミッションだと思っています。そのための佳き出逢いを、皆さまに、ご提案いたします。
http://osaketei15.com/