オーストラリアワイン発祥の地として知られるハンター・ヴァレー。うつり変わりの激しいオーストラリアのなかでもハンター・ヴァレーは伝統産地なだけに、保守的なイメージがあった。実際訪れてみると、昔ながらのスタイルを保持する生産者がいる一方で、新しい流れも出てきていることに驚いた。

ティレルズとブロークンウッドの水平試飲。双方スクリューキャップを採用している。

伝統的なスタイルも健在

ハンター・ヴァレーを世界でも有名なワイン産地にしたのは、なんといってもセミヨン、通称「ハンター・セミヨン」だ。

セミヨンというとボルドーの甘口ワインだったり、ソーヴィニヨン・ブランとよく一緒にブレンドされる白ぶどう品種だが、「ハンター・セミヨン」といったらその特徴はがらりと変わる。早めに収穫を行うため低アルコール、並外れた骨格をもち、長熟させてこそ真価を発揮するといわれる。逆に若いうちは、硬くて飲みにくいものもある。ハンター・ヴァレー初日のテイスティングで、2ワイナリーのセミヨンを水平・垂直試飲(2017年、2013年、2005年)したことが、セミヨンの熟成について考えるいい機会となった。

ティレルズ・ワインズ

ティレルズ・ワインズといえば、この地のセミヨンを一躍有名にしたワイナリー、創業1858年と歴史も古い。フラッグシップの「VAT1セミヨン」はハンター・セミヨンの典型的なスタイルを知るには必飲だ。ティレルズのワインと一緒に比較試飲したブロークンウッドもまた、ハンター・ヴァレーで高い評価を得るワイナリー。今回はセラードアマネージャーのダミアン・ハリソンさんもテイスティングに参加してくれた。

血色のいい顔に終始笑みを浮かべながらセミヨンについて語ってくれたブルース・ティレルさん。

ティレルズの現当主ブルース・ティレルさんは、ハンター・セミヨンの熟成について「クレア・ヴァレーのリースリングと並んで50-60年は熟成する」という。リリースされたばかりの2017年のセミヨンには、英語ではよく「racy」と表現される、突き刺すような酸がある。10.5度とアルコール度数が低いのは、「デリケートな香りを失わないように」と早めに収穫するためだ。近年の気候変動により収穫のタイミングはここ30年で1週間早くなっているという。

熟成したときに「味わいは熟するがフレッシュ感は失わない」のがセミヨンの特徴だというブルースさん。ブロークンウッドと比べるとティレルズのセミヨンのほうが熟成はゆっくりで、2005年にも、まだまだ青リンゴのようなフレッシュさが残っている。

一方、ブロークンウッドの2005年には、もう少し熟した黄色い林檎やナッツの香りが出ていて、熟成のしかたの違いに驚いた。

同じ日の午後に訪れたトーマス・ワインズのアンドリュー・トーマスさんは、熟成セミヨンの特徴といえる香ばしいトースト香が出るには6年かかる、といっていた。このようなフレーバーは樽からくるものと思いがちだが、ハンター・セミヨンではほとんど樽は使わない。樽を使わずにトースティーの香り出てくるのが、ほんとうに不思議だ。だからワインはおもしろい。

この記事を書いた人

水上彩
水上彩
シャンパンと日本ワインを愛するライター。ワイン愛が高じて通信業界からワイン業界に転身した。最近は、毎日着物生活をめざして「きものでワイン」の日々を送っている。ワインの国際資格WSETのDiploma取得に挑戦中。

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