それぞれ異なる個性が魅力ともいえるオーストラリアワインにとって、「これはラベルを見ずに飲んだら、○○(高級ワイン産地)みたい」というのは褒め言葉とは思わない。だがキャンベラのワイナリーで、飲んだ瞬間「これはまるでコート・ロティの銘醸ワインだ!」と(心の中で)叫んだワインに出会った。クロナキラの「シラーズ・ヴィオニエ」2002年だ。

ぴかぴかに磨き上げられた風船グラスでの垂直試飲にうっとり

100ドルで買える「伝説のワイン」

キャンベラに到着してすぐ、あまりの暑さに本当に冷涼気候なのか、と訝しげに思っていたが、クロナキラのワインには、紛れもなく涼やかさがあった。それでいて妖艶だった。これは……!と思うワインに出会うと血が湧いたようになる私は、冷静に分析している仲間達を横目に「おいしい!」と日本語で連発しながら吐器に捨てるのももったいなく、もう夢中で試飲ワインを飲み干していった(そのため、メンバーは「Oishi」という日本語を完璧に覚えた)。

クロナキラは日本では知名度はそこまで高くないように思うが、オーストラリアではペンフォールズの「グランジ」、ヘンチキの「ヒル・オブ・グレイス」と並んで三大シラーズのひとつに数えられるというカルトワインだ。設立は1971年と比較的新しいが、キャンベラで商業的にワインを造りはじめた先駆けで、いまでは世界中から熱い視線を浴びている。先日も、イギリスのワイン雑誌「Decanter」誌の記事で「Legend of Wine」として取り上げられていた。看板の「シラーズ・ヴィオニエ」は100豪ドル程度と、気軽に買うには少し高いが、もう二つが日本円で10万円であることを考えれば、とんでもなく割安だろう。

2016年3月にできたばかりのセラードアは、モダンで洗練された空間

ジェネラル・マネージャーのDavidさんはカメラマンの顔も持つ


ヴィンテージの差はある

垂直試飲を進めていく中で、またしても自分がオーストラリアワインに対して大きな誤解をしていたことに気づく。今となってはこうして文字にするのも恥ずかしいが、「オーストラリアは気候がいいし、ヨーロッパのワインほどヴィンテージ差はないだろう」と思っていたのだ。

たしかに1,000円以下の高コスパワインとして大成功をおさめた「イエローテイル」のように毎年一貫した味わいをつくることが使命の企業もある。ただ、どちらがいい悪いではなく、クロナキラはまったく違うジャンルのワインだ。たとえば「シラーズ・ヴィオニエ」でいえば、涼しい年だった2014年はハーブやスパイス香が強く、収穫期が暖かかった2016年はアフターに厚みが出て黒い果実が強くなったりと、ヴィンテージの違いをつよく感じた。

「コート・ロティ」スタイルのシラーズでカリスマとなったティム・カークさん


テイスティングルームにあった棚の上には、ブルゴーニュ、そして北ローヌの銘醸ワインの空ボトルがずらりと並んでいた。

現在ワインを造っているのは、創業者ジョン・カークの四男ティム・カークさん。彼はローヌ地方で修行中、コート・ロティのワインに感銘を受けてシラーズとヴィオニエのブレンドを造りはじめたというから、「ブラインドで飲んだら、コート・ロティみたい!」という感想は、きっと褒め言葉になるに違いない。それに、全世界を魅了する艶やかなシラーズをキャンベラで造っていることが、すでに際だった個性なのだと思った。

この記事を書いた人

水上彩
水上彩
シャンパンと日本ワインを愛するライター。ワイン愛が高じて通信業界からワイン業界に転身した。最近は、毎日着物生活をめざして「きものでワイン」の日々を送っている。ワインの国際資格WSETのDiploma取得に挑戦中。

ブログ:余韻手帖 |きものでワイン http://muse-bacchus.com/