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復活の鍵はブルゴーニュワインへの“原点へ回帰”

老舗ドメーヌ・シャンソンの社長 ヴァンサン・アヴネル氏によるセミナーより

「当メゾンの創業はフランス革命以前」という、ブルゴーニュで1、2の歴史を誇るドメーヌ・シャンソン。その哲学とは? 2017年社長に就任したヴァンサン・アヴネル氏が来日しセミナーを開催、須藤千恵子さんがお話を聞いてきました。

全房発酵に立ち返る

ボルドー、ロワールを経て、ワインへの情熱により、ごく自然にブルゴーニュに導かれたというヴァンサン・アヴネル氏。

ブルゴーニュにおいて古い歴史を持つメゾンは少なくとも10軒はあると言われています。そのうちのひとつがドメーヌ・シャンソンです。45ヘクタールの所有畑と15世紀に建てられた砦を誇りとしています。

1750年創業ですが、オーナーは時代とともに変遷し、1999年にボランジェ・ファミリーの傘下となりました。

おかげで、第二次世界大戦後、ブルゴーニュにもやってきた不遇の時代から続いた負の遺産を清算し、設備や人材確保への投資が行われ、18世紀に得た本来の名声を取り戻しつつあります。

功を奏したのは品質の向上(生産量は変わらず)で、その成果は顕著に表れています。

その鍵とは、ズバリ“原点回帰”。シャンソンのスタイルである本来のブルゴーニュワインつくりに立ち返ったと言えます。

DRC、ルロワ、デュジャック、ランブレイ、コンフュロン・コトティド……、これらの生産者に共通するものとは?

そう、ブドウの実と梗を分けることのない全房発酵を行っていること。

1950年代に除梗機が開発されて以来、未熟な梗を取り除き、ピュアな果実みを生かすスタイルが主流となりました。

第二次世界大戦後、シャンソンも除梗を施す醸造を行っていましたが、2000年に醸造責任者としてジャン=ピエール・コンフュロン氏が着任、彼が代々踏襲してきた全房発酵の技術を導入し、かつてのシャンソンのスタイルに回帰する改革が図られたのです。

全房発酵を行うため、畑での剪定や選芽などの管理、実とともに茎の熟成を待つ根気が必要となり、収穫は選果、手摘みなど、機械に頼ることのできない忍耐の要る作業となりました。

発酵前にはブドウを7℃まで冷やし、通常は2〜3日のところ、シャンソンでは8〜10日間を費やす長期の低温浸漬を行います。

この浸漬の期間、酵素が細胞壁を壊し、梗や種からフローラルさやスパイシーさのアロマが抽出され、また梗からもたらされるタンニンによって、ワインの長期熟成を可能にします。「ワインつくりは忍耐。だからこそ情熱が必要なのです」とアヴネル社長は語りました。

また、水分が含まれている梗にはフィルターの役割もあり、色、香り、質感、骨格を和らげ、アルコールは1.5%ほど下がり、フレッシュさをプラスしてくれます。

ドメーヌ・シャンソンのモノポール、ボーヌ1級レ・グレーヴ2015。力強さとエレガントさを併せ持つ。「ビロードの手袋をはめた拳」とも称される。

テロワールに育まれたブドウの実直さを生かすため、新樽率は、白ワインは20%まで、赤ワインは30%まで、に決めています。所有畑のブドウからつくるワインも、購入したブドウ果汁からつくるワインも、同じ比率を守る。これも、シャンソンの哲学である、畑の独自性の尊重=テロワール重視に則ったものです。

全房発酵への転換には、技術、人材、施設など大きな変更や見直し、そして膨大な時間と労力がかかり、今のように整ったのは2013年頃のことです。これによって、「シャンソン」の品質を向上させ、独自の個性を確立、業界からも高い評価を受けるなど、かつての名声を取り戻しつつあります。

ブルゴーニュ本来のワインを守り、独自のスタイルを確立するシャンソン。これからの進展が期待されます。

ドメーヌ・シャンソン www.vins-chandon.com

インポーター:株式会社アルカン www.arcane.co.jp

この記事を書いた人

須藤千恵子
須藤千恵子
語学留学など世界複数国に滞在するなかで異文化と触れてきた経験と、帰国後にワイン輸入販売社勤務経験から、ワインと食の在り方など、独自のPR活動を行う。(社)日本ソムリエ協会ソムリエ、(社)日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMA、(社)日本フードアナリスト協会フードアナリスト。

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