冷涼な土地でのブドウ栽培をこころざし、カリフォルニアはサンタ・リタ・ヒルズを拠点とするエステート「メルヴィル ワイナリー」。自社のブドウ畑でつくったブドウのみをつかい、自然なブドウ、自然なワインを生産するこのワイン生産者(グロウアー)のチャド・メルヴィルが、サンタ・リタ・ヒルズのワイン造りを語った。

メルヴィル ワイナリーのチャド・メルヴィル氏

海から10マイル

「メルヴィル ワイナリー」が注目し、1997年より拠点とするAVA、サンタ・リタ・ヒルズの特徴は、海と山にある。アラスカから南下する冷たい海流によって冷やされた海風が、アメリカでは非常に例外的に東西に伸びる山脈のおかげで内陸に吹き込み、気温は高くて華氏70度(摂氏21度)、低くて華氏50から55度(摂氏10から12度)と非常に涼しい状態で安定している。この気候条件が、シャルドネ、ピノ・ノワール、シラーに最適なのが、メルヴィル ワイナリーがこの地を選んだ大きな理由だという。

この土地は太古の時代には、海の底だった。つまり土壌は砂のようで栄養に乏しく、水はけがよいため、水がたまらない。珪藻土もゆたかで、カルシウムなどミネラル分は豊富。チャド・メルヴィル氏はこの土をして、シャブリのキンメリジャンとにているとおもう、と語る。

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説明に使用されたスライドより、ワイナリーの珪藻土

No manipulation 余計なものを加えない

涼しい風、栄養にとぼしい土壌。メルヴィルのブドウは、この厳しい環境で15年から20年育ってきた。くだもの全般にいえるけれど、こうした極限環境では、くだものの樹は、自身の生長より、子どもである果実の成長に、よりおおくの栄養、エネルギーをふりわけるから、果実の質がたかくなる。

ただし、メルヴィルは、余計なものを加えない、「No manipulation」の哲学で、自然なブドウ栽培を基本としているため、ブドウの樹のストレスはおおきい。そのブドウのストレスを緩和するため、畑にはカバークロップとよばれる、ほかの植物、メルヴィルでは豆類をうえる。カバークロップは8から9か月、自然に育ち、夏ごろ、自然に枯れる。この間に、カバークロップは、空気中の窒素を根に蓄積。葉が枯れることで、残された根が土中にのこって肥料となるという。

栽培面積は120エーカー。16種類のピノ・ノワール、9種類のシラー、6種類のシャルドネを育てる。いずれも低収量でブドウの栽培時間もながくとる。そして、それぞれのクローンを場所をわけて栽培し、醸造の際にも、樽で熟成する際にも、土地や品種を混ぜずに、こまかくわかれたままにする。

全房発酵のオーケストラ

ブドウの実を房からとらず、房ごとつかう、全房発酵を積極的におこなうのもメルヴィルの特徴。畑では30人のスタッフの2カ月にわたる手作業でブドウの葉をおとして日当たりと風通しを調整し、ぶどうのくき(果梗)まで充分に成熟したものは、全房発酵にむけられるという。

こうして、それぞれ、土地、品種、全房発酵か否か、など、こまかな属性別にワインの素たちがわけられる。チャド・メルヴィル氏はこれを「楽器のよう」という。最終的な製品づくりは、楽器を組み合わせてのオーケストラというわけだ。

試飲に供された6種類のワインのうち、3種類は「オーケストラ」、そして3種類は「楽器」だった。オーケストラ、すなわち製品のうちで2種類は、全房発酵のものをふくむ、ピノ・ノワールのワイン。メルヴィルでは新樽をつかわず、10年から15年樽をつかうので、樽の味はでないというが、タンニンに富み、果実味とともに、お茶や海藻などをおもわせる風味をもつ、複雑な味わいだ。

そして「楽器」の状態の3種類はバレルサンプル。つまりまだボトリングされていない、4か月前までは、まだフルーツだった新ワインたち。製品としては、わずか350ケースしかできないという白ワイン「イノックス クローン76」は2017年5月、 アイコニック ワイン・ジャパン が輸入し、日本に初登場する予定。ユニークな白ワインをお探しの向きには、ぜひ注目してもらいたい1本となりそうだ。

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説明に使用されたスライドより、メルヴィルのシャルドネのうちの4種。一番左の小さいシャルドネがイノックス クローン76に使用される

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今回の試飲ワイン。左から
イノックス クローン 76|Inox Clone 76
3つのキュベをつかってできるワインだが、今回はバレルサンプルとあり、そのうちのひとつのキュベのもの。房のちいさなぶどうからつくられ、レモンをおもわせる目の覚めるような酸味と、海の潮のような香りが特徴的

メルヴィル セレクション|Melville selection
メルヴィルが厳選したウェンテと近い品種のシャルドネをつかった白ワイン。今回はバレルサンプル

ハンゼル セレクション|Hanzell selection
ソノマにあるハンゼルという畑からわけてもらった、カリフォルニア最古のシャルドネ品種を使ったワイン。今回はバレルサンプル

エステート シャルドネ ’13|Estate Chardonnay ’13
メルヴィルの全14エーカー、6種類のシャルドネがすべて使われている、白ワインのオーケストラ。製品版

エステートピノ・ノワール ’13|Estate Pinot Noir ’13
複雑なタンニン。茶、海苔、海藻のような、海を感じさせる風味を持つ。80エーカーの畑で、16種類のクローンを、22ブロックにわけて栽培。収量の約40%が全房発酵にむけられる。178の発酵容器(1容器0.5トン)をもちいて、ひとつひとつの畑の味を感じ、これをまとめあげることで完成するワインだという。6,000ケースの生産量で、メルヴィルとしては最大ボリューム商品。ほかのワインにもいえるけれど、ブドウの品質をたもつため、ブドウは寒い夜(24時ごろ)から収穫をはじめるという。

ブロック M ピノ・ノワール ’15|Block M Pinot Noir ’15
メルヴィルで、わずか5エーカーの丘の頂上に位置する特別な畑、”Block M”で育てられた2種類のピノ・ノワール(クローン115を50%、クローン114を50%)をつかったワイン。粘土質の土地で、丘の上とあって、さらに冷涼な風にさらされ、果実の味は凝縮する。80%が全房発酵。

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WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
ワインと食のライフスタイルマガジン「WINE-WHAT!?」編集部です。
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カリフォルニアに行って、サステナビリティとはなにか? を勉強してきましたので、最新情報をお届けします。
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