サントリーワインインターナショナル株式会社は、2月21日、2018年事業方針発表会を開催。サントリーワインインターナショナル山崎雄嗣社長(写真左)と登美の丘ワイナリー所長渡辺直樹氏(写真右)が登壇した。

トレンドセッター、サントリー

サントリーは、日本のアルコール市場を牽引してきた企業の一つだ。朝ドラで描かれたように、日本のウイスキーもワインもサントリーから始まったと言っていい。赤玉ポートワインは一世を風靡したし、「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」というコピーは流行語にもなり、トリスウイスキーはサラリーマンたちに愛されるウイスキーになった。

今のハイボールブームもサントリーが仕掛けたことはよく知られている。何年もかけて地道なプロモーションを繰り返して、ハイボールの普及を実現した。

日本ワインも、実はサントリーの提唱から始まった。日本産ブドウを使い、日本で醸造したワインを「日本ワイン」と呼ぼうと業界を巻き込んで、日本ワインのブランド化を推し進めた。そして現在の日本ワインブームを作り上げた。

サントリーは、プロモーションや広告もうまい。日本のアルコール市場のトレンドを作ってきたとも言える。だから、サントリーの事業方針は、業界の注目の的になる。サントリーが何を仕掛けようとしているのかによって、市場が動く可能性が高いからだ。

サントリー、今年のワイン戦略は?

サントリーワインインターナショナルの2018年事業方針説明会は、まずはワインメーカーとしての日本ワインへの取り組みの説明から始まった。ブドウ栽培から醸造、瓶詰めまでを自園内で完結できる山梨県・登美の丘ワイナリーの他、長野県・塩尻ワイナリー、新潟県・岩の原葡萄園での実績と取り組みを説明。葡萄栽培畑を自社・契約ともに増やし、醸造量を増やしていく方針を発表。量だけでなく質の向上についても、これまでのワインコンクール受賞歴を示しつつ、個性を有しつつさらなる上質なワイン造りにチャレンジしていく姿勢を示した。

登美シリーズ赤

登美の丘ワイナリー、登美シリーズ赤

 
登美の丘甲州

登美の丘ワイナリー、登美の丘シリーズ甲州

 
岩の原ヘリテイジ

岩の原葡萄園のワイン、ヘリテイジ

 
塩尻マスカットベーリーA

塩尻ワイナリーシリーズ、マスカット・ベーリーA

 
塩尻岩垂原メルロ

塩尻ワイナリーシリーズ、岩垂原メルロ

 
津軽産ソーヴィニヨン・ブラン

ジャパンプレミアムシリーズ、津軽産ソーヴニヨン・ブラン

 

自社で保有するヨーロッパのワイナリー、フランスのシャトー・ラグランジュとドイツのシャトー・ベイブルシュ、仏カステル社との共同経営のシャトー・ベイシュヴェルとシャト・ボーモンについても言及し、特にラグランジュとベイシュヴェルが、ボルドーのプリムール(新種)評価が年々上昇していることを強調し、投機対象としても評価されつつあるブランドの将来にも自信を見せた。

そして、ディストリビューター(卸売業者)として方針では、国内と海外に分けて説明。国内市場では、2017年のワイン市場が数量ベースで前年比101%なのに対し、サントリーは前年比105%と市場をリードしていることを示した上で、2018年の方針は「プレミアム商品の強化」「スタンダード・デイリー基盤ブランド強化」「新需要創造」であることを発表した。

海外市場では、中国市場での成長狙うことと、ボルドーを武器により広い世界市場を狙っていくこと、そして日本ワインの海外進出を方針として掲げた。売り上げ計画では、このディストビューターとしての海外売り上げが最も伸びるだろうと推測している。

シャトー・ベイシュヴェル

ボルドー、シャトー・ベイシュヴェル

 
ロバート・ヴェイル

ドイツ、ロバート・ヴェイル

 
ダークホースロゼ

ダークホースロゼ

 

ワインは年寄りの酒!?

ワインホワット!?編集部は、この発表の中で少し面白いデータに注目した。ワインの購買者比率は、50歳代以上が70%程度で、しかも拡大傾向にあるというのだ。ワインは年寄りの酒になってしまっているという私たちには少しショックなデータだ。

若者のアルコール離れが叫ばれて久しくはあるが、それでも缶酎ハイやハイボールなどのRTD商品(Ready to drinkの略ですぐ飲める商品のこと)は、それなりに売れている。ワインは若者たちに敬遠されている現実が見えてくる。

サントリーも、これは問題視しており、「20代、30代を中心としたエントリーユーザーへの働きかけが急務」と語っている。それが方針としてあげた3項目の一つに「新規需要創造」を入れた要因でもある。これは、サントリーだけでなくワイン業界全体の問題でもあると思う。

そこで彼らが、今年取ろうとしている具体戦略を少しだけ明かしてしまおう。まずは、カップワインの販売。一杯飲みきりサイズのワインだ。だが、これは業務用限定。居酒屋などでグラスワインをメニュー化をしやすくし、扱いを増やしてもらうための戦略だ。

これは、一般向けに出しても良さそうな気もするが、「ワンカップ」という古臭くも感じるスタイルが、若者に嫌われる心配もある。業務用なら、ワイングラスに移し替えてサーブできるから、まずはニーズを図る意味でも業務用だけにしたのかもしれない。

一方、酒販店などに向けては、スパークリングボトル缶を販売するという。これも飲みきりサイズでRTD需要に答える形。おしゃれさも多少はある。以前、ベビーシャンパンが流行ったことがあったが、そのお手軽版といった感じだろうか。こうした手軽な飲みきりサイズのラインアップは、もっと増えるといいなと思う。

ワンカップワイン

業務用ワンカップワイン

今年のトレンドを占う

新規需要創造のための戦略のもう一つが飲み方提案。酒業界でカテゴリーごとの販売促進を考える時の王道がこの「飲み方提案」だ。若者のウイスキー離れに悩んでいたサントリーが仕掛けたのも「ハイボール」という飲み方提案だ。日本酒も吟醸の登場などで冷やして飲むスタイルが一般化してからブームが起きた。

つまり飲み方提案は、新たなトレンドを作る可能性がある施策と言える。サントリーは、どんな飲み方提案をするつもりなのだろうか。それは「氷と楽しむ」飲み方。ワイン通たちの間では、タブーに近い飲み方と言えるかもしれない。ワインを薄めてしまうし、香りやコクをなくしてしまう。なんともったいないと思う人の方が多かった飲み方だ。

しかし、欧米などでは夏にロゼに氷を入れて飲むのはもう常識だ。ワインメーカー側でも氷を入れて楽しむための商品を作り始めているところも増えている。サントリーでも昨年、同じマーケテイングをし、若者たちの反応に手ごたえがあったようで、今年も引き続き行うことにしたのだそうだ。

サントリーが続けて同じ戦略を行うときは、注目すべきだ。そのマーケテイング戦略に新たなトレンドの芽が隠れている可能性が高い。もう一つあげている戦略の「ロゼの品揃えの拡充」などとも相乗効果を発揮するかもしれない。最近ワインカクテルを扱う居酒屋なども増えてきているように思う。「氷」というキーワードから、ワインの新たなトレンドが生まれるかもしれない。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
雨上がりの朝、届いたワインの雑誌。

焼き鳥とワインが結婚するってホントですか。

WINE-WHAT!?の表紙は笑っているだけ。

赤、白で、今回ロゼはないけど、

サンジョベーゼとかアシルティコとかが、

つくねとかねぎまとかに合わせて踊りだす。