誰にでもあるのだろうか…『記憶を呼び覚ます香り』というものが…
4492-1

浜名湖畔の実家にて。

午後のお茶をいただくとしよう。普段ならミルクを入れた濃い目のアッサムとなるのだが、今日はアールグレイが飲みたい気分。お菓子はプレーン&ブルーベリースコーンにクロテッドクリームを添えて。

30年前、ロンドンのとあるティールームで念願のアフタヌーンティーを愉しみ、木箱入りの茶葉を6種類も買ってきた。当時はもう二度とイギリスなんて行く機会はないだろうからと、紅茶にまつわるいろんなものを買いこんだ。その頃のわたしは、父親譲りの紅茶党。ボーンチャイナのティーセット、茶こしやスプーンなどの銀器、ティーコジー、ティーマットなど、とてもじゃないけど持ち帰れないので、それらを船便で送るように手配した。まだかまだかと首を長くして待つこと三カ月、とてつもなく大きなダンボールが届いたのだ。

梱包材で幾重にも包まれた茶器類を、箱の中から探し見つけ出していくのは、宝探しのようで楽しかった。八畳間が見る見るうちに新聞紙と梱包材の山になった。さっそく届いたばかりの紅茶が飲みたくなった。アールグレイというノーブルな響きに惹かれて封を開けた。なんとも独特な香りが立ち上がる。

後で知ったことだが「アールグレイ」は19世紀初頭、外国使節として中国奥地を訪れた「グレイ伯爵」の名に由来する。なるほど、貴族的な雰囲気とエキゾチシズムが漂うわけだ。中国茶にシチリア産ベルガモットの香油でフレーバーをつけたという。

せっかくなら、ぬくもりのある午後のお茶の時間を過ごしたい。八畳間の一角にローマで買った小ぶりの絨毯を敷き、カフェテーブルを置いてみた。室内窓からは柔らかい光りが差し込んでいる。椅子は父のお気に入りだったロッキングチェア。座布団カバーは母の手作りで、着物の帯をほどいて作ったもの。和洋折衷のしつらえ。控えめな美しさ。静かな午後。ベルガモットの香りとともにわたしの「こころの風景」が広がった。

この記事を書いた人

ゴローザ通信
ゴローザ通信
浜名湖畔の風光明媚な集落に生まれる。主婦、ときどきイタリア語通訳・翻訳・コーディネーター、アートユニット活動もしています。
※「ゴローザ Golosa」とは、イタリア語で「食いしん坊」のこと。「食に対して貪欲である」ということから「好奇心や探究心が旺盛な」という含みも。

落ち着くところ:水のある風景
リピートしたいところ:イタリア、南アフリカ

ゴローザが、日々の暮らしの中で見つけたこと、感じたこと、好きなことなどなど…心のおもむくままにお届けします。
この作者の最近の投稿