11月27日(火)11:00〜12:45、東京港区のフランス大使公邸で第3回シュッド・ウエストワイン・デー プレスセミナーが開かれた。



シュッド・ウエストはコスパが高い

フランス語で「南西」という意味のシュッド・ウエストは、文字通りフランスの西の端っこの南の地方で、ラングドックとボルドーの間に位置する。ピレネー山脈を背にしていて、大西洋と地中海の両方から影響を受けるというワイン産地である。

というようなことは教科書的だからして、この日、マイクの前に立ったひとたちがどんなことを語ったのか、を順番に紹介していこう。

と、その前に。シュッド・ウエストワイン委員会が日本でのプロモーションを開始したのは5年前からで、「シュッド・ウエストワイン・デー」という1日丸ごとのイベントを開催するのは3回目である。それゆえ、同じような記事をどこかで読まれた読者諸兄もいらっしゃるかもしれない。この日はプレス向けのセミナーがお昼頃にあって、その後、酒販・飲食業界関係者向けのマスタークラスがあり、夜のディナーテイスティングが開かれたりもしている。 主催者の方がたにとっては長い1日であったろう。

セミナーに先立ち、ジャン=バティスト・ルセック公使からこんな内容の挨拶があった。

「ワインはだんだん日本でも飲まれるようになってきました。シュッド・ウエストワインはコストパフォーマンスが高いので、日本の市場で大きなポテンシャルがあると思っています。今年の7月にEUと日本の間で締結された経済協定により、関税が撤廃されます。ワインはもっと日本で売れるようになる。シュッド・ウェストにとっても間違いなくよい協定が締結されました。

シュッド・ウエスト地方はトゥールーズを中心に広がっています。トゥールーズはエアバスの本拠地としても知られているから、ご存じの方も多いことでしょう。

日本におけるフランス製品の人気は、日本の方々のフランスの高級品に対する情熱によるものです。日本とフランスの価値観は、エレガンスと高級感という点で共通しています。お互いの文化に抗いがたい魅力があリます。

日本はリラックスするひと時も大切にする国でもあります。花見とか飲み会も行なっています。フランスでも、アペリティフの習慣があり、ピクニックに行ったりします。人生のシンプルな喜びと無意識のうちに繋がりを持っているのです。ワインは喜びの品物であり、分かち合いを促すものです。

写真提供:シュッド・ウエストワイン委員会(IVSO)

シュッド・ウエスト地方は、“コンヴィヴィアリテ convivialite”(日本語では「和気あいあい」と訳された)という言葉がもっとも使われている地域だろうと思います。日本ではあまり知られていないコスト・パフォーマンスの高さシュッド・ウエストの魅力です。

シュッド・ウエストワインを通して、このコンヴィヴィアリテの精神でともに進んでいきたい。本日は生産者のワインを発見する喜びを味わう機会になればと思います」



シュッド・ウエストは個性的

続いて、シュッド・ウエストワイン委員会のディレクター、ピエール・ファーブルさんが壇上に上がった。

「5年前からこうした会を続けて開いています。これはもう毎年のランデブーで、日本とシュッド・ウエスト地方が恋に落ちている状態だと思います。私どものワインは輸出において経済的にも販売的にも、非常に伸びを見せております。世界のあらゆる国で飲まれていますが、特にアメリカ、カナダ、ヨーロッパ、そして日本が主要な国になっています。日本は重要なマーケットで、ダイナミズムというものを感じております。

日本への輸出を見ると、フランスのワインが現状維持でありながら、シュッド・ウエストのワインは量的には19%、金額的には23%の伸びを2017年は記録しています。日本の伸びが突出している。

シュッド・ウエスト地方のキーになるポイントをお話ししたい。2018年の初めに、アメリカのワイン専門誌『ワイン・エンスージアスト』でシュッド・ウエストが“ワイン・リージョン・オブ・ザ・イヤー(今年のワイン地方)”に選ばれました。 これに選ばれるのには6つの基準がありました。この6つの基準を、ざっと紹介したいと思います。

