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来日した“ブルゴーニュの新星” オリヴィエ・バーンスタイン独占インタビュー

ベリー・ブラザーズ&ラッドのテイスティング・ランチにて

よりよいワインを

ロマネ・コンティとか? と記者はさらにたずねた。

「もちろん、それもそうだし、ブルゴーニュのワインはどれも。35歳で、自分自身のワインをつくるために、それまでのキャリアのすべてを捨てた。25歳より前、ワインについて考えたことはなかった。35歳でワインづくりを始めたのは(南仏の)ルーションだった。当時、自分がブルゴーニュワインをつくれるなんて思ったことがなかった。それはもう高すぎるから。本当に」

彼の趣味はクッキングとテニス、それにサッカーを見ること。26歳で、情熱として、当時は休暇をとってワインづくりを始めた。ちょうど料理のように。

「2003、4、5、6年、ルーションでやってみて、むずしいことがわかった。それで、『ブルゴーニュでやってみないか』と自問した。自分ではまったく思っていなかったのに。本当です。それまでは夢にさえ見なかった。ルーションで始めてから5年後のある日、『そうだ! ブルゴーニュは絶対やってみる必要がある。だって、すごくファンタスティックなところだから!』と思った」

本田圭佑って知ってますか。彼はワールドカップで優勝する、とかつて公言していて、「優勝したいと思わないヤツが優勝できるわけがない」といいました。その通りだと思う、と記者はいった。

「日本が優勝できると思う?」

と逆に聞かれた。う〜む、思わない、と答えた。参加者のアメリカ人が、「いつかきっと」といってくれたのがうれしかった。バーンスタインは続けた。

「ブルゴーニュで始めたとき、自分にいいました。俺はベスト・ブルゴーニュをつくるって。ホント。この時点ではものすごくたくさんの夢を描きました。35歳でワインづくりを始める前は、ブルゴーニュはベスト・ピープルでベスト・グロウアーだと思っていただけです。で、南フランスでものすごく苦しんだ。ものすごくね」

どんな問題があったのですか?

「誰も欲しがらない」

ルーションにはブルゴーニュのようなブランド力がないから?

「2006年にルーションから日本に来た。1週間で30社のインポーターを訪ねた。地下鉄に乗って、開けたボトルを持ってね。小さなオフィスで、『試しますか?』と聞いて、テイスティングすると、みんな、『ベリー・グッド』といってくれた。欲しい? と聞くと『ノー!』。まったく売れなかった。ガッカリしてフランスに戻った。ルーションとブルゴーニュ、どっちもアンフェアで、真実はその中間にある。それについて考えていると、病気になる」

しばしの沈黙のあと、さらに彼が続けた。

 

シンデレラ・ストーリーだけじゃなかった。

「ある日、ルーションとブルゴーニュでつくっていて、ブルゴーニュを買いに来たインポーターに聞いたのです。僕のルーション、欲しいかって。彼はこういった。『ノー』。

でも安いですよ。1ボトル5ユーロ。安くて、うまい。彼は『OK』といってこう続けました。

『あなたのブルゴーニュは100ユーロだけど、105ユーロで売りたいということですね。買いましょう。ルーションのワインは船積みしなくてもいい。そのままキープしてください』。アンフェアだよ。ルーションでは夢は見られない。ワイン自体はベリー・グッドなのに」

いまこそルーションで、オリヴィエ・バーンスタインのセカンド・ラインをつくったらチャンスだろうに、と記者はジョークのつもりでいった。けれど、彼の苦い記憶は止まらなくなったみたいで、もっとも、彼は少しも湿っぽくなく、明るくこう語った。

「あるジャーナリストが私の最初のブルゴーニュのヴィンテージのテイスティングに来てくれた。彼らはルーションのワインを私がつくっていることも知っていましたが、それをテイスティングしたいとはいわなかった。アンフェアだよ。

同じジャーナリストに、ルーションに僕のワインをテイスティングに来てください、と書いたら無視された。でも、僕がブルゴーニュでつくり始めたら、同じジャーナリストが『行ってもよいか』と問い合わせてきた」

このアンフェアネスを彼は「オール・オア・ナッシング」ということばで訴えた。それは、ルーションでいまもがんばっているひとびとを応援しているみたいだった。

食事がすっかり終わって、最後の質問をした。なにがいま、あなたを動かしていますか?

「よりよいワインをつくること。いつも、いつも、よりよいワインを、と思っています。永遠に満足することはありません」

あるひとびとにとっては投資の対象だけれど、あるひとにとっては情熱の対象なのである、ワインってヤツは。

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