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ワイナリーの対岸にそびえる難攻不落の岐阜城のみならず、岐阜の山々はどれも峻険。関東平野に住む者の目には異様に映るほど、川のすぐ側から山がせりあがっています。ようするに、岩が固いということでしょう。

それが長良川によって削られ、川辺に積もったのが、岐阜市のワイン畑の土壌。まるで海岸のような極めて細かい粒子の砂を主体に、石英や片岩の粗砂や礫が混じっています。たとえて言うなら、イタリア北部のヴァッレ・ダオスタみたい。すっきりさっぱりしてなめらかな質感のワインができるだろうな、と想像します。

実際にワインを飲めば、これが想像以上!

淡雪の口どけの静かさ、やさしさ、そして清涼な柔らかさ。ここまで邪念やそろばん勘定を感じさせないワインは珍しい。換言するなら、自意識に溺れず肩肘張らない味。最良の意味での普通な味です。

そもそも普通の住宅地の中にある普通の民家にしか見えないワイナリーです。3代目となる林 真澄さんは、若いころワイナリーを継ぐ意思がなかったようでデパート勤務。先代が急死した時に廃業するつもりだったところ、お客さんの懇願によってワインの世界に足を踏み入れたと言います。
「ワイン造りは父子伝承。他の人のことは知らないし、他の蔵のワインは飲まない。だいたい最近ワイン飲むと酔っ払うから焼酎にしている」。

こういうサラッとした姿勢が、こんなに気持ちよいワインを生み出すのです。

とはいえ、その技法は驚くべきもの。まるで現在最先端のような、農薬不使用、自然酵母発酵、亜硫酸無添加です。発酵タンクの温度調整は、冷水の入ったガラス瓶をマストの中に投げ込んだり、ホーロータンクの外側に水をかけるという手作業。瓶詰めも手作業。無駄な電気や機械を使わないからストレスは最小限です。
「培養酵母を使ったり亜硫酸添加したりという方法がむしろわからない」という、祖父の代から変わらない年季の入ったナチュラルワインです。

ラインアップの中で林さんが一番好きなのは、デラウェアの甘口。これを岐阜市の焼肉店、本家馬喰一代に持ち込み、飛騨牛の料理と一緒に味わってみると、繊細な岐阜の魅力が倍増。焼肉でもすきやきでもしゃぶしゃぶでも、超越的なキメの細かさと端麗さと軽やかさが感動的な飛騨牛に、これ以上ないほどの相性です。

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「馬喰一代」の飛騨牛「最転び牛」のヒレ。肉を食べる時は赤ワイン、とつい考えがちだが、、実際に試すと白(デラウェア)の甘口が最もしっくりきた。肉とワインお味わいが、繊細さと柔らかさで同調する。

特に、塩、レモン、ワサビで食べる最上の「最転び牛」のヒレ。ワインの仄かな甘さが飛騨牛のサシの甘さを引き立てると同時に、寺フェアの香りが清涼感をさらに強めて、食後の心身がふわふわと軽い。

これぞ岐阜のテロワールの味。初体験の美しさです。

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WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
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へ、編集長、なんの替え歌だか若い人にはわからないです〜。