5月から8月の3ヶ月、ほぼ雨の降らなかったナパ。キリキリと肌を刺す陽射しの中で、ぶどうとわたしの孤独な戦いは次のステージへ。今回もぶどうの成長にあわせて行うクオリティアップのためのマネジメントについてご紹介します。
はたけで格闘するわたし

6月。はたけで格闘するわたし…孤独…

いいバランスが、いいワインにつながります

人力で薬剤散布

大きな畑はトラクターを使いますが、小さい畑は人力で薬剤散布です。わたしも硫黄を散布しました。硫黄のにおいが体につきます。マスク必須!

 

ぶどうの果実が熟しはじめるまでにする作業は2つ。

ワイン用ぶどうの最大の敵であるうどん粉病を防ぐため、硫黄を含む薬剤を週に一度散布する作業。

それと、「キャノピー・マネジメント」と呼ばれる幹、枝、葉、果実などのバランスを整え、ぶどうのクオリティを高める作業。

この2つの作業をモクモクと続けます。

今回は、私が5月~8月に取り組んでいた「キャノピー・マネジメント」についてお話ししたいと思います。

 

ぶどうの散髪「キャノピー・マネジメント」

ぶどうの木は放置すると、本当にのびのび伸び放題になってしまうので、根気よく面倒をみなければいけません。

キャノピー・マネジメントにおいて重要なのはバランスとタイミング。まずは葉っぱ。「葉っぱ=ソーラーパネル」なので、生育にとっては必要不可欠。

ですが、あまりにも多いと、風通しが悪くなり、病気にかかりやすくなったり、果実に太陽が当たらずうまく熟さなかったりするのです。

もちろん、葉を取り除きすぎても良くありません。午後の強い日差しに果実がさらされると、水分が飛んでレーズンのようになってしまうのです。

次に枝。枝たちはどんどん上に伸びようとします。

 
取りのぞかれた大量の葉っぱ

取りのぞかれた大量の葉っぱたち

が、ワインをつくるわたしたちからすると、ある時点からは、枝の成長でなく果実の熟成に力を入れてもらいたい。

なので、枝先をカットします。ただ、あまり早い時期にカットしてしまうと、ぶどうの木は危機感を感じ「もっと成長しよう!」となります。そしてメインの枝の横から出る「ラテラル」という新芽を急速に伸ばすのです。そうすると、また葉っぱが多くなって病気にかかりやすくなるため、それらを取り除く作業をしなければなりません。

ラテラル

ハサミで切ろうとしているのがメインの枝の横からでている「ラテラル」。写真のようにメインの枝と同じくらいの太さになることも

ビフォー
 
アフター

枝のビフォー(左)アフター(右)。好き勝手に伸びる枝たちをきれいに

枝をワイヤーにくくりつける

まっすぐ伸びてくれなかった枝たちをワイヤーにくくりつける作業。地道です

最後にぶどう。果実も成った分だけ収穫するわけではありません。ぶどうの木は基本的に1枝に2つの房をつけますが、場合によっては3房つけることも。品種やそれぞれの木の健康状態にもよりますが、健康なぶどうの木、そして健康な枝には2房残すのがスタンダード。品質を追求する場合は、3枝に対して5房、4房に調整することもあります(1房だけ残す枝、2房残す枝を交互に繰り返す)。1枝に1房だけという超こだわり派もあります。(そこまでする必要があるかどうかはちょっと微妙ですが…)

細くて小さい、生育状態が悪い枝には2房分のぶどうを熟させる能力がないので、1房だけ残すか、果実を全て落としてしまいます。

その他にも、「セカンド・クロップ」という枝の上の方になる小さな房を落とすこともあります。セカンド・クロップはメインの房と同じような糖度になることは無いので、房を落とさないとしても、収穫されることはほとんどありません。

落とされてしまった果実

残念ながら落とされてしまった果実たち。これもおいしいワインのためです

 
セカンド・クロップ

一番上の小さい房がセカンド・クロップです。成熟が遅いのがわかります

 

葉や芽、果実を取り除く作業は手作業だと、とても時間がかかります。でも手作業でないと判断できないことも多いのです。つまり、それだけ労働力=お金がかかってしまうわけです。健全なぶどう畑・ワイナリーの経営のためには、きちんと戦略をたてることが大切なのですね。

一見すると地味ですが、ぶどうの木を見守り、導くように調整してきた3ヶ月。畑に行くたびにその成長ぶりと生命力に驚かされ、喜びつつも「また調整だ」と思ったり(苦笑)。いまナパのぶどう畑では収穫が始まりつつあります。ここからは毎日ブドウの果実をチェックして最適な収穫時期を見極める、時間との戦いがはじまります。ナパの2018年のビンテージがどうなるか、私も楽しみです。

20時頃まで明るいナパ

20時頃まで明るいナパ。気がつくと時間を忘れて何時間も熱中していることも…

*補足*
キャノピー・マネジメントにもさまざまな種類の作業があります。その例をご紹介。

-Shoot thinning
サッカー(幹から出る不要な新芽)はもちろん、ラテラル(メインの枝からでる横芽)、過剰な葉っぱを取り除き、風通しと日当たりを確保する。

-Shoot Positioning
斜めや下向きに伸びている枝を、一本一本ワイヤーにくくりつける。全ての枝を垂直に伸ばすことで、枝や果実同士が絡まることを防ぐ。絡まると風通しが悪くなったり、太陽が均一に当たらず、うまく熟さない果実がでてくるため。

-Hedging
枝の先端をカットし、過剰な枝や葉の生長を防ぐ。基本的には一番上のワイヤーから出ている部分をカットする。

-Crop Thinning
多すぎる果実を落とす作業。黒ぶどうであればまだ房の色が緑の時に行われることもあり、それをグリーン・ハーベストと呼びます。

収穫スタート

品種によっては収穫もスタートしています。ワイン造りが垣間見られるこの時期のワイナリー訪問もオススメですよ

この記事を書いた人

Saori
Saori
2014年よりアメリカはカリフォルニア州ナパに留学中。Napa Valley Collageにてワイン醸造とブドウ栽培を勉強中。

個人的嗜好にかたよったカリフォルニアワインの紹介と訪れたナパとソノマを中心としたワイナリーの数々、そしてワイン造りとグルメ、美しい風景などなど、わたしが体感しているナパの毎日のようすをお届けします。