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アルト・アディジェほろ酔いグルメ旅

イタリアより真面目だけどオーストリアほど固くない南チロルに行ってきた

南チロルの最高峰料理を味わう

Restaurant Zum Löwen
(レストラン・ツム・ローウェン)

リードヴォーのソテーとパセリのエスプーマを添えたラヴィオリ。合わせたワインはカステルフェデルのピノ・ネロ 2013。

ミシュランの星が輝く料理店、「ツム・ローウェン」。そこは、とてもとても閑静な小村の坂道の奥に位置している。

11世紀の建築を改修したレストランエリアは1メートルの厚みを持つ石壁で区切られ、おかげで夏は冷房要らず。石と木材の天然素材に囲まれた空間で供されるのが、シェフであるアンナ・マッシャーの発想力豊かな南チロル料理だ。

キッチンスタッフは5人ほどで、「日本人の研修生も来たことがあるのよ。とっても優秀だったわ」とハンナ。

客はレストランで食を堪能するだけではない。訪問時はちょうど、ロシア人一行の参加するクッキング・クラスが進行中。厨房で星付きシェフの料理を間近で見られるとあってロシア人たちは大興奮、矢継ぎ早に質問を浴びせていた。

近隣農家から直接届けられる食材。きのこのフィンフェルリは、炒めてラヴィオリの具に、飾り付けに、と大活躍。

クッキング・クラスでは、できたての料理をキッチンで試食。スパークリングのボトルも空け、すでに宴会モード。

「最初はマッサージ師になりたかったのよ、私」とアンナ。

「でも、結婚した相手が祖父母の経営するレストランを継ぐことになって、私は1989年からシェフに就任したの」

農家に生まれ、母親に習ったレシピだけが頼り。あとは独学ながらも感性と舌の鋭さでオリジナル性を高めた結果、彼女の南チロル料理を食べようと世界中から人が押し寄せるようになった。その流れはちょうど、地場品種の特性を見直して新たな顧客をつかんだ南チロルのワイン生産者ともリンクする。

「有能なシェフにマッサージされた肉だから、おいしくなるんだよねぇ」とロシア人のひとりがジョークを言い、皆で笑った。

アンナの創造性に感銘を受けてリピーターとなった客は、いつも「何か新しい料理ある?」と聞いてくる。つまり、常連が増えるほど創作へのプレッシャーがかかる。

「春はアスパラ、夏はトマト、など近隣の農家が持ってくる旬の素材を使っているから、それだけである程度バリエーションは広がる。あとは毎朝犬と森を散歩して、そのとき自然にアイデアが湧き出てくるのを待つの」

そうしてキッチンから運ばれてくるのは、山岳地帯にありがちな乳製品たっぷり、お肉ガッツリな料理とは一線を画す、野菜を多様したヘルシーで軽やかな料理。合わせるワインを選ぶのは、アンナの伴侶であり店のオーナーであるハンスの仕事である。

娘のエリザベスも現在サーヴィスを手伝っているが、「私もいずれはキッチンに入ってみたい」と意欲的。そういえば、キッチンと客席の意思疎通がスムーズな点も、一流レストランの条件のひとつであった。

計280銘柄のワインは、アルト・アディジェ産が35%超を占める。長期熟成物は、普通に買うと高いので、自家セラーで熟成させ、適正価格で提供している。

ツム・ローウェン
Restaurant Zum Löwen
Via Principale, 72, 39010 Tisens

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