「アルコールも果実味も濃くって……」と敬遠する言葉も時折耳にするカリフォルニアワイン。でもおいしさのキモは、“バランス”! 「合わせる料理でその印象は七変化しますからね」と語るのは、マスター・オブ・ワインのニコラス・パリス氏。グッとおいしく感じる“口内調味”の世界へ、いざ!

日常のその先へ! 

ニコラス・パリスMWを囲んで。

ペアリングの舞台は、銀座一丁目のキラリトギンザというビルの7Fにある「Bistro BARNYARD Ginza」。この日、テーマとなったワインは、E. & J. ガロ・ワイナリーが手がけるプレミアムラインのカリフォルニアワインです。

E. & J. ガロ・ワイナリーは、カリフォルニアを本拠とする世界最大規模を誇る家族経営ワイナリーで、100以上の幅広い銘柄のラインナップを有しています。

E. & J. ガロ・ワイナリー アジア・パシフィックのゼネラル・マネージャー、ビル・マクモラン氏(左)と、ニコラス・パリスMW(右)。

E. & J. ガロ・ワイナリーは日常的に親しまれるテーブルワインでよく知られていますが、この日用意されたのは、プレミアムな3ブランド、「William Hill Estate Winery(ウィリアム・ヒル・エステート・ワイナリー)」「Orin Swift(オリン・スウィフト)」「MacMurray Estate Vinyards(マクマレー・エステート・ヴィンヤーズ)」のワインでした。

(左から)ウィリアム・ヒル ナパヴァレー シャルドネ 2016、オリン・スウィフト マネキン 2016、マクマレー ロシアンリヴァー ピノ 2016、オリン・スウィフト アブストラクト 2017、ウィリアム・ヒル ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2014、オリン・スウィフト パピヨン 2016

これら1本ずつの香りと味わいを吟味し、特別に作られた料理と合わせていくフードペアリング。マスター・オブ・ワイン(MW)のニコラス・パリス氏とともに、その妙味を体験した中で、特に印象的だった3つの組み合わせを紹介します。

海の香りをも包みこむグラマラスなシャルドネ

ワインは、オリン・スウィフトのシャルドネ「マネキン 2016」。オリン・スウィフトは、その革新的アプローチと芸術的なラベルデザインで「ナパの新たな伝説」と呼ばれる造り手です。

服は時代ともにどんどんと変化していっても、「マネキン(mannequin)」はそれをしっかりと受け止め、支えている存在……。アメリカの女性ラップシンガー、ニッキー・ミナージュの歌詞にもそんな一節があり、普遍的な個性や魅力がその名の由来なのだとか。

単体で飲むと、熟した白桃やパイナップルなどの南国フルーツのアロマがガツンとくる。「果実味とともに、ナツメグやクローヴなどのベーキングスパイス、フレンチオーク樽由来のバタースコッチなども感じると思います」と、ニコラスMW。アルコール15%で、まさにニッキー・ミナージュのようなパワフルなシャルドネですが、これが料理と合わせると表情を変えます。

料理は「アサリ・ムール貝・アワビのタブレ仕立て フロマージュブランとタラゴンの香り」。

それぞれの貝の異なる食感の変化もさることながら、アワビの肝を使ったソースがポイントで、しっかりとした磯の香り。「こんなにしっかりとした海のフレーバーに、ふくよかなシャルドネが合うの?」と思いましたが、口に含むと不思議! ワインがまるでソースのような役割となって“口内調味”が展開します。

クリーミーな口当たりのフロマージュブランとタラゴンのハーブ香も、アクセントに。重層的な山海の幸が渾然一体となって、厚みのあるおいしさが生まれていました。

鴨と、オレンジと、ピノ。定番もひとひねり!

カリフォルニアのピノ・ノワール。ブルゴーニュのそれにはないダークチェリーの香りをまといつつ、甘やかで飲みごたえのある“カリ・ピノ(カリフォルニアのピノ)”が好きだ! という人も少なくありません。

マクマレー・エステート・ヴィンヤーズは、ピノ・ノワールに特化したソノマのプレミアムブランドのひとつ。登場したのは「ロシアンリヴァー 2016」です。ロシアンリヴァー・ヴァレーは、ソノマでも特に優れたピノの産地として有名ですが、このワインはロシアンリヴァー・ヴァレーの涼しげなニュアンスよりは、よりボリューム感のあるピノで、アルコール度数は14.5%。

このワインのために出された料理は、定番の素材を使いつつも、そこには“ニクい”工夫が。

「鴨の冷製スモーク ドライフルーツ添え」。ピノ・ノワールといえば鴨! がテッパンですから基本、合います。ですが、この豊かなカリ・ピノのために施された工夫が面白いものでした。

鴨はスモークすることで、アメリカンオーク樽の香りに寄せて、ドライフルーツのマンゴーやイチジクで、果実味の濃度レベルを合わせて……そして、ソースがすごい!

