ワイン女子を目指すお嬢さまの田原可南子と、ワイン・ナビゲーターの岩瀬大二のかけあいでおくるワイン講座の第2回。今回のテーマは「古木」です。




スタイリング:渡辺彩乃 ヘアメイク:及川美紀 
撮影協力:ドミニク・ブシェ・トーキョー 東京都中央区銀座1-5-6 銀座レンガ通り福神ビル2F

衣装協力:SHIROMA tel.03-6804-5865 simmon tel.03-6455-3467 COMEX tel.03-5637-7731

ブドウの木の寿命は120年

「せっかくワイン体験を始めたので、父の日にワインを贈ろうと思っているんです。毎年、母の日はしっかり考えているんですけど、父の日はあんまり(笑)。なので今年はがんばろうかなと」

なんと素晴らしい心がけ! 

そこでナビゲーターが考えたのは「古木(こぼく)」。樹齢が古くなった木から生まれるワインをお父さまに贈るというアイディアです。


 「古木? 樹齢? 初めて聞く言葉です」


それも当然。一般的なワイン選びではあまり出てこないワードでしょう。簡単に説明すれば、ワインの原料はブドウ。そのブドウが実る木の年齢が樹齢です。ブドウの木の寿命はおおむね120年と言われています。


けっこう長生きですね。人間と同じように成長するんでしょうか?」

鋭い。20歳ごろまではすくすく成長し、多くのブドウが実る。その後、木になるブドウの数が減っていきます。それだけ聞くと、老化が始まったように聞こえますが、過剰だったブドウが適正な数になることで十分に光を浴びることができるし、ブドウの木の根が地中に伸びていくことでより深く大地のエネルギーを吸いあげられる。それが適正な数量のブドウにいきわたる。だから、若いころと比べるとクオリティは高くなる

「なんだか人間に似ている気がします。年齢とともに経験を積んでいくことって人間も大切です」

もちろん、古木だからといって、すべてがよくなるわけではありません。近年では20歳前でも栽培技術によって存分にポテンシャルを発揮してくれるブドウもあります。これも人間同様かもしれません。

逆に120年を超えてもなおフレッシュというワインもあります。実際、寿命もどんどん延びています。



「120年でまだフレッシュ!? 120年を超える……ものすごく高価なワインですよね?」
 







そこ、心配ですよね。大丈夫、それも古木、樹齢をキーワードにした理由です。 







記念日のプレゼントと言えば、「ヴィンテージ」。でも、父の日のプレゼントとなれば、おのずと50年近い、あるいはそれより以前のワインになってしまう。1960年代のワインなんてそうそう見つかりませんし、そもそも半世紀もの長期熟成が可能だとすると、卓越した名門のワインで、口に出すのも怖いぐらい、高い。




「あ! 樹齢が古くても、毎年そこからブドウは生まれるから、ワインのヴィンテージとしては新しい。だから比較的手に入りやすい。しかも、経験を重ねたからこその味わいがある……。人間の成長にも似ているし、贈り物のメッセージとしても素敵です」 





それが狙いです。 





ということで8つの個性的な古い樹齢のワインを用意しました。それぞれのワインのキャラクターを分析しながら、実際に贈りたいワインを決めていただきましょう。




 



 




 



 

左から
オールド・ヴァイン 1958 クリオージャ 2015
オールド・ヴァイン 1946 マルベック 2015
オルファンバンク シラーズ 2014
(以上すべて輸入元スマイル)
カリ・リーザ 2015(輸入元モトックス)
セッサンタアンニ 2014 (輸入元モトックス)
マツ・エル・レシオ 2014 (輸入元ワイナリー和泉屋)
マツ・エル・ピカロ 2016 (輸入元ワイナリー和泉屋)
トイスナー・アルバート・シラーズ S’13(輸入元ヴィレッジセラーズ)






 

こういうお父さんだったらいいのに




 

まずは「トイスナー アルバート シラーズ」。樹齢は概ね70年、オーストラリアはバロッサ・バレーのシラーズです。アルバートはワインメイカーの祖父の名前。人生のベテランの方へのリスペクトを古木にかけて表現しています。

「古木といっても洗練されていて、とても飲みやすい。そして飲んだ後、口の中でふわーっと優しさが広がります。スマートでかっこいいお父さんという印象です。あぁ、うちもこういうお父さんだったらいいのに……」




 

次はスペインから「ボデガス・マツ」の「エル・レシオ」と同じく「エル・ピカロ」。特徴的なのは顔ラベル。お父さん顔のエル・レシオは樹齢90年~100年で14カ月樽熟成、好青年の息子風のエル・ピカロも同じブドウ品種(ティンタ・デ・トロ)で樹齢80年~100年で、こちらは5カ月樽熟成。レシオは働き盛りで、ピカロはガキ大将という意味を込めたそうです。




