グラフィックデザインとは?

スパリブの考察 第4回 消費者の視覚にどんなイメージを伝えるかがモノを売る力になる

飲酒用サプリ「スパリブ」の開発者の犬房春彦先生がワインと酸化ストレスの関係を訓み解く連載第4回。今回はスパリブのパッケージを手がけたグラフィックデザイナーの北川一成さんをゲストに迎え、グラフィックデザインと特許について語り合った。
WINE-WHAT!? 2015年9月号(No.6)より。肩書きは当時のものです。

同じ商品でも価値が変わる

北川 早速ですが、グラフィックデザインは不特定多数の人にその時代の中で視覚情報を伝えていく仕事だと思っています。人間は二次元ではなく、三次元で見ています。モノを見れば、触らなくても、脳が質感やイメージをつかんでくれる。ですから、デザインというのは消費者の視覚にどんなイメージを伝えるかによって、そのひとの心を惹きつけ、そのことによってモノを売る力にもなる。同じ商品でもデザインによって価値が変わる、といつも考えています。今回のスパリブのパッケージデザインも、そこが発想な重要なポイントになっています。

GRAPH代表/グラフィックデザイナー
北川一成

犬房 北川さんと初めてお目にかかったのは「月の桂」という日本酒の試飲会でしたね。私の隣に偶然、北川さんが座られたんです。そこで、スパリブの開発などのお話をしました。その後2週間ぐらいして北川さんから電話をいただいて、「スパリブは素晴らしい商品だけど、今のパッケージデザインはその効果とマッチしていない。よかったら私がパッケージデザインしましょうか?」とおっしゃったんです。

北川 通常は自分から営業しないんですけれど、実は犬房さんとお目にかかる前に、「月の桂」の増田社長からスパリブを紹介されたのです。早速試したら、アルコールへの効果を実感して、「これはすごい!」と。ただ、以前のパッケージはあまりにほかのアルコール対策の商品と同じ土俵で勝負しているように思えたんです。スパリブは臨床治験のデータもあって、本当に効果が証明されているので、まったく違う次元のステージにおいてデザインアプローチが必要だと考えて、試飲会のとき、増田社長に頼んで犬房さんの隣に座らせてもらったんです。これまでの他商品は、私が思うに、効果効能と広告宣伝がマッチしていないものが多いのですが、お話をうかがうと、犬房さんは元外科医で近畿大学の教授をしておられたのを辞めてまでして、ひとの役に立つ基礎研究をしているまじめな研究者だとわかりました。マーケットに浸透させていくための地道な施策も打っている。ただ、ブランドイメージが違うんじゃないか。ちゃんと手に取ってもらえるアプローチがあると確信し、新しいデザインを提案したいと思ったんです。

犬房 最初は北川さんのお名前も知りませんでしたし、デザイン業界で高名な方とは思っていませんでした。ですから、デザインのご提案の電話をいただいた時にはびっくりしました。デザインが完成した後、北川さんの事務所でボツになったロゴマークデザインの印刷された紙の山を見て驚きました。何千というロゴマークを作られて、そのうちからたったひとつのいまのロゴを選ばれているんですね。研究も実験で小さなデータを積み上げていくのですが、同じような過程を感じました。

スパリブ発売当初のパッケージ。ロゴのデザインも違っていた。

競合商品とは違うよ

北川 以前のデザインは、先行商品と似通った方向性のイメージだったんです。サラリーマンがネクタイを頭に巻いて、上野で花見する前に飲むような……(笑)。すでに圧倒的シェアを持つ先行商品と共通性のあるデザインにした場合、消費者にはその認知度の高いデザインを想起させるだけで、「スパリブ」独自の認知度を高めることにはならず、まったく得しないんですね。もしかすると、結果的に別の商品を購入してしまう可能性すらある。だから、コンビニに置く主力商品はまったく違うアプローチで、パッケージの色もありがちなものではなく、海外のハイブランドで見られるようなシズル感のあるものにして、コンビニの棚で埋没しないことを考えました。パッケージデザインを変えることで「競合商品とは違うよ」とはっきりさせようと。

ーー オシャレ路線でいく、と。

北川 あとは、実際の共通性からどうデザインを「ずらす」かでいうと、私は自分の生活者としての体験や感覚を重視する手法でいきます。あるとき居酒屋にいたときに、ご婦人が6人くらいいらして、ビールの小瓶を6本頼まれたんですね。そしたら、店員さんが「大瓶3本のほうがお得ですよ」っていったんです。そしたら、ご婦人が「大瓶なんてとても大酒飲みにみえるじゃないの」っていわれたんですね。

ーー そりゃそうですね。

北川 それを聞いたときに閃いたのが、女性もお酒は飲みたいけれど、大酒飲みには見られたくない。ネガティブになる、女の人も手に取りやすくて、ベタなものではないほうがいい。キオスクでドリンク剤を買って、「グビグビ、プゥアー」なんて、いまどき男でも流行らないかもしれない。そこで、スパリブを手にとって飲むしぐさも絵になることがいいんじゃないかと。パッケージを変えることで精神的負荷を取り払うことがいいんじゃないかと考えたんですね。それで、コンビニは目立つ赤。女性が手に取りやすいように白いパッケージ。男性を意識して黒と金のパッケージ。この3つを作ってみたんですね。既存の売れている商品と同じにしたら、つられて買うんじゃないかと思われがちだけれど、似てるからこっちも買ってみようなんて、そんなに甘くはない。無意識の反射を計算してデザインしないといけないんですね。そこに行き着いて今のデザインができあがりました。

北川さんデザインのパッケージ。左から、4粒入り、10粒入り、20粒入り。※4粒入りは2018年12月現在販売終了しています。

ーー そういえば、スパリブはパッケージに特許番号が書いてあります。ほかのサプリではあまり見ないですね。

岐阜大学総合研究支援センター抗酸化研究部門特任教授 犬房春彦 

犬房 スパリブも抗酸化サプリのTwendee Xも、原料は一般的なビタミン、アミノ酸とCoQ10なので、すぐにコピー商品を作られる可能性があります。ですから、この研究を始めたときに特許をしっかりおさえることが重要だと考えました。パッケージには書いてあるのは最初の特許のみで、その後多数の特許を申請しておりまして、ほとんどがPTC国際特許です。どちらも多数の特許に守られているといえるでしょう。Google patent searchで私の名前を入れて検索すると40件ほど出てきますが、これらはすべて公開されている特許のみで、ほかにも申請中の案件があります。ただ、スパリブは欧州の医療財団であるTIMA財団から研究資金を提供していただいていますので、特許と商標登録はTIMA財団に帰属しています。

北川 グラフィックデザインの業界でも違法コピーは横行しているんですね。たとえば中国で私の業績集のようなりっぱな写真集が発行されていると知人から見せられたことがあります。そのような写真集は日本でも発行していないのですが、よく見ると私のデザインをホームページからコピーして本を勝手に作っているんですね。だから、中国に行くと私はとても有名なデザイナーなんですよ(苦笑)。で、またよくいわれるのは「北川先生のデザインは“使いやすい”です!」って、まさにコピー天国ですよね。笑い話に聞こえるかもしれませんが、本当に腹立たしくて、勘弁してほしいですよ。

ーー 本日はありがとうございました。

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不肖ヤマダヤスシ編集長
北海道札幌生まれの道産子。いつも目の前のことだけを考えている。いまこのときを切り抜ければ、人生はなんとかなる! 善人なをもて往生をとぐいはんや悪人をや。

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