KEYWORDその1 オーガニック〜風土を生かすための答〜

のんびり過ごしている羊だが、これも仕事なのだ。「ヴェラモンテ」にて。

チリワイン=安価。

その一面的なイメージからすると、「大量生産」であったり「粗雑な環境」というようなネガティブなワードが頭に浮かぶけれど、こうやってキーワードとして最初にあげているのだから、もちろん、実情は違う。むしろ、チリは「オーガニック」というキーワードにおいて、素晴らしい取り組みが広がっている希望の地でもあるんじゃないかと感じたのだ。

それを支えるのは、「恵まれたテロワールを生かしたい」という意識。チリには強いエネルギーが伝わってくる土壌があり、燦燦と輝く夏の強い太陽と、毎朝夕に吹く美しく冷涼な風、適切な季節に適切な量が降りそそぐ雨がある。まだ手つかずの都市化されていない谷や丘が広がり、そこには古代から生き続けてきた植物と、のんびりと、しかし生存競争と食物連鎖の中に自然に身を置く動物たちがいる。

栽培されるブドウ、ワイナリーはその中にある。であればオーガニックという手法は、無理に取り組むものでもなく、あたりまえの選択。

どこまでの徹底をするか? という点についてはもちろん温度差もあれば、事業環境も違う。ワイン造り、ワインを広く安定的に流通させることにおいて、オーガニックこそが最良の方法なのかという結論を僕は単純には出せないが、それでも、今回訪問したワイナリーのすべてが、無理なく、自然な形で取り組んでいることには素直に感心した。

世界的な評価を受けたプレステージュワイン「セーニャ」も土地の力を生かしたオーガニックから生まれる。

自前の動物と植物のライフサイクルをそのまま生かしたコンポスト(肥料)、オリーブやハーブなどと一緒にブドウを栽培する植物のダイバーシティ的な考え方、羊や雄鶏、雌鶏、さらにはアルパカなどを畑に放ち、古代より続く命の連鎖の中で行う害虫、害獣対策。畑が畑であり続けることに対して実に理にかなったやり方をしている。  

美しい。そう感じたのは、きれいに整備されているからだけではない。

清らかに、しかし快活に咲く黄色い花やオリーブの木たち、のんびりと歩く動物たち、積み上げられた自然の石垣、昔のけもの道をそのまま使った農道……。そこから伝わってくるのは、この土地への愛。先進でありながら原始的にも見え、原始的に見えながらも今必要とされる先進。それはすべて、この土地そのものからワインを生み出すための結論なのだろう。

そしてこれが大切なのだが……、チリの人々が目指すオーガニックは、あなたのグラスをストイックにするものではない。訪問したワイナリーでいただいたワインは、笑顔がこぼれるものだった。土地と人を結ぶ。そうすれば幸せがつながる。ただただ、それだけのこと

ワイナリーに咲く花々もブドウと一緒に生命の連鎖の中にある。「アルボレダ」にて。





自転車マークの裏側の「リアル」〜ヴィーニャ・コノスル〜

懐かしくもあり見たこともない風景でもあり。自転車で回る畑はなんだかセンチメンタルでもあった。

自転車をオーガニックの象徴に位置づけ、誇りとしてチームが共有する。



コノスルのラベルに描かれた自転車のマークは、世界中のワインの中でも、もっとも有名なシンボルのひとつに数えられるだろう。

日本でもコンビニやスーパー、大手酒販チェーン店などでもよく見かける。

日本におけるチリを代表するワインであるのだが、それだけにチリワインの固定化されたイメージの中で、大量生産ワインというレッテルで見られがちではある。

実際のコノスルは、チリを代表するオーガニックスタイルの実践により生み出される。

プレミアムラインである『オシオ ピノ・ノワール』をもつアドルフォさん。ブルゴーニュ的エレガンスとウェストコースト的濃厚さが静かに溶け合う。チリを代表するピノ・ノワールだ。

チーフワインメイカーのアドルフォさんは、広大なワイナリーを実際に自転車に乗って案内してくれた。

ソーヴィニヨン・ブランの畑、ピノ・ノワールの小路で、自転車を走らせる。所々で止まって情熱的に自然への感謝、この土地の力を語る。雨上がりのダートは悪路で何度か車輪を取られたが、それもまた楽しい。

歩くのでも車でもない心地よい風を感じながら畑の香りを思う存分吸い込めば気づく。

自転車は、丁寧に丁寧にこの土地の恵みをワインとして世界に送り出す、リアルな道具であり、その想いの象徴なのだと。

今や、日本のどこででも見ることができる自転車マークのワイン。その裏側にある物語。チリのワインを飲むのではなく、チリで生まれたワインを味わおう。

アドルフォさんの笑顔を見習って、満面の笑みで。





自然を手助け宣言〜エミリアーナ・ヴィンヤーズ〜

オリーブオイルや蜂蜜もこちらの名物。ワイン同様オーガニックならではのピュア&パワー。

自然の手助けをすると宣言するノエリアさんはスペイン出身。

人と動物の幸せな関係が幸せを感じさせるワインへと繋がっていく。

ワインメイカーのノエリアさんはいう。

「毎年同じ味わいのワインを製造する、という意味合いなら『ワインメイカー』という言葉は好きではありません。土地の恵みを生かしていいブドウを育んでワインにしていく。むしろ私たちは『ネイチャーアシスタント』でありたいんです」

首都サンチアゴから車で1時間半ほど、太平洋に出る中間地点にあるカサブランカ・ヴァレー。

緑あふれる美しい環境ながら、決して隔絶された神秘的な場所ではなく、フレンドリーなテイスティングスペースやショップがあったりして、それなりに商業的な空間になっている。なのに、この開放感はどこからきているのだろう。「彼らも大切なスタッフ」とノエリアさんが笑うアルパカたちがのんびりと訪問者を迎えてくれる。

日本でも販売されている「コヤム」。コストパフォーマンスも高い。

多彩なアイテムの中から、その思いが結実した 1本と僕が感じたのが「コヤム」。

毎年ブドウの割合や種類は変わるが、2013年を例にとれば、シラー、カルメネール、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、ムールヴェードル、マルベックにプティ・ヴェルドと、エミリアーナのショーケースのように7種類ものブドウから造られるが、アロマも飲んだ感覚も、ブレンドのマジックを感じるのではなく、真っ先に感じるのはピュアさ、そして自然なパワーへと続く、この地の空気と大地。

オーガニックは決しても狂信的な信条ではなく、自然体でこそ飲む者の気持ちを優しく揺さぶってくれる。

この記事を書いた人

WINEWHAT
WINEWHAT
年末はこの1年の感謝を込めてシャンパーニュを開けまして。

キリスト教とは無関係でも開けまして。

正月は新しい1年の無病息災を祈って開けまして。

あけましたらおめでとうございます〜。