ラングドックワインをテイスティングする
ヴィラレさんのお話の後、ソムリエの情野博之さんに導かれてのワインテイスティングとなった。全部で8種類が紹介され、1本ずつ丁寧かつ愛情あふれる解説とコメントに、なるほど〜と感心するばかり。
最初はスパークリングからである。「d.A.ブランケット・ド・リムー」という名称の通り、AOCブランケット・ド・リムーで、リムーというのは世界で初めて瓶内2次発酵のスパークリングワインが生まれたところだそうである。AOCクレマン・ド・リムーというのもあって、そちらはシャルドネ主体、ブランケット・ド・リムーを名乗るにはモーザックというブドウ品種を90%以上使わないといけない。モーザックは青リンゴ、蜂蜜のように爽やかな香りで、泡は軽やか。フルーティで奥深くて、滑らかで苦味が強くない。優しくてエレガントだから、アウトドアでも楽しんでもらえるし、パーティーで開ければ、日本ではまだ知られてないから話題を提供することもできる。意外に使い勝手がよい、と情野さん。
以下、ご参考までに紹介されたワインを並べるとこうなる。いずれもAOCラングドックのグラン・ヴァンもしくはクリュのワインである。
というようにバラエティに富んでいる。
記者が興味深いと思ったのは7本目の「シャトー エグ ヴィヴ」を紹介するときに披露されたお話だった。こちらのAOCコルビエール・ブートナックはラングドックの最高位の「クリュ」に認定されている地区で、価格も参考上代が3,900円と、今回紹介されたなかで一番高い。AOCコルビエール・ブートナックでは30%以上のカリニャンのアッサンブラージュを義務づけているので、ブドウ品種は上記のごとくになっているわけだけれど、カリニャンというのはもともと、情野さんいわく「1haあたり100リットルとれる、産めよ増やせ品種」だった。
それというのも、フランス国内向けのテーブルワインをつくっていた植民地アルジェリアが1962年に独立した後、ラングドックが好適ということになり、このカリニャンが植えられたからだ。ところが、EU統合(1993年)で、安いテーブルワインはフランス産である必要がなくなった。そこで、フランス政府はラングドックのカリニャンを抜く対象にした。おかげで、カリニャンが珍しい品種になってきた。という状況のなか、ラングドックの頂点に立つAOCを探しましょう、となったときにコルビエール・ブートナック地区が選ばれたのは、カリニャンのよさを表現するテロワールに恵まれていたからだった。
世のなか、わからないといいますか、捨てる神あれば拾う神あり。人間万事塞翁が馬。禍福はあざなえる縄の如しであります。