ブルゴーニュのワインが高騰している今、ワイン業界の熱い視線を集めているのがバローロだという。なぜいま、バローロなのか? 改めてバローロの魅力とそのワイン造りの現在を探ってみようと思う。

ブルゴーニュが高騰した理由

ブルゴーニュはボルドーなどに比べて、産地全体の面積も各生産者が所有する畑も狭い。知名度が高いのに、たくさん生産することができないため、需要に対して供給不足になりやすい構造が、もともとあると言っていい。

だから、価格は他地域に比べて、昔から割高な印象はあった。ブルゴーニュの「ロマネ・コンティ」がボルドーの「シャトー・マルゴー」より取引価格が高くなるのは、生産量が少なく手に入れづらいということが、その大きな理由だ。

現在、ブルゴーニュワインの高騰が続いているのは、2013年と2016年のブドウの不作が、原因の一つであることは間違いないだろう。

フランスに住むソムリエで読者ライターでもある染谷文平さんが、「ブルゴーニュ2016年の畑の観察報告」でレポートしてくれたように、春の異常天候で収穫量は少なくなったが、夏~秋は穏やかで日照時間も多く、良い条件が続いたためにぶどうの成熟は進んだ。つまり、2016ヴィンテージは例年以上に味は期待できる。ということは、ますます需要は高くなることが予想されるわけで、しばらく高騰が止まることはなさそうに思える。

バローロに注目が集まる理由

ブルゴーニュは飲みたいけど、これ以上高くなってはさすがに手が出ない、というワイン通が、注目しているのがバローロだという。

バローロの名前は、ワイン通でなくても名前ぐらいは聞いたことがあるのではないだろうか。イタリア・ピエモンテ州のバローロ村とその周辺で生産される、DOCG規格の赤ワインだ。フランスにおけるボルドーやブルゴーニュのように、イタリアを象徴するワインのひとつで、「王のワインにして、ワインの王」と称され、世界中がその素晴らしさを認めているワインなのだ。

ブルゴーニュ同様、すでにブランド化しており決して安くはないのだが、その知名度や評価の高さに対して、価格は比較的安定している。バローロが、いま注目される理由のひとつは、そんなところにもあるのだろうと思う。

価格の安定は、生産量がそれほど変化しないからこそ。つまりは多少の天候や環境の変化に負けない技術力や品質管理能力を、バローロの生産者たちが持っていることの証明でもある。先日、バローロの試飲会をギンザシックスで開催したエノテカの担当者も「長年、ひたすらに真摯なワイン造りを守り続けているバローロ生産者たちの努力の賜物です」と語る。

改めてバローロの歴史を知る

バローロの地図

バローロの地図

 

最初は甘口ワインの産地だったという。

それが醸造技術の進歩などのおかげで、19世紀中頃に辛口のバローロが誕生する。人気が高まるのはその後。ついに宮廷でも供されるようになり、「王のワイン」の地位を築いていく。

しかし、昔も今も、時代の変化に合わせてワインの嗜好も変化していく。技術も進歩し、醸造法も変わっていく。昔ながらの製法にこだわるバローロは、次第に「時代遅れのワイン」になってしまう。市場が求めるワインと乖離してしまった結果、人気も売上も低迷することになる。

そこで「モダン派」が登場する。状況に危機感を持った一部の生産者が、当時の新技術である「グリーンハーベスト(菓房の間引き)」や「ロータリーファンメーター(回転発酵槽)による短期間でのマセラシオン」「バリック熟成」などを導入し、当時人気の高かった果実味豊かな飲みやすいスタイルのワイン造りを始める。これが成功し、アメリカを中心にモダンバローロが世界を席巻する。

しかし、一方で伝統を重んじる生産者との間に軋轢を生むこととなり、モダン派と伝統派の間で、消費者も巻き込んでの大論争が起こる。モダン化の弊害もあった。似通った味のバローロが増えてしまったことで、消費者は次第に飽き始める。

時代のニーズに合わせることで、復活したかに見えたバローロは、再び危機を迎える。伝統を守るか、時代のニーズに合わせるかという二元論では、真の成功にはたどり着けないという教訓でもあったように思う。

その後、バローロの生産者たちは、画一性からの脱却を図り、新たな局面へと進む。モダン派は原点回帰へ、伝統派は最新技術導入へ、二元論にこだわるのではなく、それぞれの品質の向上にしっかりと向き合い始める。テロワールを重視する「クリュ・バローロ」の流れにも注目が集まるなど、地域によって、畑によって、生産者によって、さまざまな味わいが楽しめる個性豊かな生産地へと進化した。

モダン派と伝統派の流れはいまも存在するが、この2つだけで語ることは今は不可能だ。バローロはすでに新たなステージに上っているのだ。いまバローロから目が離せなくなっている本当の理由はそこにある。

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WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
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