ワインブームも頂点に達し、ファンの夢は自分が蔵元になること。醸造することへの関心は高まっている。筆者は醸造を学べるコースとして人気がある、塩尻ワイン大学の二期生として合格し、入学する機会を得たことで授業内容にそっての体験レポート公開を許された。

日本酒とワインは似ていて違う

塩尻ワイン大学での学びも二年目になり、どうやら筆者も進級できたようだ。最初はついていけなかった講義も、資料を見ながら自力でも調べて、頭の中に少しずつ詰め込まれているような気がしている。秋には実際に収穫や醸造も経験し、酵母の働く環境について学ぶことができた。今後は、どのような温度管理をするかなど発酵時の環境を整えるやり方を覚えて、経験値を増やすことが重要になってきている。春の進級時に塩尻ワイン大学講師の高橋千秋先生から、日本酒とワインの醸造方法と香りの違いについて、非常に興味深い講義があったので書き記してみた。

塩尻ワイン大学の高橋千秋先生

塩尻ワイン大学講師の高橋千秋先生

何があって、何がないのか?

まず、日本酒を造るときに使う酵母とワインを造るときに使う酵母は、同じサッカロマイセスセレビジエという名前の酵母だけれど、性格が少し違う。たんぱく質が豊富に含まれる(アミノ酸の多い)お米に対して、葡萄にはそれほど多くのたんぱく質が含まれないから、アミノ酸の量が圧倒的に違う。従って、日本酒を作る時に使う酵母は、ワイン酵母よりアミノ酸の多い環境を好む。

しかしながら、日本酒つくりにおいても、精米して米の外側に多いたんぱく質を削っていく。清酒製造においては、精米のことを「米を削る」ではなく、「米を磨く」という表現をする。精米歩合とは、米の表層部をどれだけ磨いたかという事を表し、精米歩合70%という表記の場合は、玄米の表層部を30%磨いたということになる。

米の中心は澱粉質が多く含まれ、表層部は脂質、ビタミンやたんぱく質が多く含まれているが、これらの栄養素が多すぎると雑味が残り、お酒の香りが消されてしまう。しっかりと磨き上げたお米は華やかな香りが高く、すっきりとした味わいで軽い印象のお酒になる。

酵母にとっては栄養の少ない環境で働くことになり、酵母に大きなストレスがかかる。このストレスが実は重要で、さらに低温発酵することでストレスを与える、そうすることで酵母の代謝が変わり、香りや味わいを作りだすような成分のもとを引き出すことができる。

また精米歩合は、日本酒の香りに影響を与え、一般的に精米歩合が高い、つまりより磨いている方が、華やかな香り高い日本酒になるといわれている。反対に、精米歩合が低い日本酒は、華やかな香りは抑えられ、控えめな米本来の香りに仕上がる。なぜ精米歩合によって雑味に影響するかというと、お米に含まれる脂質の量が違うからである。脂質には、フルーティで華やかな香り成分を抑制する力があるのだが、米の表層部分にしか無いため、磨けば磨くほど脂質が減っていき、表層からおおよそ50%を磨くと脂質はなくなるとされている。

大吟醸の精米歩合が50%以下と定められているのには、香り成分を抑制する脂質を取り除くという意味合いがあるわけだ。精米歩合は香りと同様に、日本酒の味わいにも変化をもたらし、表層にある栄養素は、多すぎれば雑味の素になるが、適量であれば旨味の素になり得る。ワインと日本酒の勉強をするとき、ブドウにあってお米にないもの、お米にあってブドウにないものが何か? を考えながら、醸造を行うと面白さが増すのではないかと話していた。

日本酒造りに許される「アルコール添加」

日本酒は米、米麹、水だけを原料に造られたものと、さらに醸造アルコールが添加されたものと2種類ある。醸造アルコールは、主にサトウキビを原料として発酵させた純度の高いアルコールのことで、サトウキビ由来の香りや味はなく、クリアな味わいをしている。

香りと味の成分はアルコールに溶けるが、アルコールが17%程度の日本酒では、溶ける香りは限られている。香水など、アロマオイルの香りは高濃度のアルコールに溶けているが、低いと溶けない(水の占める割合が多い)。だから、酵母が生み出したフルーティな吟醸の香りは、お酒を搾るときにどうしてもその一部が酒粕(固体)の方に残ってしまう。