ひとつめは、働く人々です。

ふたつめの基準は伝統的な品種の保護があげられています。シュッド・ウエスト地方は世界的に使われているブドウ品種のゆりかごであります。マルベック、メルロー、カベルネがあげられます。同時に、世界のほかのどこにも存在しない地元品種もあります。そういったことから、私どものワインには個性が生まれています。私どもにとっては財産です。

3つめはイノベーションです。特に若い生産者が、新しい動きをつくりだしています。

3つめは4つめの環境保護にも繋がっています。イノベーションが同時に環境保護にも貢献しているからです。環境に関しては、すべての企業があらゆる分野で努力しています。

5つめの基準はツーリズムです。シュッド・ウエストには多くのシャトー、ドメーヌがありますが、観光にも力を入れています。我われの地方にいらっしゃるお客様を受け入れるキャパシティがあります。文化的にも伝統的にも、ガストロノミーの面でも楽しんでもらえる財産がこの地方にはあります。フランス大使館さまの働きかけもあり、エールフランスが2019年5月から、トゥールーズと東京の路線を就航します。

6つめは品質の高さです。これに関しては、これから石田さんからお話ししていただこうと思っています」



おなじみ石田 博ソムリエ。

クールな産地とクールな品種

ということで、WINE-WHAT!?でもおなじみの石田 博ソムリエによるセミナーに移った。石田ソムリエは語ったのは、こんな内容だった。。

「まず、5年にわたるシュッド・ウエストの日本におけるプロモーションでご一緒させていただいて、その度にいろいろ話をさせていただいていますが、そういう意味では毎回同じ話では去年も聞いたという方がいらっしゃるでしょうから、違う観点からの話をしたいと思います。

マスター・ソムリエや世界のソムリエのあいだで、最近“クール”という言葉がよく使われるようになっています。“スマートでカッコイイ”という意味ですけれど、世代も若返り、英語を(ソムリエの世界でも)使うようになって出てきた言葉で、マスター・オブ・ワインも使われたりします。

そこでまず、ワイン産地で“クールなワイン産地”というと、いま必ずあがってくるのがジョージア、ギリシア、モルドバ、ルーマニアといった国々です。いわゆるヨーロッパ伝統国でもなく、ニュー・ワールドでもない国が注目されています。旧旧世界、オールド・オールド・ワールドという言い方をしたりするのは、これらの国々はヨーロッパの伝統国よりも長いワインの歴史を持っているからです。

続いて、“クールなブドウ品種”をさっとあげますと、白だとアルバリーニョ、ロウレイロ、アシルティコ、ルカツィテリ、そして甲州も私は入れられると思うんですが、黒ブドウではガメイ、マルベック、カリニャン、サンソー、そしてクシノマヴロ、 これらは、世界のソムリエとの会合だったり、ワインのテイスティングで興味が示されている。つまりこれらは何を示しているかというと、土着品種であるということです。

要約しますと、非常に長い歴史を持っている、まだ知られていない生産国の土着品種から生まれるワインが、いま非常にクールである、というところがあると思います。

そして、どんなワインをソムリエが好んで使うようになっているかというと、当然スパークリングであり、白ワインであり赤ワインであるわけですが、加えて世界的に見るとロゼワインの伸長が大きく、続いてペット・ナットと呼ばれるジャンル、そしてオレンジワインというようなものが注目を集めていて、ご存じのようにペット・ナット(Petillant Naturel)という微発泡ワインが生まれたのはシュッド・ウエストです。

これらのワインがなぜ注目されるようになったのか?