鴨といえばの“オレンジ”のニュアンスは、コアントローを使って。赤ワインヴィネガーと一緒に煮詰めたソースに変身していました。甘苦感と柑橘の酸のニュアンス。このソースがフックになって、ワインと料理をガシッと繋いでいました。

ほうじ茶のニュアンスでつなぐ、肉とカベルネ

最後にご紹介したいのは、カリフォルニアと言えばの、カベルネ・ソーヴィニヨン。

ウィリアム・ヒル・エステート・ワイナリーは、典型的なナパスタイルを保ちながら、ユニークなテロワールを最大限に生かし、クラシックとモダンを持ち合わせたワイン造りが特長とのこと。

この日提供されたのは「ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2014」。ナパ南東部のシルベラード・トレイルの畑に吹く冷風の影響から生まれる明るい印象の酸味と果実味。ナパのカベルネにしては、タンニンもやわらかく、軽やかでやさしいワインです。(カベルネがやや苦手な筆者も楽しめました 笑)

とは言え、コンポートにしたカシスの香りに、ベーキングスパイスやチョコレートなどの香ばしさがしっかりと感じられるカベルネ。合わせてクリエイトされたのは、黒毛和牛の一皿です。

「黒毛和牛 上クリ肉のロースト 黒トリュフ香るマディラのソース」。カベルネに牛肉のロースト、これもまた定番の組み合わせなのですが、興味深かったのは複合的に口内調味で現れたアロマ&フレーバーでした。

まず、ローストされた“クリ肉”。部位としては、牛の肩から前脚上部になります。運動量が多いため脂肪が少なく、ややしっかりとした赤身で、なんとも味が濃いのです。

この肉に、黒トリュフとマディラ酒のソース、そこに「ナパヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2014」が合わさると、甘味とうま味が倍々ゲーム! さらに、口内でフワーッと広がったほうじ茶のアロマがなんとも心地よい印象。

「マディラのソースが、ほうじ茶のニュアンスを持っていますからね」と、ニコラスMW。もっと骨格のしっかりした“パワー系カベルネ”なら、この心地よさは演出できなかったようにも思いました。

“サードウェーヴ”に踊らない、カリフォルニアワイン

健康志向による食のライト化や自然派といったトレンドとともに、カリフォルニアワインにも“サードウェーブ”と呼ばれる造り手が増えてきています。酸がキリッと効いていて、アルコール度数も低めで、じんわりとしたうま味を感じるワインが、私も個人的には好みです。

でも、現地アメリカでは旧来のイメージ通りの“ガツンとしたカリフォルニアワイン”が、メインストリーム。トレンドに敏感な一部の人を除き、人気なのはやはり、果実味やアルコールもしっかりとしたワインなのだそうです。

でも、濃醇なスタイルのワインでも、綺麗に鍛えあげられたパワフルボディは違う。一緒に食べるもので、その強さは相手を包みこむやさしさにもなる。そんなことを体験できたペアリング・ディナーでした。

要素が強くても、弱くても、大事なのは組み合わせの妙とともに、バランスを整えること。家庭料理、家飲みでもそれは同じですね。その視点さえあれば、いつでも、どこでも、食の楽しみは広がります。

【ワインに関するお問い合わせ先】
オリン・スィフト
ピーロート・ジャパン株式会社 カスタマーサービス tel.03-3458-4455

ウィリアム・ヒル・エステート・ワイナリー/マクマレー・エステート・ヴィンヤーズ
サントリーお客様センター tel.0120-139-380

【店舗情報】
Bistro BARNYARD Ginza
http://barnyard.jp/
〒104-0061 東京都中央区銀座1-8-19 キラリトギンザ 7F 
tel.03-6228-7400
営業時間 11:00〜23:00(定休日なし) 
客席数 110席

この記事を書いた人

佐野嘉彦
佐野嘉彦
留学先のスペインで、ワインと食に開眼! 食の専門誌の編集やワインスクールでの講師などを経て、現在はチーズ、ワイン、日本酒、ビール、コーヒー、パンなどをテーマとした企画や執筆、セミナーなどを展開中。

www.sembrar.jp