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ドン ペリニヨンの醸造最高責任者が交代

リシャール・ジェフロワ氏が28年の旅を終え、ヴァンサン・シャプロン氏が引き継ぐ

ドン ペリニヨンの醸造最高責任者リシャール・ジェフロワ氏。医学博士でありながら、その発言は数字やロジックというよりもむしろ詩のよう。1990年から、ドン ペリニヨンの醸造最高責任者として、世界的に知られる芸術作品を支えてきた。そのドン ペリニヨンの顔、ジェフロワ氏が、自身の任期中にリリースする最後のヴィンテージとして2008年ヴィンテージをリリースした。そう、ジェフロワ氏のポジションは、この2008年ヴィンテージをともに生み出した醸造家、ヴァンサン・シャプロン氏へと、2019年1月1日に引き継がれたのだ。ここでは日本の小田原 江之浦測候所で開催された、ジェフロワ氏からシャプロン氏へのドン ペリニヨンの引き継ぎのセレモニーにおいて、ジェフロワ・シャプロン両氏が何を語ったのかを、なるべくそのまま、記述したい。

ドン・ペリニヨン ヴィンテージ 2008 レガシー・エディションについてはこちらの記事へ

最後の共演

ジェフロワ「ドン ペリニヨンの親愛なる友人のみなさま。ドン ペリニヨンの親愛なる家族のみなさま。この機会にお集まりくださり、ありがとうございます。2018年はドン ペリニヨンにとって、偉大な年となることは間違いありません。なぜなら、2018年のブドウは、飛び抜けて素晴らしい、と言い切れるから。なぜなら、2008年ヴィンテージの公開が、待ち望まれたものだから。そして、ドン ペリニヨンの歴史がヴァンサン・シャプロンへと受け継がれるからです。2008年はヴァンサンと私の奇跡の年です。2008年ヴィンテージのドン ペリニヨンは、最後の最後に完成したのです。皆が心配して見守った、2008年の四季を、きっとヴァンサンは、鮮烈に精密に、長く記憶に留めることでしょう」

シャプロン「リシャール……」

ジェフロワ「灰色で、重苦しい空が続き、ブドウの成熟に適しているとはいえなかった2008年ーー

シャプロン「シャンパーニュの奇跡、でしたね。2008年に私たち二人は、ドン ペリニヨンとともに、シャンパーニュの奇跡に立ち会ったのです。待ち望んだ太陽は、9月にようやく現れてくれた」

ジェフロワ「ゆえに、こわばったブドウのなかにある、熟成を、探しにいく必要がありました。シャンパーニュの構造を反映したものを。そして、私たちはそれを見つけました」

シャプロン「雲が覆い、雨が降り、涼しい月日を長く経験したブドウには、自然と精密や圧がありました。太陽は、そこに遅れてやってきた。そこで、可能性がうまれました。冒険を覚悟で、豊かさを、肉を得ようとした。その先鋭と構築されていることが2008年のエレガンスです」

ジェフロワ「私たちはワインの骨格の上に肉をつけた、ということですね。肉というよりも、筋肉。2008年には筋肉がある。ヴァンサン、それはどんな筋肉かな?」

シャプロン「伸びやかな。アスリート的な。私たちを水平線まで導くような肉体。ドン ペリニヨンの個性、ミステリアスで深く、影がある」

ジェフロワ「2008年の解釈には、ドン ペリニヨンらしさが明確にあられています。調和をもとめて造り上げられ、かつ、自然を表現することができている。ドン ペリニヨンのヴィジョンがここにはあります。調和のヴィジョンは、強く、深く、感情に訴え、記憶に残ります。分かち合いましょう。2008年のドン ペリニヨンを。皆さんが最初の証人です。乾杯!」

シャプロン「レガシートーストですね」

ジェフロワ「本当に、はじめてでしたね。一緒に働いたのは。2005年にヴァンサンがドン ペリニヨンにきて、2008年がともに働いた、といえる最初の年でしたよね。

いつも聞かれるんです。私がドン ペリニヨンを離れる2018年は、悲しい年じゃないか、と。私にとってのドン ペリニヨンは今年で終わり。28年もの付き合いです。胸にこみあげる寂しさがないわけがありません。しかし、喜びもあるのです。重たい喜びとでもいいましょうか。深刻な喜び。対比的な話です。喜びに重い軽いがあるのなら、重い。いっぽうで、軽い喜びというのがあれば、それもあるのだとはおもいます。というのは、この継承は長い準備期間の果てにあるものです。ヴァンサンとは2005年から一緒なのです。私はいま、ヴァンサンを固く信じ、安心し、頼りにしています。ドン ペリニヨンの足跡は深く刻まれていて、そのヴィジョンは受け継がれてきたもの。私もまた先代から受け継ぎました。これをヴァンサンに託す。ヴァンサンは6代目の醸造最高責任者です。ヴァンサンはボルドーの出身だ、というのが唯一がひっかかるのですけれど、そこだけですね、問題は。ドン ペリニヨンにとって、技術は重要です。技術はドン ペリニヨンは支え、緊張感をあたえます。ヴィジョンを、使命を、ドン ペリニヨンにあたえるのに、必要です。しかし、それだけでは足りません。より大切なのは、創造です。創造と技術の両立が必要なのです。

ヴァンサン、君はもう、率直にいってファンタスティックだ。いいマネージャーで、ワイン造りは団体競技みたいなものだということをわかっている。ドン ペリニヨンの足跡をつなげてゆくことはどういうことなのかをよくわかっている。そして君は謙虚だ。だから君は、素晴らしい人物でありつづけることができる。ヴァンサン・シャプロンにドン ペリニヨンを!」

シャプロン「いつも……リシャールを知ってからいつも、私はリシャールに魅了されつづけています。もう18年。最初に議論をしてからずっと、リシャールはいつも夢を見せてくれる。私を動かすのはイマジネーション、夢です。リシャールの言葉で、好きな言葉は、「ヴァンサン、ドン ペリニヨンを覆っているものを押せ、押し広げつづけろ」です。18年前の私になら、それは謎めいた言葉でした。私はその言葉が何を意味するのか、自問しつづけ、学びました。ドン ペリニヨンは人生なのだということを。人生とは広がってゆくこと。エネルギーとは広がってゆくものです。私たちを大きくし、偉大にするのはエネルギーです。そしてそれがドン ペリニヨンなのです。リシャールも確信しているはずです。なぜなら、リシャールと私は、今年をともに生き、今をともに生き、エネルギーに満ちあふれているのですから。時間と空間が出会い 私たちに霊感を与え 遠くへと行かせてくれる。みなさんに、そしてリシャールにありがとう。リシャールに!」

ジェフロワ「ヴァンサン。もっと遠くへ行きなさい。そして、40年くらい経ったら、その時は、君の後継者に伝えてください。ドン ペリニヨンを」

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