せっかくお気に入りのワイン木箱を海外から送っても、「その木箱、輸入できませんよ」などと言われたら誰しも戸惑ってしまうであろう。いったい、どうやったら木箱付きで無事に送れるのか。輸出入を専門にしている人にとっては常識でも、全く知らない人も多い輸入ルール。今回はそんな話題にふれてみる。

ワインオークションの代理人とは?

筆者の生業の一つに、海外ワインオークションの代理人というのがある。

海外(主に米国、欧州、香港など)のワインオークションは品揃えも良く、保存状態が良いものと出会える確率が高いのだが、個人輸入に慣れていないと難しい部分もあるため、入札から落札、集荷、個人宅へのお届け手配まで、ワンストップサービスでご利用いただけるようにするのが代理人の役割なのだ。以前は直接、NYなどに行ってパドル(落札用の札)を預かり、ご予算に応じての落札もしていたが、今ではインターネット社会の恩恵でほぼ、日本在住で代理人の仕事ができている。

 
オスピスドボーヌ

筆者が樽買いしたオスピスドボーヌ

 

OWCってなに?

ときどき、ワインオークションカタログを見ていると、OWCという言葉が出てくる。これは、Original Wooden Caseという意味で、要するに専用木箱のことである。マニアにとっては、お気に入りの銘柄の焼き印が押されている木箱はたまらなく愛おしく、ぜひ入手したいと思うに違いない。だが、そう簡単にはいかないのが各国にある輸出入規制。島国である日本も当然、厳しい。なぜなら、植物検疫が必要な輸入だからだ。

木箱

筆者が樽買いして現地から発送したワインの木箱

先日、その代理人サービスをご利用のお客様が、1996年のChateau Calon-Segur12本を落札成功されました。その後、日本に送るために国際宅急便の手配をして集荷をかけると、二箱あるというので疑問に思い、検品依頼をかけたところ、もう一箱は木箱が梱包されていたことが発覚。通常、オークションのラインナップでは木箱付きのものは少ない。そのお客様は今回、わざわざ木箱付きのLOTを選んで入札されたとのこと。直ぐに海外のオークション会社に問い合わせて、燻蒸証明があるものかどうか確認を求めたが判らないという回答しか返ってこなかった。消毒を施し、お金を余計にかけても運ぶか、もしくは廃棄するかをお客様に選択していただき、結果は泣く泣く廃棄ということに。

なぜ消毒が必要なの?

いったい、何のために消毒をしなくてはいけないのだろうか? それは、木材こん包材に病害虫が付着して世界各国に蔓延し、経済的被害を生じる恐れがあるからだ。

1859年、フランスにブドウネアブラムシ(フィロキセラ)という害虫が大量発生し、10年後にはフランス全土に蔓延してワインの生産量は30%程度にまで落ち込んでいる。この害虫はアメリカから大量に輸入したブドウの苗に侵入していたものであった。

フランスでの被害を知った隣国のドイツでは、自国への侵入を何とか水際で防ごうと1872年にはブドウ害虫予防令を発令して繁殖用のブドウ苗の輸入を全面禁止にした。これをきっかけに世界各国で植物輸入検疫が行われるようになり、他国からの木材梱包材に関しては燻蒸処理済のものでなければ入国させることはできないという措置が取られるようになった。世界各国で一定の植物検疫措置をとることが必要であると認識が高まり、国際基準の認定措置による処理を、輸出国で実施するようにとのガイドラインが出来た。それが、国際植物防疫条約に基づく「植物検疫措置に関する国際基準ISPM No.15」である。現在ではEU、米国、カナダ、韓国、オーストラリア等80カ国以上で、国際基準に即した消毒、表示等を輸出国で行うことを要求している。

どんな処理をするの?

処理方法には熱処理と臭化メチル燻蒸処理の二つの方法がある。

熱処理では、木材梱包材を加熱室(窯内)に入れ、材芯温度を含む断面全体を摂氏56度以上で30分間以上加熱する方法(HT)と、マイクロウエーブなどの誘電加熱により木材断面全体を連続する1分間、最低摂氏60度で加熱処理する方法(DH)とがあり、熱処理から30日以内に消毒を確認した機関の証明書を添付して発送しなければならない。

臭化メチル燻蒸処理(MB)の場合は、温度別(木材・大気温度10℃以上)の最低CT値(薫蒸時間24時間以上、ガス濃度×時間の積)および24時間後の最低最終濃度が規定されている。いずれの方法においても処理後は、消毒済みであることの証として、国際基準に沿った承認マークが付されている必要がある。

マークの説明 

処理表示がない場合:
検疫の対象となる植物に該当することから、植物防疫所への届け出と輸入検査等が必要。

逆に、処理表示がある場合:
検疫の対象となる植物に該当しないことから、検疫措置や届け出は不要。

また、輸入国によっては国際基準に加えて独自の基準を設けている国もあるが、日本からの輸出においては、マツ材線虫病(英名:pine wilt disease)の発生を警戒される。これが木の梱包材に付着して輸出国に侵入すると他国で大きな環境被害を起こしかねない。

もし処理されていない木材を使った木箱であれば現地の通関で非常に手間取るだけでなく、そのまま返却されてしまうこともあるので、輸出国の規制に関しては事前に確認しておく必要がある。

木箱の側面のマーク
 
マーク
 

日本では2007年4月から輸入貨物に対しての規制が始まっている。ワイン用木箱の輸入を考えるとき、ここの「輸入木材こん包材の検疫について(リーフレット)」をダウンロードして準備すると良いだろう。

植物防疫所 木材こん包材の輸出入(日本語、英語、中国語あり)
http://www.maff.go.jp/pps/j/konpozai/index.html

追記

海外ワインオークションの代行落札「ワインオークションクリマ」を最後に紹介する。筆者が業務を担当している。
http://www.climat.org/auction/
ワインオークションクリマは、日本に居ながらにして海外の老舗オークションハウス(サザビーズ、クリスティーズなど)でご希望のビィンテージワインを落札し、ご希望場所へのお届けまでトータルに代行するサービスを提供します。

この記事を書いた人

Misa "Pixie" Shimada
Misa "Pixie" Shimada
海外ワインオークション代理人として、ワインの個人輸入をサポートしながら、都内のワインバーやワインショップをプロデュース。
六本木にあるワインバーのチビッコマダムでもある。
2018年春に応募者多数で狭き門の塩尻ワイン大学二期生に合格し、現在は塩尻市に通いながら、葡萄栽培と醸造を勉強中。
近い将来にワイナリー創業を目指している。
落札代行「ワインオークションクリマ」http://www.climat.org/auction/

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