さる11月2日、ボルドー甘口ワインの生産者組合「Sweet Bordeaux(スウィートボルドー)」が団体来日し、プレス向けテイスティングランチが東京六本木のレストラン「マクシヴァン」で開かれた。その美味しさにWINE-WHAT!?も、甘露、甘露で感動しました。

東京ディズニーリゾート30コ分

甘口ワインというと、食後酒だとてっきり思い込んでいたのだけれど、このような思い込みというのはいったいいつ植えつけられたのでありましょう。おおまちがいでした。この日、マクシヴァンで供されたペアリングは、う〜む、甘いの、ってサイコー! という感じです。

スウィートボルドー、いわゆる貴腐ワインは、黄金色でハチミツのように甘いけれど、単に甘いだけではなくて、柑橘系の爽やかさがあったりして、飲み終わったあと、むしろスッキリする。

でもって、ペアリングで用意された「マクシヴァン」の料理が素晴らしかったのです。マクシヴァンは、2005年の「全日本最優秀ソムリエ」で、現在は同コンクールの審査委員でもあるソムリエの佐藤陽一氏のお店です。

と料理のお話に入る前に、まずは「スウィートボルドー」のエマ・ボードリーさんが語った甘口白ワインについての説明をご紹介する。

AOC(原産地呼称)またはAOP(保護原産地呼称)を示す地図。下のパンフレットより拡大。




スウィートボルドーの資料より抜粋。

スウィートボルドーの生産地は、ボルドーから南に30㎞、ガロンヌ川沿いの狭い地域に限られている。

ブドウ畑はおよそ3000ha、というからちょうど東京ディズニーリゾート30コ分。狭い土地に超有名なソーテルヌをはじめ、AOC(原産地呼称)、またはAOP(保護原産地呼称)が10ある。

一応、そのAOCと特徴を書き出しておく。

ソーテルヌ 「甘口で豊満」 
バルサック 「甘口で官能的」 
サント・クロワ・デュ・モン 「甘口で豊か」 
ルーピアック 「甘口でエレガント」 
カディヤック 「甘口で繊細」 
プルミエ・コート・ド・ボルドー 「甘口でやわらか」
グラーヴ・スペリウール 「甘口で濃厚」
コート・ド・ボルドー・サンマケール 「甘口で心地よい」
セロンス 「甘口で上品」
ボルドー・スーペリウール 「甘口でエアリー」

このうちのカディヤックは、発音は違えど、アメリカの高級車のキャデラック(Cadillac)と同じつづりである。1902年に設立のキャデラックは、デトロイトを開拓したフランス貴族の名前をとって社名とブランド名にしたからだ。

閑話休題。AOC10銘柄は、10種類の異なる甘口ワインの表現なのである。

1855年に格付けされたクリュは27ある。その中で超有名なのがソーテルヌのシャトー・ディケムで、これ以上の上はない特別1級、とされる。

ごく単純にいって、東京ディズニーリゾート30コ分のブドウ畑に27のクリュがあるわけだから、浦安にある夢の国1コ分よりちょっと広いぐらいのブドウ畑ごとに格付けがされていることになる。

甘口ワインの生産量はボルドー全体のわずか2%にすぎない。なのにシャトーは500もある。

生産本数は毎年1000万本。そのうち70%がフランス国内で消費され、30%が輸出されている。日本は現在7番目のマーケットで、2009年から16年の7年間で日本向けの輸出量は62%の伸びを記録した。今回の生産者組合「スウィートボルドー」の来日は、もちろん日本市場へのさらなる浸透をめざすものである。



ミクロクリマの奇跡

ボルドー甘口ワインは、ボトリティス・シネレア菌の働きによって生まれる。いわゆる「貴腐ワイン」である。

ボトリティス・シネレア菌はセミヨン種のブドウ果粒上で繁殖するカビの一種で、この菌に感染すると、酵母の作用で果粒は水分を失い、果汁が凝縮されて、酸が少なく、砂糖漬けのような独特のアロマが生まれる。同じ甘口でも、ブドウを凍らせてつくるワイスワインや、ブドウを乾燥させるタイプと較べると、より複雑なアロマを持つ。

数百年も前に、この干からびちゃったブドウからブドウ酒をつくった人はエライ!

なぜこの地域で貴腐ワインスができるかのか、といえば、奇跡というべきミクロクリマ(局所気候)に恵まれているからだ。

収穫期の秋になると、ガロンヌ川と支流のシロン川がこの地区に朝霧をしばしばもたらし、午後には日当たりがよくなって温度と湿度が高くなる。要するにボトリティス・シネレア菌が繁殖しやすくなる。

スウィートボルドーの紹介パンフレットより。

テロワールの特徴は、小石と粘土、その下は石灰質の岩盤になっている。

収穫は、菌に感染しているだけに、手摘みで行う。それも、菌がついたブドウだけを選んで、という作業を何度を繰り返す。ブドウについた菌がよい菌かどうかは熟練した人じゃないとわからない。だから、見極められる人に頼む必要がある。当たり前だけれど、よい菌じゃないと、よい貴腐ワインはつくれない。ようするに、とても手間がかかる。

ということで収穫量は少なく、ブドウの木1本でソーテルヌ1杯とれるぐらいに過ぎない。

品種は80%がセミヨン、20%がソーヴィニヨン・ブランで、ミュスカデルが少々。セミヨンは、アーモンド、シナモン、りんご、はちみつなどの香りを特徴とし、ワインに美しいトパーズ色とスムーズネスをもたらす。ソーヴィニヨン・ブランはトロピカルフルーツ、白い花の香り、それにフレッシュネスと活力を、ミュスカデルはジャコウ、花の香りをワインに与える。蛇足ながら、ボトリティス・シネレア菌に感染するのはセミヨンだけだ。

ビョーキのセミヨンだよ〜ん。

収穫が手摘みである理由がわかる。

収穫後、一晩プレスして置いておき、樽またはタンクで発酵させる。

1日1杯のワインを飲むととても健康になる。サービス温度は8〜12℃。赤ワインのようにデカンタしてもよい。甘口ワインは冷蔵庫に入れておくだけで3週間はもつ。

合わせる料理は、スパイシーな場合は問題ない。スパイシーでない場合は塩味を足してみるとよい。スウィートボルドーはフランス革命の前はデザートのときに出されていた。現在はいつ飲んでもよいのです、というようなことをエマさんは簡潔に語った。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
メリー・クリスマス&ハッピー・ニュー・イヤーん!
2018年1月号(通巻20号)12月5日発売です!
特集は、石田博ソムリエと柳忠之さんによる「ヴィンテージ・シャンパーニュ27本テイスティング」と、柳忠之さんを座長とする「ワインと寿司のマリアージュ徹底検証」の2本立て!
岩瀬大二さんの「チリ紀行」にも注目。チリも積もればカベルネ・ソーヴィニヨンだけじゃない!
表紙はアニソンの女王・水樹奈々さんです。
ワインがスッキ、スッキ、スッキ、スッキ、ワインがスッキ、スッキ! 
へ、編集長、なんの替え歌だか若い人にはわからないです〜。