9,000ヘクタール以上の自社畑をもち、チリ最大であると同時に、チリのプレミアムワインの先駆けでもあるワインの会社「コンチャ・イ・トロ」。そのアンバサダーをつとめるパブロ・プレサック氏が来日。WINE-WHAT!?は話を聞く機会を得た。

特別な日もそうじゃない日も、コンチャ・イ・トロのワインはある

コンチャ・イ・トロは大きい。なにせ、あの巨大なワイン産地、チリで最大だというのだから。

チリ最高峰のワインのひとつ「ドン・メルチョー」をはじめとする高級なワインから、日本でも大々的なプロモーションがおこなわれた悪魔の蔵こと「カッシェロ・デル・ディアブロ」といったプレミアムなワイン、そして安くて美味しいワイン、たとえば世界的なベストセラー「フロンテラ」のようなワインまで、コンチャ・イ・トロは、あらゆるプライスレンジに複数のワインをリリースしている。輸出向けブランドのコノスル、アルゼンチンのトリヴェント社もコンチャ・イ・トロのグループ。バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドとのジョイント・ベンチャーなどもある。

WINE-WHAT!?には、岩瀬大二氏が、コンチャ・イ・トロを訪れたときのことを、書いてくれたこの記事がある。

コンチャ・イ・トロのパブロ・プレサック氏

コンチャ・イ・トロのパブロ・プレサック氏

そのコンチャ・イ・トロのラインナップのなかでも、上位の6種類のワインを、今回は、コンチャ・イ・トロのブランドアンバサダー、パブロ・プレサックさんの話を聞きながら楽しむ機会に、WINE-WHAT!?編集部は恵まれたのであったーー

1品種2ワインの6本

その際、実際に飲むことができたワインは

マルケス・デ・カーサ・コンチャ シャルドネ 2016

アメリア シャルドネ 2016

マルケス・デ・カーサ・コンチャ カルメネール 2015

カルミン・デ・ペウモ 2013

マルケス・デ・カーサ・コンチャ カベルネ・ソーヴィニヨン 2015

ドン・メルチョー 2015

と、以上の6種類。シャルドネ、カルメネール、カベルネ・ソーヴィニヨン、それぞれのブドウ品種にたいして、コンチャ・イ・トロの2つのアプローチを実際に試そうというわけである。

コンチャ・イ・トロのワイン6種

左から、「ドン・メルチョー 2015」、「マルケス・デ・カーサ・コンチャ カベルネ・ソーヴィニヨン 2015」、「カルミン・デ・ペウモ 2013」、「マルケス・デ・カーサ・コンチャ カルメネール 2015」、「アメリア シャルドネ 2016」、「マルケス・デ・カーサ・コンチャ シャルドネ 2016」です

チリのワインの30年

1970年代、80年代。フランスやカリフォルニアのワインが、近代化の道を歩む頃、チリワインは混乱していた。30年以上、チリのワイン産業の足かせになっていた重い酒税やブドウをあたらしく植えることを禁止する法律、栽培や醸造の機械の輸入に関する規制が、1970年代になってなくなり、ワイン産業は急激に巨大化したのだけれど、チリは、ワインの国内消費があまり多くないので、市場は国外に求めることになり、そうなると、世界レベルのワイン造りのノウハウが必要だけれど、それがチリにはまだ乏しくて、量産はできてもワインの質に関する評価が低いため、価格が上がらないで、安いのに売れないという危険な状況だったのだ。

もちろん、チリのワイン業界は、こんな状況になることを予想もせず、ただせっせとワインを造っていたわけではない。チリワインの高品質化は、生き残りを左右する喫緊の課題で、その課題を、チリは、ご存知のように、解決したのだから。

チリワインを変革したスターとして有名なのは、たとえば、醸造家アウレリオ・モンテス。旧世界の醸造技術を持ち込み、チリ発のプレミアムワインとして価格に比して品質は極めて高いワインを造り、世界中で高い評価を獲得した。

モンテスがワイン界のトップに躍り出た1980年代後半が、チリワインのスタート地点だ。背景には、ワインの増産と時をおなじくして急激に進んだ経営の近代化や外国資本の参入等もある。コンチャ・イ・トロは、1883年、スペインの貴族、コンチャ家のドン・メルチョーが、チリのポテンシャルを見込んでマイポ・ヴァレーを開拓し、ボルドーのブドウをチリへと持ち込んで起こしたワイナリーだけれど、そんな歴史をもちながら、チリワイン躍進のチャンスを見逃すはずもない。

1970年代に、高品質ワインを造るという方針をあらためて固め、ワイナリーの近代化につとめ、1987年ヴィンテージのカベルネ・ソーヴィニヨンのワインに、この創業者「ドン・メルチョー」の名前をつけてリリース。チリを代表する高品質ワインとしての名声を「ドン・メルチョー」は確固たるものとしていったのであった。