これについては、様々な理由があると思うんですけど、ソムリエのアングルからお話すると、ペアリングというのが非常に大きいのではないかと思います。いま、ソムリエがいるレストランでペアリングを出していない店は世界でないんじゃないか、というぐらい、伝統国の伝統産地のレストラン以外、間違いなくペアリングを用意している。私が経営、またはソムリエをしているレストランでは9割がペアリングをご注文されます。

私のレストランでは前菜から5皿出しています。それ以上多く出すレストランもあります。その5皿にひとつずつワインを合わせていくと、よく知られているワインだけだと組み立てが成り立たないんですね。カベルネだけ、ピノ・ノワールだけ出すわけにもいかないし。そこでペアリングの流れをつくるために求められるのが知られざるワイン産地であったり、土着品種であったり、そして新たなタイプのワインであったり、ということだと思います。

続いて、これも興味深い内容なので、ぜひお話ししたい。

イギリスに『ドリンクス・ビジネス(the drinks business)』というメディアがあります。

そこが、2018-2019のトレンドというのを発表したのですが、まずはユニークな体験。これは発見の楽しさ。ほかでは経験できない、知らなかったことを新たに発見すること。続いて、ストーリーのある商品。高い安いではなくて、歴史であり文化であり、ガストロノミーとして物語のある商品ということです。

3番めはクラフト。手づくり、フランス語でいうとアルティザン、職人的な商品です。大量生産、工場生産的ではなくて、手づくり感、職人の手によるドリンクが求められているということです。

4つめのポイントは、私どもにとっても重要な、オーセンティックよりアクセシビリティです。誰もが知っている王道のものよりも、近づきやすい、理解しやすいものが求められている。日本におけるワイン消費はどちらかというとオーセンティックに寄るところがあります。そういう意味ではイギリス、アメリカのように、アクセシビリティにどこまで入っていけるか、というところが次なるステージではないかと思います。



130種の土着品種、29のAOP、13のIGP

そこで、いよいよシュッド・ウエストのお話にいきたいのですが、まず、ビオダイバーシティが非常に重要です。ビオダイバーシティ(生物多様性)というのは、自然であり、土地であり、そういったものが継承されていなければ失われてしまいます。

シュッド・ウエストにはブドウ品種の多様性があります。130の土着品種が認められています。これは現在認められている品種だけで130もあるということで、いまも調査を続けているそうです。ピレネーとかバスクの方には、栽培されているけれど、広くは知られていない品種が存在していて、そういった品種の発掘がこれからの展開にとってカギを握ってくると思われます。シュッド・ウエストはカベルネ・フランが生まれた土地と言われていますが、本当のウリは土着品種であることは間違いない。

ピレネーの麓、バスク地方のAOCイルレギー(Irouleguy)のブドウ畑。

AOCマディラン(Madiran)のブドウ畑。

IGPコート・デュ・ロ(Cotes du Lot)のブドウ畑。IGPなので範囲は広い。

シュッド・ウエストには29のAOPと13のIGPがあって、つまりワインが非常に多様性に富んでいる。現在、日本への輸出を引っ張っているのは白ワインだと聞いていますが、コート・ド・ガスコーニュ、またはコンテ・トロザンと呼ばれるIGPの白が非常に伸びている。スパークリングにしても、ペット・ナットもあれば、クレマンもある。ドゥミセックもある。幅広いスタイルがあります。

1000のカーブ、5000のヴィニュロン、ブドウづくりからワインづくりまでを手がけるひとたち、協同組合も含まれますが、そういう生産者が特筆するぐらい多くいる。

そして、郷土料理が豊富にある。これほど郷土料理が豊富な地方はフランスのなかでもほかにない。ビストロのメニューの7、8割がシュッド・ウエストの食材にインスパイアされたものであるといわれています。

シュッド・ウエストは、イギリスの「ドリンクス・ビジネス」が指摘したトレンドのポイントが当てはまっており、その結果が『ワイン・エンスージアズム』の「リージョン・オブ・ザ・イヤー」になったともいえます。そう考えると、シュッド・ウエストは間違いなくいま、クールなワイン産地である、といえるでしょう」

以上でセミナーは終了し、6社が出展する試飲会となった。なるほど、どのワインも個性的で、概ね軽い。ワインは国際品種の定番を味わう時代から、未知なる体験を求める冒険へと踏み出しているのだった。

