アルザス在住者として、アルザスでワイナリー巡りをしているのだが、アルザスワインは奥が深い。日本でも知られているアルザスワイナリーはあるが、それでも総合的に見てアルザスワインの認知度はまだまだな気がする。そんなアルザスには現在750ほどのワイナリーがあり、直接ワイナリーに行き、ワインイベントなどでワイナリーの方と話し、彼らのワインに対する想いや哲学を教わることもある。そんなアルザスワインを少しでも多くの方に知ってもらいたいと思っている。

日本でも「家飲み」でアルザスワインを買ってもらいたい

今回はあのビオデイナミの1人者で、アルザスのワイナリーでは日本でも有名なマルクテンペ(Marc Tempe)さんの訪問リポートをお送りしたい。

こちらの訪問は実は2020年のフランスロックダウン前のことだった。その後ロックダウンもあり、世界が穏やかになってから、と思っていたのだが、フランスはまた新たなロックダウンになってしまった。

アルザスも、フランス全土のワイナリーも販売に影響が出ていると思う。そんな状況を少しでも改善できるよう、日本でも「家飲み」でアルザスワインを買ってもらいたいと、こちらのレポートをお送りしたいと思う。

マルクテンペワイナリー 

共同ワイナリー生産者の家庭に生まれたマルクさんは元々INAO(フランス原産地呼称国立研究所)のテクニカルアシスタント、奥様のアン・マリさんはワイン、スピリッツの販売をしていたが、1993年にご両親が引退し、そのぶどう畑を借り入れたところから彼らのワイン作りが始まり、1996年にビオディナミ農法での生産に移行。

マルクテンペワイナリー 

実は以前にも仕事でワイナリーに訪れたことがあり、昨年日本で開催されたワインイベントでもお会いし、その後改めてワイナリーにお伺いさせて頂いた。

実は私は車の運転ができない。そこで、ストラスブール(Strasbourg)から電車で15分ほどのSelestatという駅まで行って、マルクさん自ら迎えに来てくださった。セレスタ(Selestat)からテンペさんのワイナリーまでは車で20分ほど、ツェレンベルク(Zellenberg)という村にある。

セレスタ駅 

まずはワイン生産になにより大事なぶどう畑へ案内してくれた。ビオデイナミはワインそのものの生産ではなく、ぶどう畑の栽培方法でもあるので、やはり畑を見ることは大事なことだ。

彼のワイナリーは観光で有名な村、リクヴィール(Riquewih)から1km離れた、ブドウ畑の海に囲まれた丘の上にある小さな村、ツェレンベルク(Zellenberg)に位置する。ブドウ畑は、サンティポリット(St Hippolyte,)、ユナヴィル(Hunawihr)、ツェレンベルク(Zellenberg)、シゴルスハイム(Sigolsheim)、キーンツハイム(Kientzheim)の各自治体に広がる約30の区画で構成されており、その土壌の豊かさと性質、およびその微気候の多様性により異なる。土壌が大切だと言う事が分かる。

ブドウ畑
 
ブドウ畑
 

実は、新型コロナウイルスが流行り、外出禁止になる前のちょっと寒い時期にお伺いしたので、ぶどう畑の景色は寂しかったが、隣の畑との違いなども分かり、ワインの美味しさは、まずは畑に、そしてぶどうにあるというのが良く分かった。だからこそ、天候にも左右され、その年ごとに収穫も異なり、ワインの味にも影響する。品種名を表に出しているのが特徴のアルザスワインにとって、土壌の影響はなおさら大きい。

マルクさんが車を走らせながら「ここの土壌は…」といろいろ土壌の話をしてくれた。

ブドウ畑 

畑を見ながら土壌や畑、天候の説明してくれるマルクさん。

マルクさん 

ビオデイナミ製法をしているこちらのワイナリーでは、自家製肥糧も使っているという。

ビオディナミは、単なる技術ではなく、生命の哲学だと言う。それは、純粋な品質と健康の主権である自然によって決定され、この穏やかな方法は、農薬、合成化学物質、除草剤を駆除し、ワイン生産者や農業において、大地と空の間の生活環境というグローバルな状況を考慮している。

植物の自然耐性を強化し、植物を保護するために、月と惑星の暦に従って、肥料に植物、動物、ミネラルのハーブ類を材料として使用される。また、ぶどうのつるの根を深く育てるために、耕作をし、特定の調合剤を使用している。

ワイナリー
 
ワイナリー
 
調合剤
 

倉庫には多くのワインが並んでいた。実は以前2年前に仕事で訪れたことがあるのだが、その時はほぼ全てのワインが輸出されており、この倉庫には全くワインが残っていない状態だった。80%以上が海外輸出されており、実はなかなかフランス、アルザスでは手に入らないワインでもある。

ワイナリー 
 

醸造
圧搾機でブドウを丸ごとゆっくりと圧搾することにより、破砕、澱および雑味を大幅に制限することができる。各圧搾は最低6時間かけて行われる。

・澱静置:ぶどう果汁に亜硫酸、酵素、ベントナイトを添加せずに、沈殿させるため一晩静置。翌日澱と果汁を分ける。澄んだ果汁は発酵のため木製のフードルという大きな樽に入れていく。
・特定のヴィンテージでは、フードル(ブルゴーニュの樽)または古樽での発酵と(18〜24か月以上)熟成させる。
・瓶詰めは軽く珪藻土を通して濾過、または特定のキュベは濾過なしで行う。
・全ワイン醸造工程において添加物(酵母、補糖、酸など)は入れていない。瓶詰めの際少量の亜硫酸を添加。