 
 


 

「香りも味わいも同じファミリーという感じがします。レシオはすごく香りが深くて素敵。大人の苦みが後から後からじわじわ来ます。優しそうに見えてしっかり厳しくて。たまにきつく叱られる(苦笑)。ピカロは苦みに変わって酸味が心地よいです。レシオは複雑でピカロはそれをシンプルにわかりやすくしてくれているような。彼氏を連れて行ったらピカロさんはOKしてくれるけど、レシオさんは怖そう……」





 



次は舞台を古代の浪漫が広がるギリシャへ。「カリ・リーザ」。樹齢は60年以上。土地の固有品種であるクシノマヴロを100%使用している。

「複雑だけれど、きれいな香りです。ピンクや赤の色が浮かぶけれどすーっと爽やかさもあって。こういうフレグランスがあったらいいかも。色も素敵だし味わいもさっぱりしていて、どちらかというと母の日が思い浮かびます。これを買って家で家族と料理して一緒に食事する場面。その料理もがんばってすごいものをつくるのではなく、気軽に」

可憐な果実味にトマトやハーブ、土の雰囲気なども感じる静かにエキゾティックなワイン。軽やかな休日の食事にあいそうです。




 

続いてアドリア海を渡ってイタリアは南部のプーリア。樹齢60年の「セッサンタアンニ」。プリミティーヴォ100%、フレンチオークとアメリカンオークで12カ月熟成後にステンレスで12カ月、そして瓶熟6カ月とじっくり「経験」を積んで登場します。




 

「ボトルがいかつくてすごく重くて、これは手強いぞと思っていたら、とても優しくて甘い香りでびっくり。飲んでみるとゆったり喉を通っていきます。軽いスパイス感を甘さが包んで、複雑だけれどそれがとても心地いい。ギャップ萌えですね、これは!」

ダブルのスーツに身を包む強面の人が、素敵な笑顔のダンディなおじ様……いや意外と若いイケメン君だった……というなんだかうれしい混乱。恐る恐るからの高評価、でした。




 



さて、可南子さんにはおなじみとなったアルゼンチンからは「エル・エステコ」の「オールド・ヴァイン 1958 クリオージャ 2015」と「オールド・ヴァイン 1946 マルベック 2015」の2本。その年号の表記でわかるようにそれぞれ樹齢60年と72年。

「クリオージャの方は勝手なイメージですけれど、ワイン通の人が味わって語り合うような感じ。上品だけど可愛らしいし、でもすごく複雑な感じがして。まだ私には早いかなあという印象です。マルベックは、さっきの「エル・レシオ」さんと「セッサンタアンニ」さんの同期。その中で一番、私を強く叱る人(笑)。ワイン自体とてもパワーがあります。樹齢72年って、こんなに強いワインを生み出せるんですね。すごいなぁ」
 





人間もベテランの方が若い人とはまた違う力強さもあったりもしますからね。





最後はバロッサ・バレーに戻って「ラングメイル オルファンバンク シラーズ」。樹齢の平均は約88年。


「あぁ、これは「古木」と聞いて私が想像した世界です。最後に来た。自然の厳しさ、そこから生まれる力とでも言うのでしょうか。香りはとても好きなんです。赤い果実にチョコレート、そこに自然の草花。飲んでみるとレモンをかじったような強い酸があって、まだ、全部を理解するのは早いよ、って言われているみたい……」

さて、父の日に贈るワインは決定しましたか?

「もうちょっと甘い顔も見せてね、というメッセージを込めて、「セッサンタアンニ」に。好みで言うと、母の日が思い浮かんだ「カリ・リーザ」もかなり。あとですね……「エル・レシオ」さんが気になってます。ちょっと怖くて実際のお父さんぽくて、ちょっと距離をおきたいと思ったんですけど、時間がたって味わってみたら話せばわかることもあるのかなって(苦笑)」

実はボデガス・マツのマツは日本語の「待つ」という意味が込められています。時間が何かを生み出してくれることもあります。父の日、親子でのよき語らいに、古木から生まれるワインが役に立てば何よりです。



  

選んだ1本は、「セッサンタアンニ 2014」。



  

 
 


 
 

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
勝沼の甲州手積みしてこれでロゼワインつくろうぜ

果皮ごと絞ってみたけど白になっちまう

(中略)

I say だいたい適当でマセラシオンは

だいたい適当であざやかな

だいだい色でできたのはオレンジワイン