そこで香り成分が溶けていない醸造アルコールを添加することで、酒粕に残ってしまう成分が醸造用のアルコールに溶けることで、より香りを引き立たせることができる。一般的に香りが強くすっきりした飲み心地がするのは、純米酒より醸造アルコールが添加された大吟醸酒に多い。現代の酒造りにおいて、醸造アルコールの添加は主に香味調整のために行われている。

ワイン造りには許されない「アルコール添加」

一方、ワイン造りにはアルコール添加が許されていない。ワインにおいても、シェリー酒やポートワインなどのアルコール添加がされたワインが存在するが、これらは酒精強化ワイン(fortified wine;フォーティファイドワイン)と呼ばれ、通常のワイン(スティルワイン)とは異なる。醸造過程でアルコール(酒精)を添加することでアルコール度数を高めてあり、赤ワイン、白ワインともに作られている。

また、ワインをベースに各種スパイス・ハーブなどの蒸留酒や浸出液または果汁などを加えたものは、フレーバードワインとして区別されている。ワイン造りの場合は、果皮や皮との間の成分から出る味や香りを酵母が引き出すため、葡萄本来のポテンシャルが最重要になる。無いものを引き出すことはできないため、良い葡萄を造ることに集中し、あとは発酵させる温度と酵母選びに気を付けて管理する。

酵母もいろんな種類があり、能力が違うのだ。また、低温にすると出やすい香りもある。ワインの香りは、グラス一杯に約500種類ものさまざまな化合物が組み合わさっており、発酵中に酵母が生成する風味化合物をバランスよく管理できると良いのだが、なかなか難しそうだ。

海外で行われていた日本酒造り

日本酒とワインは同じく、醸造酒というカテゴリーになるが、何故このように高橋千秋先生が酒造りに詳しいかというと、もともと酒類総研出身の専門家であり、今まさに酒蔵をホノルルに創ろうとしているからである。

以前、酒蔵がホノルルにも存在したことを知っている人は少ないだろう。151年前、1868年(明治元年)から多くの日本人がハワイにサトウキビ畑などの労働者として移民したが、そんな移民者達はまるで奴隷の如く働き、その重労働の後に身体と心を癒すものとして日本酒が切望された。

当時は高価な輸入品である日本酒を買う余裕が移民者になかったので、安価に日本酒を提供したいと立ち上がったのが、明治時代にホノルル醸造を創立した広島県出身の事業家、住田多次郎氏である。しかしながら戦後は買収され、現在はハワイにホノルル醸造は存在しない。ホノルル酒蔵は1989年まで酒蔵を運営し続けていたが、宝酒造の子会社になったのだ。

悲しいことに、醸造所が閉鎖されたとき、タウンハウスのために破壊されて建物も残っていない。ホノルル酒蔵は、多くの日本酒関連商品のパイオニアであった。米国で最初の酒蔵ではなかったが、それらのどれよりも大きな影響があったのである。

時を超えて、令和元年。再びホノルルに酒蔵が誕生する‼️

場所も決まり、すでにweb siteもあるので是非、ご覧いただきたい。現在は製造免許の認可待ちをしながら最後の準備をしているとの近況を聞き、常夏の島で造られるお酒に今から思いを馳せずにいられない。

Islander Sake https://islandersake.com/(日本語のサイトも有り/右上のjpをクリック)

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islandersake.com 

参考資料;「The Passionate Foodie」 https://passionatefoodie.blogspot.com

この記事を書いた人

Misa "Pixie" Shimada
Misa "Pixie" Shimada
海外ワインオークション代理人として、ワインの個人輸入をサポートしながら、都内のワインバーやワインショップをプロデュース。
六本木にあるワインバーのチビッコマダムでもある。
2018年春に応募者多数で狭き門の塩尻ワイン大学二期生に合格し、現在は塩尻市に通いながら、葡萄栽培と醸造を勉強中。
近い将来にワイナリー創業を目指している。
落札代行「ワインオークションクリマ」http://www.climat.org/auction/

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