それから30年。今日も、コンチャ・イ・トロを、そしてチリワインを代表する「ドン・メルチョー」は、希望小売価格11,000円の高級ワインとして、日本でも手に入る。

世界でもっとも優れたカベルネ・ソーヴィニヨンの産地

その「ドン・メルチョー」。現在の2015年ヴィンテージだと、カベルネ・ソーヴィニヨンが92%、カベルネ・フラン7%、プティ・ヴェルド1%というブレンドだそうだ。

チリといえば、の品種、カベルネ・ソーヴィニヨンだけれど、「ドン・メルチョー」のカベルネ・ソーヴィニヨンはそんじょそこらのカベルネ・ソーヴィニヨンではない。南北に長いチリの、中央から少し北、首都、サンティアゴのちょっと南、コンチャ・イ・トロの発祥の地であると同時にチリワイン発祥の地でもある、マイポ・ヴァレーの北、プエンテ・アルトという場所にある全体では200haほどの地域が、ドン・メルチョーのカベルネ・ソーヴィニヨンの故郷だ。ここでは、「ドン・メルチョー」の畑以外に、シャトー・ムートン・ロスチャイルドを所有するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社と、コンチャ・イ・トロとのジョイント・ベンチャーで、1998年にうまれた「アルマヴィーヴァ」、そして「セーニャ」のチャドウィック氏の畑の3つの畑だけがある。つまり、チリで造られる世界最高峰のワインのカベルネ・ソーヴィニヨンの産地なのだ。パブロさんによれば、「世界でもっとも優れたカベルネ・ソーヴィニヨンの産地」。テロワールは変化に富み、区画ごとに分けて醸造したカベルネ・ソーヴィニヨンのワインをブレンドすることで「ドン・メルチョー」は生まれる。

複雑な要素が、高度にバランスをとったワインで、その内容の表現の仕方はたくさんあるとおもうけれど、筆者がごく簡単にいうと、香ばしく、フレッシュで、うまい!

10倍の価格差を納得させるマルケス

ところで、23,000円のワインも飲ませてもらった。「カルミン・デ・ペウモ」というのがそれだ。チリではじめての、カルメネールから造った高級ワイン。このワインについては、先に言及した記事の内で、岩瀬大二氏が、2014年ヴィンテージを「驚いた」と評して、その驚きの理由を説明してくれているけれど、2013年ヴィンテージに関しても岩瀬氏のコメントがその核心を的確についているとおもえたので紹介したい。岩瀬氏いわく「この価格帯で最も早く1ボトル飲みきってしまうワインかもしれない。スルスル飲めちゃう」

価格を聞いたときに、「やっぱり、これだけのワインであれば、そういう価格ですよね」と納得してしまうだけの内実がある。けれど、いわゆるビッグなワインではない。むしろ真逆。エレガントで親しみやすさもあって、モダンなワインだと筆者はおもった。

パブロさんも、「2013年は、これまでの「カルミン・デ・ペウモ」のなかでも好きなヴィンテージです。明るく、エクスプレッシブ。ボルドーワインのようなまろやかさがあった2010年ヴィンテージに比して、2013年はフレッシュ。オークの風味もつけないようにしています」と語っていた。

そしてこれが、現在のコンチャ・イ・トロの方向性なのかな、と筆者はおもった。

というのは、同時に飲んだ、「マルケス・デ・カーサ・コンチャ」というラインのワインからも、そんな方向性が感じられるようにおもえたからだ。「ドン・メルチョー」とともには、「マルケス・デ・カーサ・コンチャ」のカベルネ・ソーヴィニヨン、「カルミン・デ・ペウモ」とともには、同じく「マルケス・デ・カーサ・コンチャ」のカルメネールを、このとき試した。

「マルケス・デ・カーサ・コンチャ」の希望小売価格は2,200円。11,000円の「ドン・メルチョー」、23,000円の「カルミン・デ・ペウモ」と一緒に出すなんて、ボクシングでいえば、ヘビー級対フライ級の試合みたいなもの。フェアじゃない。と、価格だけ聞けばおもったのだけれど、飲んでみるとそう簡単なものでもなかったのだ。

たしかに、「マルケス・デ・カーサ・コンチャ」には分が悪い相手だ。ただ、「マルケス・デ・カーサ・コンチャ」は、背伸びしていない。ブドウの持ち味を活かした、実に正々堂々としていて清々しいワインという印象だったのだ。ボクシングの例でいえば、反則上等でハンマーを持ち出して、体格の不利を補おうとするようなところがない。

パブロさんによれば、特にこの3年ほど、コンチャ・イ・トロはブドウ本来の持ち味をより尊重し、さらに軽やかに、モダンになっているのだそうだ。樽の香りを強くつけるようなこともしていないという。

「マルケス・デ・カーサ・コンチャ」の上位には、「ドン・メルチョー」が、「カルミン・デ・ペウモ」がある、というのはすっと納得できた。同じことはシャルドネの、その産地には400km以上の開きがあって、価格は2倍ちょっと違う「アメリア シャルドネ 2016」と「マルケス・デ・カーサ・コンチャ シャルドネ 2016」からも感じた。

プレミアムな自動車にも近いのかな、と筆者はおもう。同じブランドであれば、大きいクルマのほうがエラい、高いクルマのほうがよりよい、とは、現在では必ずしも言えない。たしかに、大きくて高級なクルマのほうが、たくさんの機能やより優れた運動性能があたえられていたりするけれど、プレミアムブランドの顧客ともなれば、もうちょっと複雑で社会的な判断基準でもって、自己の置かれている事情にあわせて、必要なサイズのクルマを買ったほうが、いまや合理的だ。もし、好きなブランドがあるならば、特別なクルマ、普段のクルマ、と同じブランドのクルマを複数台所有するということもありうるのだから。

コンチャ・イ・トロも、そのワインに触れる機会は多分たくさんあるはず。もしも試しに飲んでみて、気に入ったなら、そんな風につきあったらいいのだとおもう。クルマとくらべたら、ワインはずっと手頃なわけだし。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
ブオンジョルノ! ミ・キアーモWINE-WHAT!?やでなも。

コメスタイ? ベーネベーネ。

アモーレマンジャーレカンターレ、モールト呑んでたもーれ!

サンジョベーゼネッビオーロ、ボーノボーノ。

WINE-WHAT!?買ってくださーれ! グラッツェ。