祖父ロバート・モンダヴィ。父ティム・モンダヴィ。ワイン史にその名を刻むモンダヴィ一族の第4世代、カルロ・モンダヴィ氏が来日した。弟であるダンテ・モンダヴィ氏とともに創設した、ピノ・ノワールで生み出すワイン、「RAEN(レイン)」について語るために。

世界に通用するカリフォルニア産のピノ・ノワールを造りたい

気さくで魅力的な青年、カルロ・モンダヴィ。プロのスノーボーダーでもあった

「RAEN(レイン)」は、カリフォルニアワインの父と呼ばれるロバート・モンダヴィを祖父に、「コンティニュアム」のティム・モンダヴィを父に持つサラブレッド、カルロ・モンダヴィとその弟、ダンテ・モンダヴィが2013年に設立した、ピノ・ノワールでワインをつくるワイナリーだ。

2004年以来、モンダヴィ ファミリーはピノ・ノワールのワインをつくることはなくなった。2005年に立ち上がった「コンティニュアム」ではカベルネ・ソーヴィニヨンを主体とした、ひとつの赤ワインしかつくらない。コンティニュアムの創立から10年弱。カルロは、ソノマ・コーストにて、冷涼で、ピノ・ノワールを造るのに素晴らしくよいテロワールと出会い、ピノ・ノワールでワインを造りたいと父に語り、説得した。

レインのワインの原点は、1960年代、70年代に、ロバート・モンダヴィ、ティム・モンダヴィが生み出したカリフォルニア産ピノ・ノワールのワイン。カルロは、ブルゴーニュで働いているときに、1974年と1978年の「ロバート・モンダヴィ」のピノ・ノワールをフランスに持ち込んだのだけれど、これをブラインド・テイスティングで口にしたひとびとは、「これはオールドワールドのグラン・クリュだ」と評したという。

自分たちも、世界に通用するカリフォルニア産のピノ・ノワールを造りたい。若きモンダヴィ ファミリーのそのおもいが、レインの原点。レインのワインはモンダヴィ家のピノ・ノワールなのだ。

3つの畑 3つのワイン

レインは現在、ソノマ・コーストの3つの畑と契約している。ゆくゆくは自社畑化を目論んでいる。

約2.6ヘクタール、太平洋から6キロメートルほど内陸にはいった畑、約1.5ヘクタール、標高は500メートル弱にして、太平洋からは3キロメートル以下という畑、そして、約0.5ヘクタール、やはり太平洋からは約6キロメートルほどの畑の3つだ。

レインが現在展開するのは、この3つの畑、それぞれのピノ・ノワールを使った3つのワイン。


最初の畑のブドウで造られたワインが、「レイン ソノマ・コースト ロイヤル・セント・ロバート キュヴェ・ピノ・ノワール」(希望小売価格10,500円)、つぎが「レイン フォート・ロス シーヴュー ホーム・フィールド ピノ・ノワール ソノマ・コースト」(同16,000円)、3つめが、「レイン フリーストーン・オクシデンタル ボデガ ピノ・ノワール ソノマ・コースト」(同16,000円)。

生産量は12本1ケースの計算で、それぞれ800ケース、275ケース、125ケースとごくわずか。日本では、Wine In Styleが輸入し、「レイン フリーストーン・オクシデンタル ボデガ ピノ・ノワール ソノマ・コースト」の2015年ヴィンテージの日本割り当ては30本のみという稀少さだ。

水の錬金術 ピュアなワイン

この稀少さは、その生産方法にも由来するのかもしれない。カルロは、ロバートとティム・モンダヴィから受け継いだ、すぐれた土壌、気候、ノウハウがあれば、そして、畑のケアを入念におこなえば、よいワインができるという信念をもっている。ゆえに、可能な限り自然なワイン、あるいはピュアなワインを生み出そうと努めている。イーストはくわえない。

「僕の父親はこういったんだ。ワインほど、自然な飲料はない。水の錬金術なんだって。大地に雨が降る。その水が土に、岩に染み込み、ブドウの木が育ち果実がなる。ブドウの果皮には、土であるとか、花粉であるとか、自然にある様々なものが付着する。たくさんの、自然のイースト菌がいるんだ。8月、9月に特に手をくわえなければ、夏の暑い日ざしのもと、鳥がブドウをついばんで、果皮がやぶれ、イースト菌と果実がふれあい、自然にワインになる」

レイン(RAEN)という名前は、「Research in Agriculture and Enology Naturally」の頭文字をとっているそうなのだけれど、同時に、自然の水=雨のレイン(RAIN)ともかけている。畑は、自然の生態系を重視し、畑のなかで生態系が完成する「パーマカルチャー」とよばれるデザインを理想としている。

香り、そして味

カルロがワインにとって一番大切なものと考えるのは、香り。フランスでの体験から、全房発酵のワインの香りのよさにつよく惹かれた。レインのワインは、75パーセント以上、全房発酵のワインを使用する。全房発酵によって、発酵に時間はかかるけれど、発酵時の温度がさがる。これで香りが残りやすくなるという。デリケートなワインの香りを邪魔しないようにと、新樽も最大で10パーセント程度しかつかっていない。バラの花びらやグリーン・ティーのような香りが感じられるようになる、とカルロはいう。事実、それは3つのワインに共通する特徴だった。

また、地域的な特徴として、カリフォルニアは日照時間、量ともにおおいため、果実は甘くなりやすく、ワインにすると、果実味、甘さが勝ちやすいけれど、全房発酵のおかげで、果実味、なめらかなタンニン、ミネラリティがひとつにまとまるという。

さて、かくしてうまれた3種のワイン、いずれもが極めて上品。充実した内実をもった美しさとでもいうのか、薄っぺらさとは正反対の華やかさだ。そのなかで「セント・ロバート・キュヴェ・ピノ・ノワール」は、公式にも「松ヤニ、タイム、森林の土、砕いた岩のニュアンスが感じられる」とあるように、3つのワインのなかでは、スパイシーで力強い。もっともよくテロワールを表現している、とカルロが語る「ホーム・フィールド」は、果実の華やかさ、きめのこまかなタンニン、酸味、余韻と、いずれの側面においてもデリケートで、とりわけエレガントな印象。「フリーストン・オクシデンタル」は、野生のダーク・ベリーのような果実味に、塩や砂といったニュアンスも感じられて、まろやかで凝縮感もつよい

レインのワイン、いずれを選んでもけっして期待を裏切られることはないはずだけれど、コルクを抜いたらそのコルクにも、ご注目いただきたい。ブドウを収穫したときの収穫日、時間、そして月の満ち欠けが記されているのだ。「いまはまだ、こうといいきれるものではないけれど……」と前置きしてから、カルロがいうには、こういった環境がワインにどう影響してくるのか、データを蓄積することが目的だという。

「何事も心をこめ、魂をこめてなすべし」とカルロの祖父 ロバート・ジェラルド・モンダヴィ(R.G.M.)はいっていたという。ボトルネックに「R.G.M. HEART & SOUL」と小さく書いているところに、カルロ、そしてダンテの真摯なワイン造りへの情熱がよくあらわれているように感じられる。

コルクに書かれた、ブドウの収穫時間と月齢

ブドウの収穫日。MMVXで2015年。AUGなので8月

日付。XIXで19日

ネックに貼られたラベルに記されている、R.G.M. HEART & SOUL

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WINE-WHAT!? 編集部
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