 

こちらがカーヴ。全て木樽で熟成させる。

木樽 

樽にはこうしてチョークで今入っている品種などが書かれている。これはその年によって収穫量も変わるので、使用する樽が変わるからだ。

木樽
 
木樽
 

小さな樽が並ぶ中、そのキュヴェの中にはアジアのお金持ちの方がキュヴェごと購入して、ここで熟成させているものもあった。どんなお金持ちの方なんだろう…。

こういう個人ワイナリーでは、そんな風に特別キュヴェを作ってくれるワイナリーも少なくはない。日本用に、アッサンブラージュをお願いするインポーターさんなどもいるという話も他のワイナリーで聞いたことがあるが、個人の方がこうしてキュヴェ買いをする話は初めて聞いた。流石マルクさんのワインだ。

木樽 

マルク・テンペさんのワインテイステイング

マルク・テンペさんのワイン 

そして今回のテンペさんのワインテイスティングの数々。彼のワインは日本でも有名で、本当に美味しいワインを作られる。

テイステイングではあるが本当にマルクさんが言うように「これは吐き出したら勿体ない。」ワインも多い。そのうちの幾つかをご紹介したい。

マルク・テンペさんのワイン 

ゼレンベルグ村VILLAGE DE ZELLENBERG
石灰岩の砂岩の突起の周りに集まるブドウの木は、濃い灰色の片岩マールからなるリアスの粘土-石灰のテロワールに植えられ、それは細かく白い石灰岩の床、および炭酸塩や鉄のモジュールだ。ワインは、そのフルーティーさと幅広さが特徴。その豊かさが熟成に優れている。

VILLAGE DE ZELLENBERG 

オ・リュ- ライムルスベルグHAUT-LIEU RIMELSBERG
  位置:リックヴィール(Riquewihr)とユナヴィル(Hunawihr)の間、グランクリュ シュナンブール(Grand Cru Schoenenbourg)の延長。
テロワール:下層土は石灰質に粘土が含まれており、非常に栽培が早く、太陽を多く浴びている。照射は南東向きの丘の中腹。

HAUT-LIEU RIMELSBERG 

グラン・クリュ マンブールGRAND CRU MAMBOURG
面積:0.66ha(リースリングとゲヴルツトラミネール)
特別なテロワール:丘の中腹の南向きのマンブールは、シゴルスハイム(Sigolsheim)を見下ろしている。それはアルザス平野で最も先進的な丘の中腹の1つで最適な日照時間の恵みを受けている。カルシマグネシウム土壌は、石灰岩‐礫岩と丘陵の第三紀泥灰質によって成り立つ。また、低収穫量をして品質を維持。
特権のあるブドウ品種であり、何よりもゲヴェルツラミネールで有名。ピノグリ、ミュスカ、リースリング。

鑑定家の記憶によれば、歴史的に783年には既にSigoltesberg(シゴルテスベルグ、今日のマンブール)のワインは多くの修道院や領主が所有していたお陰で高級品だとみなされていた。
典型的な品質:マンブールのワインは非常に独特で、素晴らしい調和と長期熟成にある。エレガントで素晴らしい巧があり、パワフルなアロマが非常に長く続く。

GRAND CRU MAMBOURG 

こちらが今回飲ませて頂いたワイン。テイステイングはテンペさんも一緒飲まれるので、テイステイングと言うよりは一緒にワインを飲んで楽しい時間を過ごさせて頂いた。

今回飲ませて頂いたワイン 

実は今回の訪問は、春に予定していた日本からのワイン業界でも有名な方へのアルザスワイナリーツアーの予定を立てるために訪れていたのだが、緊急事態宣言、外出禁止令などで全てキャンセルとなってしまった。

実はその時に改めてゆっくりテイステイングさせて頂く予定で、そのワイナリーツアーではマルクさん宅で夕ご飯をご一緒させて頂きながら、ワインを楽しめればという企画を一緒に立てていた。そんな素敵な企画も、キャンセル(保留)となってしまったので、残念だ。
【※もちろん、実はこのワイナリーツアーはかなり特別なワイナリーツアーだったので、誰でもがそんな企画ができるわけではないことはご了承下さい。】

マルクさんは、遠く日本や海外からいらした方がいると、旅行で来られているので多くのワインは購入できないと知りつつも
「せっかく遠くから来てくれたんだから」
と快く迎えてくれる。

それはアルザスのカーブでワインを沢山買って帰れなくても、また日本で買ってもらえればという思いもあるそうだ。

ほぼ輸出されてしまうと言う親日家のマルクさんのワインはその気さくな性格が日本での多くのファンを持つ理由でもあるだろう。

フランスは二度目のロックダウンで、日本も含め今年は本当に大変な年だったと思う。そんな時期だけれど、家飲みワインを楽しんで頂ければと思う。

この記事を書いた人

Coquelicot
Coquelicot
元フランスのワイン展示会運営会社勤務。フランス、アルザス地方在住10年以上、アルザスワインを極めるべく、アルザスで訪れたアルザスワイナリー100軒以上、テイスティングは200軒以上。
インスタグラム coquelicots00