カリフォルニアワインのキーワードとして、つくり手のあいだで普及しているのが「サステイナブル」という言葉。
基本にあるのは、環境を保全しながら、末永くワインをつくろうということだけれど、真面目なワイン造りが、プラスαの価値をもちはじめている。
具体策についてはこちらを参照してください。

 

ナパ・グリーンとFFF

ナパの街から北にむかって10kmほどドライブすると、もうそこからは、ブドウ畑が視界に入らないことはないというくらいに、ワインブドウ畑がどこまでもつづいてゆく。そんな景色も氷山の一角。615,000エーカー、約2489平方キロメートルのワインブドウ畑がカリフォルニア州にはあるという。

カリフォルニア州は、州をひとつの国と考えた場合、イタリア、フランス、スペインについで世界第4位のワイン生産量を誇るワインの国で、全米の約85パーセントのワインが生み出されている。

この巨大なワイン業界は、農業先進国アメリカで、いちはやく「サステイナブルな農業」にとりくみ、注目され、参考にもされている業界でもある。

サステイナブルな農業という言葉が耳慣れないならば、100年後もそこで子孫が農業を営めるように営む農業、といいかえてもいいかもしれない。乱開発をおこなって、河川に土を流出させた結果、水が汚れ、サカナが死に絶えたりすると、漁師の生活が脅かされ、近隣の住人との関係も悪化する。従業員の待遇が悪かったり、地域に利益を還元しない、などというようなこともよくない。これでは、そこでの農業は100年つづけられない。

カリフォルニアでは、ワインブドウ畑とワイナリーが急増した1990年代がサステイナブルなワイン造りを意識化するタイミングだった。たとえば、カリフォルニアは長年、水不足に頭を悩ませているけれど、タンクの洗浄などでワイナリーは水をたくさん使う。こんどできたワイナリーは水を無駄づかいしているのではないか? と、そんな疑念が地域に住む人のあいだにうまれもした。

CSWAのリサ・フラチオーニさん。手にしているのは、サステイナブルな活動のためのガイドラインが記された「業務便覧(コード)」。

「とはいえ、カリフォルニアのワイン造りはもともとサステイナブルであることを指向していたんです」

というのは、カリフォルニア州のワイナリー団体とワインブドウ生産者団体が提携して2003年に設立した団体「カリフォルニア・サステイナブル・ワイングローイング・アライアンス(CSWA)」のリサ・フランチオーニ・ハイさん。こうみえて職歴12年、学生時代もサステイナブルな農業について勉強して修士をとったベテランだ。

CSWAは、畑やワイナリーが実践しているサステイナブルな農業のための努力を、きちんとした基準でもって評価したり、あるいはそういう努力をもっとしていきたいワイナリーや畑を指導する、第三者機関のひとつだ。

ひとつだ、というのは、州全体を対象としたCSWAのほかにも、ローダイ地区やナパ地区、セントラルコースト地区など、おもたるワイン生産地にはサステイナブルなワイン造りのための団体があり、さらに水や動植物の保全を目的とした団体や各種プログラムも存在し、ワイン造りと関係しているからだ。また、オーガニックやビオ・ディナミの認証団体も、広義にはサステイナブルなワイン造りの推進と無縁ではない。

この看板は、パナ川の水と生態系を壊さないようにしているプログラム「ナパ・グリーン」と、水質と魚の保護を趣旨とする認証団体FFF(フィッシュ・フレンドリー・ファーミング」の2つの認証を得ていることを示している。FFFには、ナパ、ソノマ、メンドシーノのほか、ソラノ、エルドラドのワイナリー、畑が参加している。

ナパ地区のプログラム「ナパ・グリーン」であれば、ワイナリーの活動が、ナパ河の水と生態系を壊さないようにすることが重要視されている、など、地域ごと、プログラムごとに個性があるけれども、これらの団体の基本的な考え方は共通している。

ワイナリーやワイン畑の経営、運営、管理には、もちろんそれぞれの会社や技術者のノウハウがある。しかし、地域環境を考えた場合、自然はつながっているから、ここからここまでがA社の責任、ここからはB社の責任と、簡単に切り分けることはできない。

水を節約する技術、薬品をつかわずにブドウを育てる知恵、電力消費を減らすための方策といった知見を共有し、従業員や周辺コミュニティとの良好な関係性の構築や、動植物との共生といった問題を、各ワイナリーや畑の個別の問題としないことが、これら団体に共通する基本的な考え方だ。

さもなくば、おいしいワイン造り以前に、カリフォルニアのワイン造りというビジネスが歴史と伝統のあるものにならない。

運命共同体

CSWAにかんしていえば、2002年に、州内各地で実践されていたサステイナブルな活動をまとめ、誰もが閲覧できるガイドラインとした書物「業務便覧(コード)」を作成。以後、改定がなされて現在は2015年に更新された第3版が使用されているけれど、ここには140の畑での実例、104のワイナリーでの実例が、テーマごとに記されている。また、毎回テーマをもうけての勉強会も2002年以来550回以上開催している。

さらにCSWAでは、「カリフォルニア・サステイナブル・ヴィンヤード&ワイナリー認証(CCSW)」という認証プログラムも2010年に立ち上げていて、2016年では、カリフォルニア全体の18パーセントのワイン畑と全生産量の65パーセントのワインがこの認証を獲得した。認証まではとっていないけれど、CSWAの「コード」を利用して自己改革を実践しているワイナリーや畑は全体の約70パーセントにおよぶ。

ナパ・グリーンのプログラムについて説明してくれたのは、ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズのミッシェル・ノヴィさん。ナパ・グリーンも多くの団体、プログラムと協力関係にある。

前述のとおり、カリフォルニアにはCSWA以外の認証プログラムもあるし、ひとつの畑やワイナリーが複数の認証をとることもできる。

ナパ地区では、全435軒あるワイナリーあるいはワインブドウ畑の半数がナパ・グリーンの認証プログラムに参加していて、2020年までにこれを100パーセントにするという目標がナパ・グリーンにはある。

まとめてみると、カリフォルニアのワイン業界の過半数が、なんらかの、サステイナブルな農業のプログラムにかかわりをもっていて、その数は今後さらに増える見込みなのだ。そして、昨年末、CSWAがまとめたところによると、いまやアメリカのバイヤーたちの73パーセントが、どうせなら、サステイナブルワインを仕入れたいと考えているとのことで、そもそもは販売上の付加価値としての活動ではないものの、結果的に市場での競争力まで獲得した。2018年にはCCSWのロゴをつけたワインが市場に登場する見込みだ。

もはや、カリフォルニアワインとサステイナブルなワイン造りは切っても切り離せない。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
9月号(通巻18号)では、白ワインに注目! そもそも白ワインって? 三大品種シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングの基礎から、いまどき大討論会、石田博ソムリエによるペアリング提案まで、この夏、飲みたい白ワインを総ざらい。
そして、夏から秋にかけてのワイン旅も提案。ポルトガル現地取材、急成長中の北海道ワイナリーのいまとWINE-WHAT!?ならではのツアー情報、ワインを堪能できる宿「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」へは、ベントレーで訪れ、カリフォルニアでは、ケンゾー エステイトに行ってきました。