オーストラリアを駆け抜けること10日間。日々の疲れを癒してくれた宿のなかでも、もう一度泊まりたい宿を勝手にピックアップしてみました。

インパクト大賞

インパクト大賞は迷わずここ、最終日に泊まったシドニーのQTホテル。

昔の劇場を改装したブティックホテルで、かなりパンチが効いていた(その分、好き嫌いは分かれそうだ)。SF映画「フィフスエレメント」のヒロイン、リー・ルー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)そっくりの、赤い髪に全身黒づくめの衣装で固めたパンクなお姉さんが入り口で出迎えてくれたときには、本当にここでいいのか、と皆で顔を見合わせた。重厚感漂うアール・デコ調のエントランスを抜け、大きなエレベーターでロビー階へ。ロビーにはやけに凹凸のはっきりしたトルソーが並んでいたりする。

部屋の中央に、一人では大きすぎるベッド。いたるところに遊び心たっぷりのオブジェが飾られ、客室は美術館のようだ。コートをかける取手が動物のデザインだったり、大人二人が優に足を伸ばせる大きなバスタブがあったりと、いちいち女子心をくすぐってくる。かなり疲れていたにもかかわらず、写真を撮りまくりながら部屋をパトロールし、バスルームでフードつきの黒いバスローブを見つけたときには、日本でバスローブの会社を経営している友人に「こんなバスローブがあったよ」と思わずメールしてしまったくらいだ。ここはカップルで泊まったら楽しいだろうなあ。

現代美術館のような客室

大きなお風呂は結局一人では入らずじまい


美女率No.1のホテル・ホテル

圧倒的美女率が高かったのは、キャンベラの「Hotel Hotel」だ。「どこにお泊まりですか?」「ホテル・ホテルです」「え?なにホテルだって?」という会話が頻発しそうなネーミングセンスにも笑った。 

受付のお姉さんはもちろんのこと、1階にあるダイニングのスタッフまで美人ぞろいで、女の私でも心躍ったくらいだから、男性はなおのことだろう。チェックイン時にカードキーがうまく作動しなくてお姉さんに訴えにいったら、申し訳なさそうに眉根を寄せる顔もセクシーで、どきどきした。

オーダー式の朝食には、料理名を見ただけでは想像できないメニューが揃う。

特に自家製のクランペットというパンと、オーストラリアの発酵食品「ベジマイト」の組み合わせが、ツアーで一緒だったグルメな韓国人記者的にはこの旅ナンバーワンの朝食だったようだ。聞きかじりなのは、その組み合わせを私も試そうとした朝、集合時間の10分前に起床したためだ。まだパッキングもできていない状況から10分で身支度をするという偉業を達成する代わりに、ベジマイトを逃してしまった。

モダンな部屋

ダイニングにはおしゃれピープルが集う


長居するならヤラ・ヴァレー

仕事を忘れてゆっくりステイするなら、ヤラ・ヴァレーで宿泊した「Balgownie Estate(バルゴニー・エステート)」がトップにくる。

メルボルンから車でたったの1時間強でいけるヤラ・ヴァレー。メルボルンにはシドニーとも違う独自の文化のようなものがあって、路地裏のアートやコーヒー屋さんめぐりがいちいち楽しい街だった。そしてツーリズムが盛んなヤラ・ヴァレーには、ワイナリーはもちろんのこと、「ヒールスヴィール・サンクチュアリ」という大きな動物園もあり、子づれでも楽しめる。メルボルンをたっぷり堪能したら、ヤラ・ヴァレーに足を伸ばしてみるというのは、最高のルートだと思う。

コアラやカンガルーにも会える「ヒールスヴィール・サンクチュアリ」

チョコレートも有名なのか、おいしいスイーツにもありつけた


さて、バルゴニー・エステートのお気に入りポイントは、朝食にスパークリングワインがついていたこと。この宿にはセラードアが併設されているので、時間があればそこでワインテイスティングもできる。朝食では、そこのスパークリングワインが飲み放題だ。

朝食会場は見晴らしのいいガラス張りの建物なので、ぶどう畑を眺めながら食事ができる。客室は特別せまくも広くもないが、くつろげる空間だ。チェックイン後、夕食まで少し時間があったので、ベッドで休んでいたら、アラームもかけずにうたた寝をしてしまった。はっと目を覚ますと窓から差し込んでいた太陽の光と、外から聞こえる鳥のさえずりがあまりに心地がよくて、セラードアでのワインテイスティングも諦めて、集合時間ぎりぎりまで惰眠を貪ってしまったくらいだ。

朝スパ(朝のスパークリング)は特別ぜいたくに感じる

くつろぎの客室


もう一つ特筆すべきは、洗面所にあったアメニティ。いいホテルにはたいてい有名ブランド(ロクシタンなど)や高級感のあるアメニティが置かれているが、この宿のものには、格別ヤラ・ヴァレーらしさを感じた。それは「APPELLES」というブランドで、成分にはマンダリンピールやローズマリーに、シナモンの樹皮が入っていた。ヤラヴァレーらしい、と思ったのは、ヤラ・ヴァレー(ヴァレー・フロアのほう)にはジンの蒸留所があるからだ。

世界的なジンブームを受けてか、賑わっていた「Four Pillars Gin Distillery」


ジンの香りづけには、ジュニパーベリーをはじめ、蒸留所のレシピによってさまざまなスパイスを調合する。その蒸留所にはシナモンもあって、ちょうどグラスに入ったサンプルの香りを嗅いだばかりだった。ホテルのアメニティを持ち帰ることは、なんだか浅ましい気がして普段は我慢しているけれど、このボディローションは、こっそりスーツケースの中に入れてしまった。寒い冬の日本で、湯あがりにふわりと甘いスパイスが香ると、ヤラ・ヴァレーでの時間が蘇ってくる。

この記事を書いた人

水上彩
水上彩
シャンパンと日本ワインを愛するライター。ワイン愛が高じて通信業界からワイン業界に転身した。最近は、毎日着物生活をめざして「きものでワイン」の日々を送っている。ワインの国際資格WSETのDiploma取得に挑戦中。

ブログ:余韻手帖 |きものでワイン http://muse-bacchus.com/