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土着品種グリニョリーノを求めてピエモンテまで

前途有望なピエモンテワインの造り手ここにあり

昨年11月にピエモンテ州を旅行した際にMonferatoにも足を延ばしてまだ30代半ばの若き造り手DavideGaroglioのワイナリーを訪ねました。

幼いころからの夢を叶えるため獣医から転身

AziendaAgricolaGaroglioDavideは除草剤や化学肥料不使用、そして畑だけでなくカンティーナにおいても、自然発酵と無濾過による醸造をしており、亜硫酸塩の使用も最小限に抑えている自然派ワイナリーです。

11月だというのに下草が青々としていて歩くと大地がふかふかしているのを感じます。

トリノ出身のDavideは幼い頃から、この1859年から代々伝わるお祖父様の畑の手伝いを、夏休みごとにしていました。

大学卒業後は一度は獣医になるものの、ほぼ独学で栽培や醸造を学び、2013年から畑を引き継いでワイナリーを始めました。

大切なことはみんなお祖父様から学んだとのことです。

 

愛犬を抱き上げるDavide

愛犬を抱き上げるDavide

アンチョビと赤ワイン?

敷地内に住むお祖父様とお祖母様と一緒に、お昼ご飯をを頂きました。

出荷を待つワイン

醸造所で静かに出荷を待つワイン

 

ピエモンテ産のハムやチーズに合わせるのはもちろんDavideのワイン達。GAS12(樹齢60年以上のBarbera、ステンレスタンクで4週間の自然発酵後バリックにて14ヶ月熟成)は、Davideのニックネームと、学生時代水球選手だった時の背番号から名づけています。

こういうところが遊び心があって、伝統に縛られることなく自由で面白いなと思います。

スミレや果物のコンフィの香りや少しバルサミコの香りもあり、後味はスパイシーできれいな酸味、シルクみたいな舌触りのタンニンが印象的でした。

お次はBRAIDA(土着品種グリニョリーノGrignolino、10ヶ月ステンレス製醸造桶、6月瓶熟成)の登場です。

エチケットがブドウをギュッと絞ったデザインなのはブドウ本来の生のままの魅力を伝えたいし、ワインはその土地を写真のように映し出すものだというアイデアからです。

お祖父様がアンチョビの酢漬けとバターをパンに乗せてくれて、一緒に食べるように勧めてくれました。

「青魚に赤ワインなんて口のなかが生臭くなったらどうしよう、、、」と思い、恐る恐る飲んでみましたが、Grignolinoの澄んだ酸味が、アンチョビとバターの油分を流してくれるので何度でもおかわりできそうでした。

Davideによると、デリケートさがこのGrignolino品種の特徴なので、生臭くなることはまずないし、アンチョビと合せて食されることは、ピエモンテではいたって普通だそうです。

ルビー色したこのワインは、例えとして正しいかわかりませんが、梅干しを思わせる酸味と繊細な花の香り、ドライな飲み口、そして最後にくるほんの少しのな苦味が特徴的で、重さがないので昼間から飲むのに最適だし和食にも合うと思いました。

まだ日本に輸入されていませんが、日本の皆様にもぜひ味わって頂きたいです。

食後はお祖母様お手製のヘーゼルナッツのタルトも頂いてほっこりした幸せなひと時を過ごしました。

お祖父様もお祖母様も、孫息子が都会から戻って畑を継いでくれて、一緒に過ごせてとても嬉しそうでした。この日はDavide自らが、リノベーションからインテリアまで手掛けたという併設のB&Bに宿泊しました。ほどよく田舎風にしつつもセンスのいい部屋には枕元に野の花の一輪挿しが置いてあったり、化粧室にはラベンダーオイルのスプレーが置いてあったりと、何から何まで気が利く素晴らしいしつらえでした。

アットホームなランチタイム

アットホームなランチタイム

周辺のワイナリーも訪問

翌日はDavideの案内で、敷地内に立派なワイン博物館を併設するCastello di Razzanoや、すでに日本に輸入もされて評価を得ているCrealto、そして一匹狼風個性派ASTOMと、それぞれ個性あふれるワイナリーを訪問しました。

試飲している間、Davideも目を輝かせて(何なら私よりも)熱心に彼らの説明に耳を傾けていました。

造り手同士が語り合う時、そこには良い意味でのプライドとプライドのぶつかり合う、目に見えない火花が散るのを私は何度もこれまで目にしてきました。ところが彼は「ほんと美味しいね~」と屈託なく、飄々としていて常にニュートラルでした。

実験的なワインも醸造中

トリノ出身なのに、若い身空でクラブなどもないようなこんな静かな場所で、たった一人でワイン造りをして大変なのではと、老婆心ながら今のライフスタイルについてどう思うか尋ねてみました。

「トリノより自然に恵まれたこっちでの生活のほうが断然いいよ」と即答してくれました。その言葉からは、歴史ある畑を継ぐことの重圧みたいなものは感じられなく、とにかく創意工夫しながらのワイン造りが楽しくて好きで仕方ないということが伝わってきました。

その一例として、現在お祖父様へのオマージュを込めて、Barberaの樹齢65年と20年の畑の原酒を混ぜ合わせたワインを実験的に醸造中だそうです。異なる世代のブドウからできたワインがどんな味と香りを醸し出すのか楽しみですね。

ワイン造りは大自然が相手だから、今後さまざまな試練があるかもしれないけど、きっとDavideならその持ち前の冒険心とやんちゃさで乗り越えて、自由なワイン造りを続けるに違いないと確信しました。

この記事を書いた人

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MINA
外資系金融に長年勤務するも、イタリアワインが好き過ぎて2017年よりイタリアに渡航し、ローマ近郊のワイナリーMARCOCARPINETI にてブランドアンバサダーとしてPRや翻訳を担当しワインの研鑽を積む。滞在中にイタリア中を旅して出会ったイタリアのワイン、人、文化の魅力を伝えます。

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