付録として、この日出展されていたワインを以下にご紹介しておきます。



BRUMONT

シャトー・ブースカッセの赤と白。赤はタナ65%、カベルネ・フラン20%、カベルネ・ソーヴィニヨン15%。しっかりしたストラクチャー。白のレ・ジャルダン・フィロゾフィックはプティ・クルビュとプティ・マンサン。アロマの広がりを持ったワイン

担当者のSamira Souusiさん。

ヴィニューブル・ブリュモンは、シャトー・ブースカッセとシャトー・モンテュスで知られている生産者。日本では30年前から販売されている。ピレネーの麓に広大な土地を持っている。米『ワイン・エンスージアスト』で、2014年のシャトー・ブースカッセが「トップ100ワイン」の13位にラインクインされている。伝統品種のタナを使った素晴らしいワインを世界中に輸出している。



Tariquet

「クラシック」はユニ・ブラン45%、コロンバール35%、ソヴィニヨン10%、グロ・マンサン10%。レモンのように酸っぱくて爽やかで飲みやすい。1000円という価格も魅力。

生産者が来日できなかったため、代理で出席したサッポロビールのワイン事業部のヤマグチさん。

IGPコート・ド・ガスコーニュのドメーヌ・デュ・タリケは1125ヘクタールの自社畑をもつ小規模生産者。基本的に白ワインのみをつくっている。1600年代からアルマニャックを生産していたが、ワインは1982年から。初年度に出した「タリケ・クラシック」がパリの品評会で金賞を受賞。今年4月からサッポロビールで取り扱いを始め、年間2000ケースの見込みが現在1万ケースを出荷。なんと計画の5倍!



GEORGES VIGOUROUX

「シャトー・ド・オート=セール・グラン・ヴァン」はマルベック90%、メルロー10%の、エレガントでフルーティなワイン。5100円。

ジョルジュ・ヴィグルーの輸出マネージャー、Jean-Marie Suavetさん。

ジョルジュベ・ヴィグルーは1887年設立の家族経営の会社で現在は4代目が当主をつとめる。マルベックの中心地、カオール地区にある。シャトー・ド・オート=セールとシャトー・ド・メルクエス、ふたつのシャトーは高く評価されている。オート=セールにはレストランもあって、地元のガストロノミーに協力している。トリュフをはじめとする地元の食材とワインを楽しみにぜひ、私どものところに来てください。



vinovalie

「シャトー・ド・ケイ」は、前出オート=セールと同じくカオール地区のマルベックで、メルローが入っていない分、タンニンとフルーティな酸味が舌を刺激する。

ヴィノヴァリの輸出マネージャー、サンドラ・フェラルさん。

ヴィノヴァリは4つの協同組合と9つのシャトーが集まってできている会社で、400の生産者が参加し、栽培面積は3800ヘクタールを超える。初来日は2000年。この18年で日本とフランス、お互い協力関係を築き、日本はいまや同社にとって3番目の客になった。シャトー・ド・ケイは1974年にデンマーク王家の所有となった。ラベルには「デンマーク王子のワイン」と書かれている。



PLAIMONT

プレモン協同組合の「ムーンサン」は、フランスの作付面積1%未満という希少品種のマンサン・ノワール40%とメルロー60%のブレンド。赤系果実にスパイシーな香り、フレッシュな果実感とタンニン。



ARBEAU

ヴィニョーブル・アルボーの「オンラペルネグレット」赤はネグレット100%。冷やして酸味とタンニンを楽しむ。1680円。

同じ生産者の「シャトー・クティネル」はネグレット70%、シラー15%、ガメイ15%。ドライなロゼ。1580円。

この記事を書いた人

WINE-WHAT!? 編集部
WINE-WHAT!? 編集部
我輩は「WINE-WHAT!?」である。名前は「WINE-WHAT!?」である。誰がつけたかとんと見当がつかぬ。

ワインホワット?

「WINE-WHAT!?」である。にゃ〜。