国際ホテルジャーナリストによるワインの都ボルドー視察の旅。第8回は、シャトー・シュヴァル・ブラン。1998年にLVMHの社長とベルギー人実業家、ふたりのワイン愛好家が購入し、新時代を迎えている。
Château Cheval Blanc 〜Saint-Émilion〜

シャトー・シュヴァル・ブランの全景。元来シャトー・フィジャックの一部だったが、1832年にデュッカス家がこんにちのコアとなる土地を購入したのが起源と言われる。

サンテミリオンは中世の面影が色濃く残る街並みと周辺の村々や一面に広がるブドウ畑全体が「ジュリディクシオン・ド・サンテミリオン」という名でユネスコ世界遺産に登録されている。
サンテミリオンを代表する“白馬”
「シャトー・シュヴァル・ブラン」は、オーゾンヌと共にサンテミリオンの格付けの頂点に立つが、両者の間には大きな差異がある。
オーゾンヌを含むサンテミリオンのほとんどのシャトーがメルロー主体であるのに対して、シュヴァル・ブランはカベルネ・フランが主体。オーゾンヌは旧家ヴォーティエ家によるメディアへの露出を制限した家族経営であるのに対し、シュヴァル・ブランはベルギー人の実業家アルベール・フレールと、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンの会長兼CEOであるベルナール・アルノーに売却され、グローバルな現代的経営方針を推し進めている。
シャトーは近年、ブドウ畑の中心に近未来的なワイナリーを作り、その著名建築家によってデザインされた建物は多くの国際建築賞を受賞している。
シュヴァル・ブランは元来シャトー・フィジャックの一部だったが、1832年にデュッカス家に16ヘクタールの畑が売却されたのが起源と言われる。ポムロールとの境界近くにあり、この一帯はサンテミリオン地区のなかでも珍しく砂利が多く堆積している土壌だ。
その所有面積は合計約40ヘクタールで、55%のカベルネ・フランと、45%のメルローが植えられている。
ブドウ畑の各区画は、それぞれの特徴を表現できるよう独自の番号が記され、その区画にあったケアが施されている。お互いを補完し合うカベルネとメルローのふたつのブドウ品種はよく調和して、類まれなる長期熟成の可能性を秘めている。