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「スウィートボルドー」甘い経験

レストラン「マクシヴァン」で開催されたペアリングランチにビックリ!

流行には波がある

「金時豚のミルク煮 松代の糸瓜を添えて」。素材は日本全国から取り寄せた、こだわりのものばかり。

3皿目は「金時豚のミルク煮 松代の糸瓜を添えて」

金時豚というのは、徳島で金時芋とミネラルウォーターで育てた豚だそうで、そのお肉を塩漬けにして紐で縛って干して風に晒し、放牧ジャージー牛のミルクで煮ている。なので臭みがない。しょっぱくて柔らかい。

この料理とペアリングされたのが、「シャトー・ミラ 特級(CHATEAU MYRAT Grand cru classe) 2009」と「シャトー・ラヴォー・プロミ 1級(CHATEAU RABAUD-PROMIS 1er cru classe) 2008」である。グランクリュの「シャトー・ミラ」は若い女性が2人、バルサックでつくっている。セミヨン88%、ソーヴィニヨン・ブラン8%、ミュスカデル4%。「2011年というヴィンテージの特徴は、素晴らしいアロマを発散し、力強さ、密度、豊かな果実味が調和よく結びついていることです。ほどよい酸味が、心地よくフレッシュな感じをあたえます」とスウィートボルドーの小冊子にはある。

「ラヴォー・プロミ」はシャトー・ディケムの向かいで、アペリティフに出てきた「シガラ」のコンペイロさんのいとこがつくっている。AOCは当然ソーテルヌ、品種はセミヨン80%、ソーヴィニヨン・ブラン18%、ミュスカデル2%。「最初に感じられるのは、レモピール、マンダリン・オレンジの果汁といった柑橘系のアロマ。つぎに、程よく熟したアンズ、もも、洋ナシなどローストした黄色いフルーツの味わいが、ぴりりとしたアクセントとともに口のなかで広がります」(同小冊子より)。

豚肉の塩っぱさが甘いワインを引き立てる。甘露、甘露。糸瓜のさっぱりした食感と味わいに癒される。甘露、甘露。

「熊本 利平栗のくりきんとん ブランデー風味」

最後にお菓子「熊本 利平栗のくりきんとん ブランデー風味」

食後酒は、「クヴクール・ソーテルヌ(YVECOURT SAUTERNES)2014」。AOCはその名の通りソーテルヌで、セミヨン70%、ソーヴィニヨン・ブラン25%、ミュスカデル5%。

くりきんとんは甘さ控えめで、この控えめな甘さが甘いソーテルヌによって引き出される、というようなことでしょうか。

記者のテーブルには「シガラ」のジャン・コンペイロさんの弟のマチューさんがいらした。

「シガラ」のつくり手のシャトー・シガラ・ボーは、ランベール・デ・グランジュ侯爵夫人マリー=アントワネット・ド・シグラの子孫たちがこの畑を管理している、と資料にある。やんごとない雰囲気はその血筋ゆえであろう。

記者の質問は、その昔、貴腐ワインといえば高級ワインの代名詞だったけれど、近頃はどうなのでしょうか、というものだった。

フランス語の通訳役をしてくださった方が、「近年、ボルドーといえば赤ですが、ソーテルヌの商品の位置づけは?」というようにソフトに変えてくれたおかげで、彼はこう答えた。

「1855年から1960年の100年のあいだ、ソーテルヌの方がシャトー・ムートン・ロスチャイルドより高かったのに、最近はムートン500ユーロ、ソーテルヌ60ユーロと、逆転されて価格差は10倍になった。流行には波がある。私たちはそれに合わせて努力しています」

マチューさんから「あなたはどこのワインが好きですか」と逆に訊かれたので、「いつも飲んでいるのはチリだけれど、お金があればブルゴーニュがいい」と答えた。日本人がもっとも好き、と巷間いわれるワインを記者はあげたわけである。特に何か計算があって、というわけではなく。すると、マチューさんがこう言った。

「1週間前、シャトー・ラトゥールがブルゴーニュの畑を7ha買った。2億5000万ユーロ(1ユーロ=133円として332億5000万円)で」

記者はそのニュースを知らなかった。7haは2万1175坪。ということは……1坪157万円! 東京でいえば、上井草とか久ヶ原とか、環七の外あたりの都内の土地でブドウを育てることになる。それでもブルゴーニュ・ワインはやっていけるということでしょう。

スウィートボルドーの生産者たちは、家業と伝統を守るために流行と戦っている。ワインは甘いけれど、世の中は甘くない。

それと、私たちは本当に自分が美味しいと思うものを食べているのだろうか……。なんてことを思った。

マクシヴァンの酒井朝香シェフ。

マクシヴァンの料理とペアリングはスウィートボルドーの方々にもたいへん好評で、「ボルドーでもレストラインを開いてほしい」とコメントするひともいらっしゃった。

スウィートボルドーは食中酒として和食に合う。ぜひお試しください。100年前だったら、とんでもない贅沢でもある。

リバーズ・ラン・スルー・スウィートボルドー。

レストラン「マクシヴァン
〒106-0032 東京都港区六本木7-21-22 セイコー六本木ビル1F 
TEL:03-5775-1073
http://www.maxivin.com

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